JAJA708 September 2020 TPS55288 , TPS55288-Q1 , TPS552882 , TPS552882-Q1
これまでに述べてきた各種の方法で EMI の発生を低減してもノイズを十分に抑制できず、必要な EMI テストに失敗した場合、ノイズをさらに低減するために追加のフィルタリングとシールドが必要になります。しかし、EMI のフィルタリングとシールドを行うソリューションは一般に、回路のコスト、サイズ、重量が大幅に増加します。特に、厳格な CISPR25 レベル 5 制限に合格する必要のある車載アプリケーションでは、この問題が顕著になります。一部の電子制御ユニット (ECU) では、フィルタリングとシールドのソリューションが総コストの大きな割合を占めます。拡散スペクトラム・ディザリングを適用すると、単純でコスト効果の高いソリューションで平均程度の EMI ノイズ低減を行えます。
周波数ディザリングの目的は、スイッチング周波数 fs の整数倍の周波数に集中している高調波を、広いブランド・ノイズに拡散することです。図 8 の波形を参照してください。EMI ノイズは、スイッチング周波数を基準として定期的に発生します。放射は、スイッチング周波数とその n 次高調波に集中します。周波数ディザリングを使用すると、基本周波数は fs-Δf から fs+Δf に変化し、n 次高調波は nx(fs-Δf) から nx(fs+Δf) までに拡散されます。したがって、基本周波数の繰り返しは減少するため、測定された疑似ピークと平均ノイズのレベルが低下し、サイドバンド周波数の関係でノイズ・スペクトルが広く拡散されます。
周波数ディザリングありとなしの波形の比較を、図 2-9 に示します。周波数ディザリングなしでは、平均ノイズ・レベルは制限値より 2dB 高くなります。周波数ディザリングありでは、前に分析したようにノイズ形状が広帯域のノイズ・スペクトルに変化し、平均ノイズ・レベルは制限値よりはるかに低くなります。