JAJA805B November   2019  – October 2024 MSP430FR2310 , MSP430FR2311 , MSP430FR2353 , MSP430FR2355

 

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設計目標

入力 出力 電源 フルスケール レンジ誤差
IiMax ViMax VoMin VoMax Vcc Vee FSRError
1A 250 mV 100 mV 2.25 V 3.3 V 0 V 2.09%

設計の説明

一部の MSP430™ マイコン (MCU) は、オペアンプ、DAC、プログラマブル ゲイン段など、構成可能な統合型信号チェーン要素を内蔵しています。これらの要素は、スマート アナログ コンボ (SAC) というペリフェラルを形成しています。さまざまな種類の SAC の詳細や、構成可能アナログ シグナル チェーン機能を活用する方法については、ビデオ『MSP430 マイコンのスマート アナログ コンボのトレーニング』をご覧ください。設計を開始するには、単一電源、ローサイド、単方向電流センシング回路の設計ファイルをダウンロードしてください。

この単一電源、ローサイドの電流センシング ソリューションは、最大 1A の負荷電流を正確に検出し、100mV~2.25V の電圧に変換します。この回路は、MSP430FR2311 のオペアンプを非反転アンプ構成で使用しています。MSP430FR2355 のペリフェラル内にあるプログラマブル ゲイン ステージ ブロックを使用して、帰還抵抗ラダー (R2 と R3) をマイコンに統合することができるので、さらに統合を進める余地があります。入力電流範囲と出力電圧範囲は必要に応じてスケーリングでき、大きなスイングに対応するため、より高電圧の電源も使用できます。2 段目のオペアンプの出力を、オンボード ADC を使用して直接サンプリングすること、またはオンボード コンパレータを使用して監視したうえでマイコン内部でさらに処理を進めることもできます。

デザイン ノート

  • オペアンプの線形出力動作範囲内で使用してください。この範囲は通常、テスト条件に規定されています。
  • 同相電圧は入力電圧と同じです。
  • シャント抵抗と帰還抵抗の公差により、回路のゲイン誤差が決定されます。
  • 安定性の問題を最小限に抑えるため、アンプの出力に容量性の負荷を直接配置することは避けてください。
  • 値の大きい抵抗を使用すると、回路の位相マージンが劣化し、回路に追加のノイズが発生することがあります。
  • この回路の小信号帯域幅は、回路のゲインと、アンプのゲイン帯域幅積 (GBP) で決まります。
  • R3 と並列にコンデンサを追加すると、フィルタ処理を実現できます。また、R3 と並列にコンデンサを追加することで、値の大きい抵抗を使用したときの回路の安定性も向上します。
  • MSP430FR2355 の SAC_L3 を使ってソリューションを実装する場合、電流検出回路を測定するために、外付け受動部品 (R2 および R3) を使って非反転プログラマブル ゲイン アンプ モードまたは汎用モードにオペアンプを構成できます。
  • MSP430FR2311 を使ってソリューションを実装する場合、電流検出回路を測定するために、SAC_L1 オペアンプまたはトランスインピーダンス アンプ (TIA) を使ってオペアンプを構成できます。
  • 電流検出 AFE の出力をより正確に測定するため、2.5V の VREF を使って ADC をスケーリングするために MSP430FR2355 の拡張リファレンス モジュールを使えます。
  • 単一電源、ローサイド単方向電流センシングの設計ファイルには、SAC ペリフェラルを適切に初期化する方法を示したサンプル コードが含まれます。

設計手順

この回路の伝達関数を次に示します。

V o = I i × R 1 × 1 + R 3 R 2
  1. フルスケール シャント電圧を定義し、最大シャント抵抗を計算します。
    V iMax = 250  mV   at   I iMax = A
    R 1 = V iMax I iMax = 250  mV A = 250  m
  2. 最大線形出力電圧に必要なゲインを計算します。
    V iMax = 250  mV     and   V oMax = 2 . 25   V
    Gain = V oMax V iMax = 2.25  V 250  mV = 9 V V
  3. R2 と R3 の標準抵抗値を選択します。

    R2 = 715Ω (0.1% 標準抵抗値) とします。

    Gain = 9 V V   =   1   + R 3 R 2
    R 3 = ( 9 V V 1 ) × R 2 = 8 × 715 Ω = 5 . 72 k Ω

    R3 = 5.69kΩ (0.1% 標準抵抗値) を選択します。

    注: 帰還抵抗ラダー (R2 と R3) は、SAC_L3 の内蔵プログラマブル ゲイン抵抗ラダー (9x の非反転ゲインを設定済み) を使って実現できます。この実装を、MSP430FR2355 のサンプル コードに示します。SAC オペアンプを汎用モードで使う場合、外部抵抗を使って帰還抵抗ラダーを構成します。

  4. 出力のスイング ツー レール制限に達する前の最小入力電流を計算します。IiMin は、正確に検出可能な最小入力電流を表します。
    V oMin = 100   mV ;   R 1 = 250  m
      V iMin = V oMin Gain = 100  mV V V = 11 .1  mV
    I iMin = V iMin R 1 = 11.1  mV 250  m = 44 . 4   mA
  5. フルスケール範囲誤差と相対誤差を計算します。Vos は、データシートに記載されている標準のオフセット電圧です。
    FSR error = V os V iMax - V iMin × 100 = mV 238.9  mV × 100 = 2 . 09   %
    Relative Error at I iMax =   V o s V iMax ×100 =   mV 250  mV ×100 = 2   %
    Relative Error at I iMin =   V os V iMin ×100 =   mV 11.1 m V ×100 = 45   %
  6. 十分な位相マージンを維持するため、ゲイン設定抵抗とデバイスの入力容量によって生じるゼロが、回路の帯域幅より大きいことを確認します。
    1 2×π×(C cm +C diff ) ×(R 2 ||R 3 ) GBP G
      1 2×π×(3pF+3pF)× 715 Ω×5.69   kΩ 715 Ω+5.69 kΩ >   MHz V V = 41 . 76   MHz  > 444.4  kHz

設計シミュレーション

DC シミュレーション結果

AC シミュレーション結果

参考資料

  1. テキサス・インスツルメンツ、MSP430 単一電源、ローサイド単方向電流センシング回路、サンプル コードと SPICE シミュレーション ファイル
  2. テキサス・インスツルメンツ、3.75KB FRAM、オペアンプ、TIA (トランスインピーダンス アンプ)、DAC 付きコンパレータ、10 ビット ADC 搭載、16MHz アナログ内蔵マイコン製品ページ
  3. テキサス・インスツルメンツ、『MSP430 MCU スマート アナログ コンボ』、ビデオ

設計に使用されているオペアンプ

MSP430FRxx スマート アナログ コンボ
MSP430FR2311 SAC_L1 MSP430FR2355 SAC_L3
Vcc 2.0V~3.6V
VCM -0.1V~VCC + 0.1V
Vout レール ツー レール
Vos ±5mV
AOL 100 dB
Iq 350µA (高速モード)
120µA (低消費電力モード)
Ib 50pA
UGBW 4MHz (高速モード) 2.8MHz (高速モード)
1.4MHz (低消費電力モード) 1MHz (低消費電力モード)
SR 3V/μs (高速モード)
1V/μs (低消費電力モード)
チャネル数 1 4
MSP430FR2311
MSP430FR2355

設計の代替オペアンプ

MSP430FR2311 トランスインピーダンス アンプ
Vcc 2.0V~3.6V
VCM -0.1V~VCC/2V
Vout レール ツー レール
Vos ±5mV
AOL 100 dB
Iq 350µA (高速モード)
120µA (低消費電力モード)
Ib 5pA (TSSOP-16、OA 専用ピン入力付き)
50pA (TSSOP-20 および VQFN-16)
UGBW 5MHz (高速モード)
1.8MHz (低消費電力モード)
SR 4V/μs (高速モード)
1V/μs (低消費電力モード)
チャネル数 1
MSP430FR2311