JAJA571B March   2018  – September 2024 ADS8319 , OPA365

 

  1.   1
  2.   2
  3.   改訂履歴
  4.   商標

入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS8319
Vin Min = 0.1V Vadc_in = 4.9V FAE1H または 6422510
VinMax = VREF = 4.9V Vadc_in = 0.1V 051FH または 131110
電源
Vcc Vee Vcm VREF AVDD DVDD
5.3 V GND (0V) 2.5V 5 V 5 V 5 V

設計の説明

このクックブックには、TI のアナログ技術者向けカリキュレータの Antialias Filter Designer を使用して、シングルエンド SAR ADC 入力用アンチエイリアシング フィルタを設計する方法を示します。このツールにより、所定の ADC の 1/2 LSB までエイリアス信号を減衰するフィルタの仕様を特定できます。この設計手法は固定カットオフ周波数を使用するものであり、回路例ではADS8319 ADCを使用しています。このシングルエンド デバイス回路は、データ収集ラボ計測機器オシロスコープとデジタイザアナログ入力モジュール、バッテリ駆動機器といった低消費電力用途に適しています。

仕様
仕様 計算結果/目標 シミュレーション結果
ナイキストで 1mV のエイリアス信号を ½ LSB に減衰
Vin_Nyquist = 1mV (250kHz 時)
Vout_Nyquist <= ½ LSB
½ LSB = 38.14µV (250kHz 時)
Vout_Nyquist = 21µV
減衰量 = –33.43dB
ADC 過渡入力電圧セトリング < 0.5 LSBまたは38.15µV 91.5nV
ノイズ 78.9µV 87.77µV
帯域幅 50kHz 50.1kHz

デザイン ノート

  1. TI プレシジョン ラボでは、周波数領域のエイリアシングについて説明し、エイリアスは回避または最小化すべき誤差源であると述べています。ビデオ『Aliasing and Anti-aliasing Filters』では、アンチエイリアシング フィルタを使用して、このようなエイリアシング誤差を最小限に抑える方法を説明しています。
  2. このクックブックのアクティブ フィルタは、TI のアナログ技術者向けカリキュレータTI FilterPro を使用して設計しています。このソフトウェアは、多くの用途でアクティブ フィルタ回路の設計に使用できます。
  3. 適切なシステム精度を実現するために、許容差0.1%~1%の抵抗と許容差5%以下のコンデンサを使用します。
  4. 各システム専用に RC 電荷バケツ回路を設計します。TI プレシジョン ラボのビデオ『Refining Rfilt and Cfilt Values』では、RC 電荷バケツを最適化する方法を説明しています。
  5. TINA-TI シミュレーション ソフトウェアを使用して作成した回路図やその他の図で、回路シミュレーションをモデル化します。
  6. 最適なドライバ オペアンプの選定、ADC モデルの構築とシミュレーション、RC 電荷バケツ値の特定については、TI プレシジョン ラボのビデオ シリーズ『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。

部品選定

  1. シングルエンド ADC を選定したら、設定カットオフ周波数と設定フィルタ次数のどちらでアンチエイリアス フィルタを設計するかを決めます。周波数を設定する場合は、以下の手順に進みます。フィルタ次数を設定する場合は、アナログ技術者向けカリキュレータの「Find Usable Frequency Range」タブを使用します。どちらの方法でもアナログ技術者向けカリキュレータのツールを使用します。
  2. Anti-Alias Filter Designer の Find Filter Order タブを使用し、Choose Filter Type でベッセル フィルタかバターワース フィルタを選択します。ここでは、通過帯域での最大限の平坦性と線形位相応答を実現するためにベッセルを選択します。
  3. Nyquist Frequency に ADC のサンプリング レートの 1/2 の値を入力します。ADS8319のサンプリング レートは500kspsであるため、ナイキスト周波数は250kHzとなります。
  4. 設計するフィルタの希望カットオフ周波数を特定し、それを Cutoff Frequency ボックスに入力します。一般的には、カットオフ周波数は希望入力周波数の 10 倍 (1 ディケード上) とします。ここでは、入力周波数が5kHzであるため、カットオフ周波数を50kHzに設定します。
  5. Alias Signal Amplitude at Nyquist Frequency フィールドに、ナイキスト周波数で 1/2 LSB に減衰する最大推定エイリアス信号振幅を入力します。この数字はマイクロボルト単位から全入力電圧範囲までとなります。この低ノイズ システムでは、最大エイリアス信号振幅は1mVppと想定されます。
  6. ADC の Full Scale Range は通常、Vref に相当するため、このシステムでは 5V に設定します。ADS8319 の分解能は 16 ビットであるため、これを Number of Bits に入力します。
  7. OK をクリックすると、カリキュレータの右側に結果が表示され、これを用いて必要なアンチエイリアス フィルタを設計します。

結果のフィルタ仕様により、これらの数字を TI FilterPro に入力して、ローパス アンチエイリアス フィルタを設計できます。このクックブックの回路の仕様は、fnyquist=250k、fc=50k、Valias=1mV、FSR=5V、N ビット=16 であるため、設計手法 1 のベッセルの例を用いて続行します。

TI FilterPro を起動すると、設計するフィルタの仕様を尋ねてきます。最終画面の後、アクティブ フィルタ回路が表示され、これがシステムのアンチエイリアス フィルタとなります。FilterProを使用する手順については、以下のスクリーンショットを参照してください。

手順 1:アンチエイリアス フィルタはローパス フィルタであるため、Lowpass を選択します。

手順 2:アナログ技術者向けカリキュレータから Passband Frequency (fc) と Filter Order の値を入力します。パラメータの計算結果と一致するように、フィルタ次数の Set Fixed オプションを選択する必要があります。

手順 3:計算と一致するフィルタ タイプを選択します。この例では、通過帯域での最大限の平坦性と線形位相応答を実現するために Bessel を選択しています。

手順 4:フィルタ減衰量はオペアンプの帯域幅によって制限されないため、多重帰還型を選択します。この方式には、信号が反転することと入力インピーダンスが低いという欠点があります。Sallen-Key は非反転型で高入力インピーダンスであるため、こちらを選択することもできますが、高い周波数では、オペアンプの帯域制限によりフィルタ減衰量が収束するか、増大する場合もあります。

Finish をクリックすると、フィルタ回路図が結果のフィルタ性能仕様とともに表示されます。部品許容差は、右側のドロップダウン メニューを使用して調整できます。ここでは、実用性を考えて1%の抵抗と5%のコンデンサを選択しています。部品の値は、数字をクリックして新しい値を入力することにより変更可能です。

過去に作成した回路を TINA-TI でシミュレーション用に設計できます。性能特性については以下に記載します。

DC 伝達特性

以下のグラフは、0V~5Vのフィルタ入力に対する線形出力応答を示しています。フィルタ アンプが反転構成であるため、出力電圧は Vout=-Vin+5V の関数となります。

AC 伝達特性

帯域幅のシミュレーション結果は50.1kHzで、アナログ技術者向けカリキュレータで入力した希望値を約100Hz超えています。ナイキスト周波数では、信号が-33.43dB減衰され、これにより入力エイリアス信号の振幅は21.3µVまで小さくなります。この件の詳細については、『TI Precision Labs - Op Amps: Bandwidth 1』(英語) を参照してください。

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションは、データ収集周期を通じて5kHzで5VppのAC信号にセトリングするADS8319を示しています。このようなシミュレーションは、RC電荷バケツの部品が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、TI プレシジョン ラボのビデオ『Refine the Rfilt and Cfilt Values』を参照してください。

ノイズ シミュレーション

ここでは簡易なノイズ計算を行って概算します。この計算では、アンチエイリアス フィルタのノイズは50kHzを超える周波数では減衰されるため無視します。

enOPA365 の値はデータシートのノイズ曲線から取得します。ノイズの計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。ノイズのシミュレーション結果と計算結果との不一致の一部は、OPA365モデルの帯域幅による不正確さに起因するものです。ノイズ計算の詳しい理論については、TI プレシジョン ラボのビデオ『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS8319 16 ビット、500kSPS、シリアル インターフェイス、マイクロパワー、小型、SAR ADC SPI 搭載、高精度、16 ビット、SAR A/D コンバータ (ADC) A/D コンバータ (ADC)
OPA365 50MHz、ゼロ クロスオーバー、低歪み、高 CMRR、RRI/O、単一電源オペアンプ 2.2V、50MHz、低ノイズ、単一電源、レール ツー レール オペアンプ オペアンプ

主要なファイルへのリンク

テキサス・インスツルメンツ、SBAC197 ソース ファイル、サポート ソフトウェア