JAJA582A December   2018  – September 2024 TLV6741

 

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  3.   商標

設計目標

入力音圧レベル (最大値) 出力電圧 (最大値) 電源 周波数応答偏差
100dB SPL (2Pa) 1.228Vrms Vcc Vee 20Hz 20kHz
5V 0V -0.5 dB -0.1 dB

設計の説明

この回路は、非反転アンプ回路構成を使用して、マイクロフォンの出力信号を増幅します。この回路は、音声周波数範囲の全体にわたって振幅の平坦性が非常に優れており、周波数応答偏差はわずかです。この回路は 5V 単一電源で動作するよう設計されています。

デザイン ノート

  1. オペアンプの線形出力動作範囲内で動作させます。この範囲は通常、AOL テスト条件に規定されています。
  2. Low–K コンデンサ (タンタル、C0G など) と薄膜抵抗を使用すると、ひずみを減らすのに役立ちます。
  3. この回路をバッテリで駆動すると、スイッチング電源により発生するひずみを除去できます。
  4. 低ノイズ設計の場合、値の小さい抵抗と、低ノイズのオペアンプを使用します。
  5. 同相電圧は、抵抗分圧器で設定した DC バイアス電圧と、マイクロフォンの出力電圧により発生する偏差の和に等しくなります。相補ペア入力段を持つオペアンプの場合、クロスオーバーひずみの可能性を排除するため、同相電圧をクロスオーバー領域から離すことを推奨します。
  6. 抵抗 R1 を使ってマイクロフォンの内蔵 JFET トランジスタをバイアスし、マイクロフォンで指定されたバイアス電流を達成します。
  7. 等価入力抵抗は R1、R2、R3 で決まります。R2 と R3 に値の大きな抵抗を使用すると、入力抵抗が増大します。
  8. マイクロフォンをバイアスするため R1 に印加する電圧は、オペアンプの電源電圧と等しい必要はありません。マイクロフォンのバイアスに高い電源電圧を使用すると、バイアス抵抗の値を減らすことができます。

設計手順

この設計手順では、次の表に示す仕様のマイクロフォンを使用します。

マイクロフォンのパラメータ
94dB SPL (1Pa) での感度 -35 + 4dBV
消費電流 (最大値) 0.5mA
インピーダンス 2.2kΩ
動作電圧 (標準値) 2Vdc
  1. 感度をボルト / パスカルに変換します。
       10 - 35dB 20 = 17.78 mV Pa
  2. ボルト / パスカルを電流 / パスカルに変換します。
    17.78 mV Pa 2.2kΩ = 8.083 μA Pa
  3. 最大出力電流は、最大音圧レベル 2Pa のとき発生します。
    I Max = 2Pa × 8.083 μA Pa = 16.166μA 
  4. バイアス抵抗を計算します。次の式で、Vmic はマイクロフォンの動作電圧 (標準値) です。
    R 1 = V cc - V mic I s = 5V-2V 0.5mA =6kΩ≈5.9kΩ (Standard Value)
  5. アンプの入力同相電圧を、電源電圧の 1/2 に設定します。R2 と R3 の並列等価抵抗は R1 の 10 倍にして、マイクロフォンの電流のほとんどが R1 を流れるようにします。
    R eq = R2||R3   >10 × R1 = 100kΩ Choose R 2 = R 3 = 200kΩ
  6. 最大入力電圧を計算します。
    R in = R1||R eq = 5.9kΩ | |100kΩ = 5.571kΩ V in = I max  × R in = 16.166uA × 5.571kΩ = 90.067mV
  7. 最大出力電圧スイングを生成するのに必要なゲインを計算します。
    Gain = V outmax V in = 1.228V 90.067mV = 13.634 V V
  8. 7 で計算したゲインを設定するため、R4 の値を計算します。帰還抵抗 R5 には 10kΩ を選択します。
    R 4 = R 5 Gain-1 = 10kΩ 13.634-1 = 791Ω 787Ω (Standard Values) The final gain of this circuit is: Gain = 20log Vout Vin = 20log 16.166uA   ×  5.571kΩ   ×   ( 1+ 10kΩ 787Ω ) 2V   =   -4.191dB
  9. 20Hz での許容される偏差に従い、低周波数のコーナー周波数を計算します。次の式で、G_pole1 は周波数「f」で各極が寄与するゲインです。極が 3 つ存在するため、3 で割ることに注意してください。
    f c = f 1 G_pole1 2 - 1 = 20Hz 1 10 -0.5/3 20 2 - 1 = 3.956Hz
  10. 9 で計算したカットオフ周波数に基づき、C1 を計算します。
    C 1 = 1 2π×Req×f c = 1 2π×100kΩ×3.956Hz = 0.402μF≈0.33μF (Standard Value) 
  11. 9 で計算したカットオフ周波数に基づき、C2 を計算します。
    C 2 = 1 2π×R4×f c = 1 2π×787Ω×3.956Hz = 51.121μF≈47μF (Standard Value)
  12. 20Hz での許容される偏差に従い、高周波数の極を計算します。次の式で、G_pole2 は周波数「f」で各極が寄与するゲインです。
    f p = f 1 G_pole2 2 - 1 = 20kHz 1 10 - 0.1 20 2 - 1 = 131.044kHz
  13. 12 で計算したカットオフ周波数を設定するため、C3 を計算します。
    C 3 = 1 2π×R 5 ×f p = 1 2π×10kΩ×131.044kHz =121.451pF≈120pF (Standard Value)
  14. 9 で計算したカットオフ周波数に基づき、出力コンデンサ C4 を計算します。出力負荷 R6 は 10kΩ と仮定します。
    C 4 = 1 2π×R 6 × f c = 1 2π10kΩ×3.956Hz = 4.023μF≈3.3μF (Standard Value)

設計シミュレーション

AC シミュレーション結果

過渡シミュレーション結果

入力電圧は、マイクロフォンへの入力信号の SPL を表します。1Vrms の入力信号は、1 パスカルを表します。

ノイズのシミュレーション結果

次のシミュレーション結果では、22kHz で 22.39µVrms のノイズが現れています。帯域幅を 22kHz に設定したオーディオ アナライザで測定したノイズを表すため、22kHz の帯域幅でノイズを測定します。

参考文献:

テキサス・インスツルメンツ、『非反転型マイクロフォン アンプ回路のシミュレーション』、SBOC525 SPICE シミュレーション ファイル

TI Precision Designs『単一電源エレクトレット マイク用プリアンプ』、TIPD181 リファレンス デザイン

設計に使用されているオペアンプ

TLV6741
Vss 1.8V~5.5V
VinCM (Vee)~(Vcc -1.2V)
Vout レール ツー レール
Vos 150µV
Iq 890uA/Ch
Ib 10pA
UGBW 10 MHz
SR 4.75V/µs
チャネル数 1
TLV6741

設計の代替オペアンプ

OPA320
Vss 1.8V~5.5V
VinCM レール ツー レール
Vout レール ツー レール
Vos 40µV
Iq 1.5mA/Ch
Ib 0.2pA
UGBW 20 MHz
SR 10V/µs
チャネル数 1、2
OPA320