JAJA797B December   2019  – October 2024 MSP430FR2353 , MSP430FR2355

 

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設計目標

入力 出力 電源
ViMin ViMax VoMin VoMax Vcc Vee
0.2Vpp 2Vpp 0.1Vp 1Vp 3.3 V 0V

設計の説明

一部の MSP430™ マイコン (MCU) は、オペアンプ、DAC、プログラマブル ゲイン段など、構成可能な統合型信号チェーン要素を内蔵しています。これらの要素は、スマート アナログ コンボ (SAC) というペリフェラルを形成しています。さまざまな種類の SAC の詳細や、構成可能アナログ シグナル チェーン機能を活用する方法については、『MSP430 マイコンのスマート アナログ コンボのトレーニング』をご覧ください。設計を開始するには、『半波整流回路の設計ファイル』をダウンロードしてください。

この高精度の半波整流器は、変動する入力信号 (正弦波が望ましい) の負側の半分だけを反転して出力に転送します。この回路は、複数のダイオードを適切に配置して、反転アンプ構成の MSP430FR2311 SAC_L1 オペアンプを使用します。MSP430FR2355 SAC_L3 ブロック内の内蔵 DAC を使用し、オペアンプの非反転端子にバイアス電圧を供給する方法で、統合をさらに進めることができます。帰還抵抗の値を適切に選択することで、各種のゲインを実現できます。高精度の半波整流器は一般に、DC 出力電圧を生成するため、ピーク検出器や帯域幅の制限された非反転アンプなど、他のオペアンプ回路とともに使用されます。SAC_L3 オペアンプの出力を、MSP430FR2355 内にある他の 3 つの SAC_L3 ブロックとカスケード接続する方法でアナログ シグナル チェーン機能を拡張すること、またはオンボード ADC を使用して直接サンプリングすること、あるいはオンボード コンパレータを使用して監視したうえでマイコン内部でさらに処理を進めることができます。この構成は、最高 50kHz の周波数で、0.2Vpp~2Vppの範囲の正弦波入力信号に対して動作するよう設計されています。

デザイン ノート

  • リニア出力スイングに基づいて出力範囲を設定します (Aol の仕様を参照)。
  • 高速スイッチング ダイオードを使用します。高周波の入力信号は、ダイオードがブロッキングから順方向導通モードに移行する速度に応じて歪みます。ショットキー ダイオードは、PN 接合ダイオードよりも移行が高速なので望ましい選択となり得ますが、逆リーク電流が大きい欠点があります。
  • 回路のゲイン誤差は、抵抗の公差により決定されます。
  • 値の低い抵抗を選択し、ノイズ誤差を最小化してください。
  • MSP430FR2311 を使用して修正を実装する場合、汎用モードの SAC_L1 オペアンプまたはトランスインピーダンス アンプ (TIA) を使用して回路を実現できます。どちらの場合も、抵抗デバイダまたは外部 DAC を使用してバイアス電圧を設定できます。
  • TIA オペアンプを使用する場合、ペリフェラルの同相入力仕様内で動作するには、入力電圧を VCC/2 よりも低く維持する必要があります。
  • MSP430FR2355 を使用して修正を実装する場合、非反転オペアンプ端子でバイアス電圧を生成するために、4 個のオンボード SAC_L3 ペリフェラルのいずれかを DAC モードで使用して回路を実現できます。
  • 入力信号の極性が変化したとき、アンプの出力は 2 つのダイオード電圧降下をスルーする必要があります。MSP430 SAC および TIA オペアンプを「高速モード」に構成すると、より高いスルーレートを実現できます。
  • 半波整流回路の設計ファイル』には、SAC ペリフェラルを適切に初期化する方法を示すサンプル コードが付属しています。

設計手順

  1. 半波整流器の目的のゲインを設定し、帰還抵抗を選択します。
    V o = Gain × V i
    Gain = R f R 1 = 1
    R f = R 1 = 2 × R eq
    • ここで、Req は R1 と Rf の並列結合です。
  2. オペアンプの電圧広帯域ノイズと比較して、抵抗のノイズが無視できるよう、抵抗を選択します。
    E nr = 4 × k b × T × R eq
    R eq E nbb 2 4 × k b × T × 3 2 = Enbb
    = 20 nV Hz = 20 × 10 - 9 2 4 × 1 . 381 × 10 - 23 × 298 × 3 2 = 2 . 7 k Ω
    R f = R 1 5 . 4 k Ω 1 k Ω  (Standard Value)

設計シミュレーション

DC シミュレーション結果

過渡シミュレーション結果

ターゲット アプリケーション

参考資料

  1. テキサス・インスツルメンツ、『MSP430 半波整流回路』、設計ファイル
  2. テキサス・インスツルメンツ、『MSP430 MCU スマート アナログ コンボ トレーニング』、ビデオ

設計に使用されているオペアンプ

MSP430FRxx スマート アナログ コンボ
MSP430FR2311 SAC_L1 MSP430FR2355 SAC_L3
Vcc 2.0V~3.6V
VCM -0.1V~VCC + 0.1V
Vout レール ツー レール
Vos ±5 mV
AOL 100 dB
Iq 350µA (高速モード)
120µA (低消費電力モード)
Ib 50pA
UGBW 4MHz (高速モード) 2.8MHz (高速モード)
1.4MHz (低消費電力モード) 1MHz (低消費電力モード)
SR 3V/μs (高速モード)
1V/μs (低消費電力モード)
チャネル数 1 4
MSP430FR2311
MSP430FR2355

設計の代替オペアンプ

MSP430FR2311 トランスインピーダンス アンプ
Vcc 2.0V~3.6V
VCM -0.1V~VCC/2V
Vout レール ツー レール
Vos ±5 mV
AOL 100 dB
Iq 350µA (高速モード)
120µA (低消費電力モード)
Ib 5pA (TSSOP-16、OA 専用ピン入力付き)
50pA (TSSOP-20 および VQFN-16)
UGBW 5MHz (高速モード)
1.8MHz (低消費電力モード)
SR 4V/μs (高速モード)
1V/μs (低消費電力モード)
チャネル数 1
MSP430FR2311