JAJA639A December   2017  – August 2024 ADS8900B , ADS8910B , INA240 , OPA320 , REF50 , REF50E , THS4551

 

  1.   1
  2.   2
  3.   商標

センス抵抗電流 INA Out、アンプ入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS8910B
MinCurrent = ±50mA Out = ±10mV VoutDif = ±21.3mV 233H 56310、3FDCBH -5640
MaxCurrent = +10A Out = ±2V VoutDif = ±4.3V 1B851H 11272210 247AEH -11272210
表 1-1 電源およびリファレンス
Vs Vee Vref Vcm
5.3V < Vs < 5.5V 0V 5V 2.5V

設計の説明

この単一電源電流センシング ソリューションは、シャント抵抗の両端の ±50mA~±10A の範囲の電流信号を測定できます。この電流センス アンプは、0V~75V の広い同相電圧範囲にわたってシャント抵抗を測定できます。完全差動アンプ (FDA) はシングルエンドから差動への変換を実行し、1MSPS のフル データレートでフルスケール ±5V の SAR ADC 差動入力を駆動します。「部品選定」の値を調整することで、さまざまな電流レベルを実現できます。

この回路は、バッテリ保守システム、バッテリ アナライザ、バッテリ セル形成と試験装置自動試験装置、無線基地局のリモート無線ユニット (RRU) などの高精度電圧測定アプリケーションへの実装に適しています。

表 1-2 仕様
誤差解析 計算結果 シミュレーション結果 測定結果
ADC 過渡入力電圧セトリング > 1LSB > 38µV 6.6µV 該当なし
ADC 入力でのノイズ 221.8µV rms 207.3µV rms 227µV rms
帯域幅 10.6kHz 10.71kHz 10.71kHz

デザイン ノート

  1. 入力電流範囲と入力同相電圧の要件に基づいて、シャント センス抵抗値を決定し電流センス アンプを選択します。これについては「部品選定」で説明します。
  2. 電流センス アンプの出力、ADC の入力電圧範囲 (FSR)、完全差動アンプの出力振幅の仕様に基づいて、完全差動アンプのゲインを決定します。これについては「部品選定」で説明します。
  3. 歪みを最小限に抑えるために、COGコンデンサを選定します。
  4. 適切な精度と低ゲイン ドリフトを実現し、歪みを最小限に抑えるために、0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用します。
  5. 「TI プレシジョン ラボ」トレーニング ビデオ シリーズで、誤差解析の方法を説明しています。ゲイン、オフセット、ドリフト、およびノイズの誤差を最小限に抑える方法については、以下のリンク先をご覧ください。誤差とノイズ
  6. TI プレシジョン ラボ - ADC トレーニング ビデオ シリーズでは、電荷バケツ回路の Rfilt と Cfilt を選択する方法について解説しています。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示す値は、この例のアンプ、ゲイン設定、データ コンバータで適切なセトリングと AC 性能を実現します。設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選択します。最高水準のセトリングと AC 性能を実現する RC フィルタの選定方法については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。

電流センス回路の部品選定

  1. Rsense 抵抗を選択し、電流センス アンプ (双方向電流) のゲインを求めます。
    R sh = V sh ( max ) l load ( max ) = 100 mV 10 A = 0 . 01 Ω
    ± V out ( range ) = ± V REF 2 = ± 5 V 2 = ± 2 . 5 V
    G INA = ± V out ( range ) l load ( max ) × R sh = ± 2 . 5 V 10 A × 0 . 01 Ω = 25 V / V
  2. 電流センス アンプの出力範囲を計算します。
    V ina_outmax = G INA × ( l load ( max ) × R sh ) + V ref 2 = ( 20 V / V ) × ( 10 A × 0 . 01 Ω ) + 5 V 2 = 4 . 5 V
    V ina_outmax = G INA × ( l load ( max ) × R sh ) + V ref 2 = ( 20 V / V ) × ( - 10 A × 0 . 01 Ω ) + 5 V 2 = 0 . 5 V
  3. ADC のフルスケール入力電圧範囲 (FSR) を求めます。
    ADC Full - Scale   Range = ± V REF = ± 5 V
  4. FDA の線形動作の最大/最小出力電圧を求めます。
    0 . 23 V < V out < 4 . 77 V   from   THS 4551   output   low / high   specification   for   linear   operation
    V out_FDA_max = 4 . 77 V - 0 . 23 V = 4 . 54 V   Differential   max   output
    V out_FDA_min = - V out_FDA_max = - 4 . 54 V   Differential   min   output
  5. ADC のフルスケール入力電圧範囲 (FSR)、FDA の出力電圧範囲、ステップ 3 の結果に基づいて差動ゲインを求めます。
    Gain = V out_FDA_max - V out_FDA_min V INA_outmax - V INA_outmin = 4 . 54 V - ( - 4 . 54 V ) 4 . 5 V - 0 . 5 V = 2 . 77 V / V
    Gain 2 . 15 V / V   for   margin
  6. 差動ゲインに応じて標準抵抗値を求めます。
    Gain FDA = R f R g = 2 . 15 V / V
    R f R g = 2 . 15 V / V = 2 . 15 1 . 00 = 2 . 15 V / V
  7. カットオフ周波数に応じて RfINA、CfINA を求めます。
    C fINA = 1 2 × π × f c × R fINA = 1 2 × π × 10 kHz × 10 = 1 . 591 nF   or   1 . 5 nF   for   standard   value
    f fina = 1 2 × π × C fINA × R f = 1 2 × π × 1 . 5 nF × 10 = 10 . 6 kHz

完全差動の DC 伝達特性

以下のグラフに、–10A~+10A の入力に対する出力の線形応答を示します。

AC 伝達特性

帯域幅のシミュレーション結果は 10.5kHz であり、ゲインは 32.66dB (線形ゲインは 43V/V (G = 20 × 2.15V/V)) です。

ノイズ シミュレーション

以下の簡易なノイズ計算は概算用です。電流センス アンプ INA240 が主要なノイズ源であるため、OPA320 バッファと THS4521 によるノイズは以下のノイズの概算では除外します。抵抗のノイズは 10.6kHz を超える周波数で減衰するため、この計算では無視します。

f c = 1 2 π × R fINA × C fINA = 1 2 π × 10 × 1 . 5 nF = 10 . 6 kHz
E nINA 240 = e nINA 240 × G INA × K n × f c = ( 40 nV ÷ Hz ) × ( 20 V ÷ V ) × 1 . 57 × 10 . 6 kHz = 103 . 2 μV
E nADCIN = E nINA 240 × G FDA = ( 103 . 2 μVrms ) × ( 2 . 15 V / V ) = 221 . 8 μVrms

計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。アンプ ノイズの計算の詳細な理論についてはノイズ - ラボを、データ コンバータのノイズについては『ADC noise measurement, methods and parameters』を参照してください。

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションに、DC 10A の入力信号のセトリングを示します (ADC 差動入力信号 +4.3V)。このようなシミュレーションは、サンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。これに関する詳しい理論については、『Final SAR ADC Drive Simulations』を参照してください。

使用デバイス:

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS8910B(1) 分解能 18ビット、サンプル レート 1Msps、リファレンス バッファ搭載、完全差動入力、Vref 入力電圧範囲 2.5V~5V VREF バッファ、LDO、強化 SPI インターフェイス搭載、18 ビット、1MSPS、1 チャネル SAR ADC 高精度 ADC
INA240 ハイサイド / ローサイド、双方向、ゼロドリフト電流センス アンプ、ゲイン誤差 = 0.20%、ゲイン = 20V/V、広い同相電圧範囲 = –4V~80V 強化型 PWM 除去機能搭載、-4~80V、双方向、超高精度電流センス アンプ 計測アンプ
THS4551 完全差動アンプ (FDA)、帯域幅 150MHz、レール ツー レール出力、VosDriftMax = 1.8µV/℃、en = 3.3nV/rtHz 低ノイズ、高精度、150MHz 完全差動アンプ オペアンプ
OPA320 帯域幅 20MHz、レール ツー レール、ゼロ クロスオーバー歪み、VosMax = 150µV、VosDriftMax = 5µV/℃、en = 7nV/rtHz 高精度、ゼロ クロスオーバ、20MHz、0.9pA Ib、RRIO、CMOS オペアンプ オペアンプ
REF5050 ドリフト 3 ppm/°C、初期精度 0.05%、ノイズ 4µVpp/V 5V、3μVpp/V のノイズ、3ppm/℃ のドリフト、高精度シリーズ リファレンス電圧 シリーズ電圧リファレンス
ADS8910B にはリファレンス バッファが内蔵されているため、バッファなしで REF5050 と直接接続できます。また REF5050 は、高精度 SAR アプリケーションで必要とされる低ノイズ 低ドリフトという特長を備えています。INA240 は、電流センシング ソリューションで広い同相電圧範囲と低いゲイン誤差を実現します。THS4551 は、ADC 入力サンプリングによる電荷のキックバック過渡電圧を安定化するのに十分な帯域幅を備えているため、高速かつ高精度の完全差動 SAR によく使用されます。OPA320 は、FDA の入力の残留電荷キックバックから INA240 を絶縁するために必要です。

主要なファイルへのリンク

テキサス・インスツルメンツ、ADS8900B 設計ファイル、ソフトウェア サポート