JAJA761 October   2023 AM2634

 

  1.   1
  2.   概要
  3. 1はじめに
  4. 2浮動小数点ユニット
  5. 3三角関数演算ユニット (TMU)
  6. 4制御補償器アクセラレータ (CLA)
  7. 5ビタビ、複素算術演算、および CRC ユニット
  8. 6産業用通信サブシステム
  9. 7リアルタイム制御のニーズに最適なマイコンを見つける

はじめに

リアルタイム制御システムは、多数の重要なアプリケーションの中枢として機能します。これらのシステムはセンシング、処理、アクチュエータ駆動の微妙なバランスを調整するものであり、極めて重要です。

電気自動車のトラクション・インバータについて考えてみましょう。このインバータの主な機能は、バッテリの DC 電力を、モーターが使用する 3 相 AC 電力に変換することです。ここでは、ミリ秒単位で確実な動作が求められます。インバータは路面状況、負荷の要求、ドライバーの入力などの変数に常に対応し、滑らかでエネルギー効率の高いドライブを実現します。同様に、産業用ロボットも反復作業で高精度を達成するようにプログラムされています。回転角度であっても、力の印加であっても、その速度と精度は非常に重要です。わずかな偏差でさえ、欠陥品につながる可能性があるのです。リアルタイム制御システムのおかげで、ロボットのモーターも自動車のモーターも、24 時間、安全かつシームレスに動作します。


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図 1-1 リアルタイム制御ループの主な機能ブロック

すべてのリアルタイム制御システムは以下のものを含みます。

  1. センシング:デバイスは、EV バッテリの温度センサからロボット・アームの位置センサまで、一貫してリアルタイム・データをキャプチャします。
  2. 処理機能:洗練されたアルゴリズムがこの生データを解釈します。リアルタイム要件を考慮すると、このフェーズでの速度と精度は非常に重要です。
  3. アクチュエータ駆動:システムはコマンドを受信し、処理されたデータに基づいて具体的な動作を実行します。

多軸ドライブ、産業用ロボット、電気自動車、ソーラー・インバータなどどのような用途であっても、リアルタイム制御システムを設計する場合、主な目的はレイテンシを最小化して最適な性能を得ることです。専用のハードウェア・アクセラレータを搭載した高性能マイコンにより、これを可能にしてくれます。これらのアクセラレータは、複雑な制御アルゴリズムを効率的に処理できるように特別に設計されています。以下のセクションでは、リアルタイム制御ループの処理フェーズに注目し、システム・レイテンシを最小化するうえで、アルゴリズムの開発やハードウェア・アクセラレータが果たす役割について説明します。最後に、これらのアプリケーション向けにテキサス・インスツルメンツが開発した優れたマイコン製品シリーズの概要を説明します。