JAJA694 february   2022 TAS6584-Q1

 

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リアルタイム負荷診断

このアプリケーション・ブリーフでは、TAS6584-Q1 車載用 45V、4 チャネル、D 級オーディオ・アンプ IC に搭載されているリアルタイム負荷診断機能の組み込み実装について説明します。AC および DC 診断では、出力をイネーブルする前に負荷の状態を確認するのに対して、リアルタイム負荷診断機能では、オーディオ再生中にスピーカーの出力状況を監視して、フォルト状態があれば I2C バスおよび指定された I/O ピン経由で通知します。TAS6584-Q1 は、内蔵の電流センシング回路を使用して、開放負荷、負荷短絡、グランドへの短絡、電源への短絡の状態をリアルタイムで検出できます。

D 級アンプのリアルタイム負荷診断

TAS6584-Q1 は、AC および DC 診断を実施してオーディオ再生前に負荷のフォルト状態を検出するだけでなく、リアルタイム負荷診断機能も内蔵しています。この機能により、オーディオ再生中に負荷の電流を監視して、負荷短絡、開放負荷、グランドへの短絡、および電源への短絡のフォルトを検出できます。リアルタイム負荷診断の各機能は、オーディオ再生中にすべて同時に実行することも、個別に有効または無効にすることもできます。図 1 に TAS6584-Q1 のリアルタイム負荷診断 (RTLDG (Real-Time load diagnostics)) の概略ブロック図を示します。

GUID-20220214-SS0I-QCRS-DTJX-07LPWPLD3NNH-low.png図 1 TAS6584-Q1 リアルタイム負荷診断
負荷短絡および開放負荷診断

従来の車載用 D 級オーディオ・アンプは、オーディオ再生を開始する前に負荷短絡および開放負荷状態を検出し、フォルト状態が検出された場合は、オーディオの再生を阻止します。TAS6584-Q1 は、これらの診断機能だけでなく、組み込みの電流センス機能も使用します。TAS6584-Q1 は、センスされた電流を使って、オーディオ再生中に負荷短絡および開放負荷のフォルトを検出します。TAS6584-Q1 は、聞こえない周波数のオーディオ信号を内部の DSP で常に生成しています。これを「パイロット・トーン」といいます。このパイロット・トーンが、オーディオ信号に混合されます。フィルタ処理および復調を行うと、出力インピーダンスを連続的に検出することができます。このインピーダンスを、ユーザーが設定したスレッショルドと比較して、負荷短絡および開放負荷状態を検出します。リアルタイム負荷診断をイネーブルにする前に、負荷短絡と開放負荷のスレッショルドを個別に設定できます。

出力インピーダンスが開放負荷スレッショルドよりも高い場合は、開放負荷がレジスタへ通知されます。出力インピーダンスが短絡スレッショルドよりも低い場合は、負荷短絡がレジスタへ通知されます。負荷短絡または開放負荷イベントが検出されると、そのフラグは、RTLDG OL SL Fault Mem レジスタへ通知されます。これらのイベントは、フォルト・イベントまたは警告イベントとして、デバイスのいずれかの I/O ピンに直接配線できます。これらの信号は、I2C バスを経由してユーザーにも提供されます。負荷短絡または開放負荷スレッショルドの超過が発生したチャネルは、スイッチングを停止してフォルト状態へ移行します。チャネルを再起動する前にフォルトをクリアする必要があります。また、リアルタイム負荷診断を再プログラムする必要があります。
グランドへの短絡および電源への短絡診断
TAS6584-Q1 は、オーディオを有効にする前にグランドへの短絡および電源への短絡の状態を検出するだけでなく、電流センス機能を使って、オーディオ再生中にグランドへの短絡および電源への短絡のフォルトを検出します。この診断機能は、オーディオ再生前に低インピーダンスでの短絡を検出し、オーディオ再生中にはリアルタイム負荷診断機能を使って、より高いインピーダンスでの短絡を検出します。TAS6584-Q1 は、個々のチャネル出力 FET でセンスされた電流を使用して、複数の FET 間のオフセットについて、ユーザーが設定したグランド短絡スレッショルドおよびグランド開放スレッショルドと比較します。診断をイネーブルにする前に、これらのスレッショルドを設定する必要があります。スレッショルドの超過が検出された場合は、電源への短絡およびグランドへの短絡フラグが RTLDG Fault Mem レジスタへ通知されます。SL フラグおよび OL フラグと同様に、この信号もフォルトイベントとして、デバイスのいずれかの I/O ピンに直接配線できます。あるチャネルで電源への短絡またはグランドへの短絡イベントが検出された場合、そのチャネルは、スイッチングを停止してフォルト状態へ移行します。チャネルを再起動する前にフォルトをクリアする必要があります。また、リアルタイム負荷診断を再びイネーブルにする必要があります。

PurePath™ Console

テキサス・インスツルメンツは、PurePath Console という強力なオーディオ設計ツールを提供しています。このツールは、シンプルで使いやすい GUI を実現してオーディオの評価と設計を支援します。リアルタイム負荷診断テストの結果をリアルタイムで PurePath Console に表示すれば、TAS6584-Q1 のリアルタイム電流センス機能の実力がわかります。

リアルタイム負荷診断の詳細および TAS6584-Q1 の詳細については、テキサス・インスツルメンツにお問い合わせください。

リソース