JAJSKN4B November   2020  – September 2021 TPS25858-Q1 , TPS25859-Q1

PRODUCTION DATA  

  1. 特長
  2. アプリケーション
  3. 概要
  4. 改訂履歴
  5. 概要 (続き)
  6. デバイス比較表
  7. ピン構成および機能
  8. 仕様
    1. 8.1 絶対最大定格
    2. 8.2 ESD 定格
    3. 8.3 推奨動作条件
    4. 8.4 熱に関する情報
    5. 8.5 電気的特性
    6. 8.6 タイミング要件
    7. 8.7 スイッチング特性
    8. 8.8 代表的特性
  9. パラメータ測定情報
  10. 10詳細説明
    1. 10.1 概要
    2. 10.2 機能ブロック図
    3. 10.3 機能説明
      1. 10.3.1  パワーダウンまたは低電圧誤動作防止
      2. 10.3.2  入力過電圧保護 (OVP) - 連続監視
      3. 10.3.3  降圧コンバータ
      4. 10.3.4  FREQ/SYNC
      5. 10.3.5  ブートストラップ電圧 (BOOT)
      6. 10.3.6  最小オン時間、最小オフ時間
      7. 10.3.7  内部補償
      8. 10.3.8  選択可能な出力電圧 (VSET)
      9. 10.3.9  電流制限と短絡保護回路
        1. 10.3.9.1 USB スイッチ・プログラマブル電流制限 (ILIM)
        2. 10.3.9.2 2 レベル USB スイッチの電流制限のインターロック
        3. 10.3.9.3 サイクル単位の降圧電流制限
        4. 10.3.9.4 OUT の電流制限
      10. 10.3.10 ケーブル補償
      11. 10.3.11 温度センシング (TS) および OTSD による熱管理
      12. 10.3.12 サーマル・シャットダウン
      13. 10.3.13 USB イネーブルのオンおよびオフ制御 (TPS25859-Q1)
      14. 10.3.14 FAULT 通知 (TPS25859-Q1)
      15. 10.3.15 USB 仕様の概要
      16. 10.3.16 USB Type-C® の基本
        1. 10.3.16.1 構成チャネル
        2. 10.3.16.2 接続の検出
      17. 10.3.17 USB ポートの動作モード
        1. 10.3.17.1 USB Type-C® モード
        2. 10.3.17.2 専用充電ポート (DCP) モード (TPS25858-Q1 のみ)
          1. 10.3.17.2.1 DCP BC1.2 と YD/T 1591-2009
          2. 10.3.17.2.2 DCP Divider - 充電方式
          3. 10.3.17.2.3 DCP 1.2V 充電方式
        3. 10.3.17.3 DCP 自動モード (TPS25858-Q1)
    4. 10.4 デバイスの機能モード
      1. 10.4.1 シャットダウン・モード
      2. 10.4.2 アクティブ・モード
  11. 11アプリケーションと実装
    1. 11.1 アプリケーション情報
    2. 11.2 代表的なアプリケーション
      1. 11.2.1 設計要件
      2. 11.2.2 詳細な設計手順
        1. 11.2.2.1 出力電圧設定
        2. 11.2.2.2 スイッチング周波数
        3. 11.2.2.3 インダクタの選択
        4. 11.2.2.4 出力コンデンサの選択
        5. 11.2.2.5 入力コンデンサの選択
        6. 11.2.2.6 ブートストラップ・コンデンサの選択
        7. 11.2.2.7 低電圧誤動作防止設定点
        8. 11.2.2.8 ケーブル補償の設定点
      3. 11.2.3 アプリケーション曲線
  12. 12電源に関する推奨事項
  13. 13レイアウト
    1. 13.1 レイアウトのガイドライン
    2. 13.2 レイアウト例
    3. 13.3 グランド・プレーンおよび熱に関する考慮事項
  14. 14デバイスおよびドキュメントのサポート
    1. 14.1 Receiving Notification of Documentation Updates
    2. 14.2 サポート・リソース
    3. 14.3 商標
    4. 14.4 Electrostatic Discharge Caution
    5. 14.5 Glossary
  15. 15メカニカル、パッケージ、および注文情報

パッケージ・オプション

メカニカル・データ(パッケージ|ピン)
サーマルパッド・メカニカル・データ
発注情報

USB スイッチ・プログラマブル電流制限 (ILIM)

TPS2585x-Q1 は 2 つの USB 電流制限スイッチを内蔵しているため、USB ポートのオーバーヒートを防ぐために電流制限を調整することが可能です。TPS2585x-Q1 は 2 レベルの電流制限方式を採用しており、1 つは標準的な電流制限 IOS_BUS、および 2 次側電流制限 IOS_HI です。2 次側電流制限 IOS_HI は、1 次側電流制限 IOS_BUS の 1.6 倍です。2 次側電流制限は、グリッチ除去時間 tIOS_HI_DEG の電流制限スレッショルドとして動作し、USB 電源スイッチの電流制限スレッショルドは IOS_BUS に戻ります。Equation9 は、標準的な電流制限を調整する抵抗値を求める計算式です。

Equation9. GUID-F09ACAA5-6ADB-458B-8B92-E15182FA0995-low.gif

この式は、変動のない理想的な外部調整抵抗を前提としています。抵抗の許容誤差を考慮に入れるため、はじめに、交差使用に基づいて抵抗の最小値と最大値を求め、これらの値を式で使用します。電流制限と調整する抵抗値は反比例するため、IOS(min) の式には抵抗の最大値を使用し、IOS(max) の式には抵抗の最小値を使用します。標準的な RILIM の抵抗値を 表 10-3 に示します。

表 10-3 RILIM での電流制限の設定
RILIM (KΩ)IOS_BUS - 電流制限スレッショルド (mA)
19.11690
15.42096
11.52806
9.533386
GND への短絡3550

通常のアプリケーションでは、ILIM ピンを GND に直接短絡することができます。これにより、Type-C 仕様に従って、各 USB ポートに最大 ±15% のバリエーションでデフォルトの電流制限 3.55A が設定されます。TPS2585x-Q1 は、上昇する出力電圧のスルーレートを制御して、突入電流および電圧サージを制限するソフトスタート回路を内蔵しています。

2 次側電流制限 IOS_HI により、過渡過負荷状態時に短時間、USB ポートに大きな電流が流れます。これは、MFi OCP のような USB ポートの特別な過負荷テストに利点をもたらします。通常のアプリケーションでは、デバイスの電源がオンになり、USB ポートが UVLO でない場合、USB ポートの電流制限スレッショルドは 2 次側電流制限 IOS_HI によって無効になります。そのため、USB ポートからは、通常 2ms の場合には IOS_BUS の 1.6 倍の電流が出力されることがあります。グリッチ除去時間 tIOS_HI_DEG の経過後、電流制限スレッショルドは通常の電流 IOS_BUS に戻ります。2 次側電流制限スレッショルドは、グリッチ除去時間 tIOS_HI_RST が経過するまで再開されません (通常は 16ms)。突入電流が IOS_HI スレッショルドより大きい場合、電流制限は tIOS_HI_DEG の経過を待たず、すぐに IOS_BUS に戻ります。

前の式に示すように、TPS2585x-Q1 は、IOS_BUS への出力電流を制限することにより、過電流状態に応答します。過電流状態が発生すると、デバイスは出力電流を一定に保ち、それに伴い、出力電圧は低下します。過電流状態には、次の 3 つが考えられます。

  • 1 つ目の状態は、デバイスに電源が供給されているか、またはイネーブルのときに、USB 出力に短絡、または過負荷が発生した場合です。突入電流が発生し、それにより約 8A のスレッショルドがトリガされると、高速ターンオフ回路が作動して、tIOS_USB 以内に USB パワー・スイッチがオフになり、電流制限制御ループが応答できるようになります (図 10-5 を参照)。高速ターンオフがトリガされると、この間、USB パワー・スイッチの電流センス・アンプはオーバードライブされ、内蔵の N チャネル MOSFET を瞬時にディセーブルして USB ポートをオフにします。その後、電流センス・アンプは復帰し、出力電流をソフトスタートでランプアップします。それでも USB ポートがまだ過電流状態にある場合、短絡と過負荷は出力をグランドに対しゼロ電位に保持し、パワー・スイッチは出力電流を IOS_BUS にランプします。過電流制限状態が 4.1ms 以上続くと、対応の USB チャネルは、オフ時間 524ms、オン時間 4.1ms のヒカップ・モードに入ります。
    GUID-BE6F22B4-F0AC-4439-9409-C92AE4C73886-low.gif図 10-5 バス短絡に対する応答時間
  • 2 つ目の状態は、負荷電流が IOS_BUS 以上まで増加したにもかかわらず、IOS_HI の設定より低い場合です。このデバイスでは tIOS_HI_DEG の間、USB ポートから IOS_BUS への電流に制限をかけずに、USB ポートからこの大きな電流を出力することが可能です。グリッチ除去時間 tIOS_HI_DEG が経過すると、デバイスは IOS_BUS への出力電流を制限し、電流制限モードを維持して動作します。負荷によって IOS_BUS 以上の電流が要求されると、図 10-6 に示すように、USB 出力電圧は IOS_BUS × RLOAD (抵抗性負荷) まで低下します。過電流制限状態が 4.1ms 以上続くと、対応の USB チャネルは、オフ時間 524ms、オン時間 4.1ms のヒカップ・モードに入ります。他の USB チャネルは正常に動作します。
    GUID-CF2D7B0B-CCD6-4183-9CB9-55BD651C5E3B-low.gif図 10-6 バス過電流保護
  • 3 つ目の状態は、負荷電流が IOS_HI 設定以上に増加した場合です。この場合、高速ターンオフは負荷によってトリガされず、USB パワー・スイッチの電流制限スレッショルドはすぐに 1 次側電流制限 IOS_BUS に設定が戻ります。それでもまだ負荷によって IOS_BUS 以上の電流が要求されると、図 10-7 に示すように、USB 出力電圧は IOS_BUS × RLOAD (抵抗性負荷) まで低下します。過電流制限状態が 4.1ms 以上続くと、対応の USB チャネルは、オフ時間 524ms、オン時間 4.1ms のヒカップ・モードに入ります。他の USB チャネルは正常に動作します。
GUID-5783473A-B126-454F-B86A-C11D2A969982-low.gif図 10-7 バス過電流保護:2 レベル電流制限

これまでに記載したいずれかのケースで、熱制限が作動するほどの長い時間、過負荷状態にあると、TPS2585x-Q1 のサーマル・サイクルが起動します。熱制限により内蔵の NFET はオフになり、NFET の接合部温度が 160℃ (標準値) を超えると起動します。デバイスはオフに維持され、NFET の接合部温度が 10℃ (標準値) に冷却されると再起動します。この過熱保護メカニズムにより、接合部温度がさらに上昇することを防止できます。接合部温度がメイン・サーマル・シャットダウン・スレッショルド TSD を超えることによって、デバイスはオフになります。