JAJSDA4H February 2013 – June 2017 LM5122
PRODUCTION DATA.
昇圧レギュレータの開ループ応答は、変調器の伝達関数と帰還伝達関数との積で定義されます。dBスケールでプロットした場合、開ループ・ゲインは、変調器のゲインと帰還ゲインとの和として示されます。電流モード昇圧レギュレータの変調器の伝達関数は、組み込み電流ループ付きの電力段の伝達関数も含めて、1つの極、1つの零点、1つの右半平面(RHP)ゼロのシステムに単純化できます。
変調器の伝達関数は、次のように定義されます。
where
COUTの等価直列抵抗(ESR) (RESR)が十分に小さく、RHPゼロの周波数が目標のクロスオーバー周波数と大きく離れていれば、変調器の伝達関数は1つの極のシステムへさらに単純化でき、電圧ループはRCOMPとCCOMPの2つのループ補償部品だけでクローズでき、クロスオーバー周波数に単一の極の応答が残されます。クロスオーバー周波数における単一の極の応答により、90°の位相マージンを持つ、非常に安定したループが得られます。
帰還伝達関数には、帰還分圧抵抗と、エラー・アンプのループ補償が含まれます。RCOMP、CCOMP、およびオプションのCHFにより、エラー・アンプのゲインと位相の特性が設定され、原点の極、低周波数のゼロ、および高周波数の極が形成されます。
帰還伝達関数は、次のように定義されます。
where
原点の極は、出力の定常状態誤差を最小化します。低周波数のゼロは、変調器の負荷極を打ち消すように配置します。高周波数の極は、出力コンデンサのESRにより生じるゼロを打ち消すため、またはエラー・アンプのノイズ感受性を減らすために使用できます。クロスオーバー周波数より1桁低い、低周波数のゼロを配置することで、クロスオーバー周波数において位相ブーストの最大値を実現できます。CHFの追加により、帰還伝達関数に極が追加されるため、高周波数の極は、クロスオーバー周波数を超えた値に配置します。
クロスオーバー周波数(開ループ帯域幅)は通常、fSWの1/20~1/5の範囲で選択します。推定されるクロスオーバー周波数は、単純化した式で次のように定義できます。
where
クロスオーバー周波数を高くするには、RCOMPを増やし、それに比例してCCOMPを減らします。その逆に、RCOMPを減らし、それに比例してCCOMPを増やすと帯域幅は狭くなり、帰還伝達関数のゼロ周波数は変わらずに維持されます。
変調器の伝達関数は、ネットワーク・アナライザによって測定でき、帰還伝達関数は目的の開ループの伝達関数に合わせて構成できます。ネットワーク・アナライザを使用できない場合は、ステップ負荷過渡テストを実行し、許容される性能を検証できます。ステップ負荷の目標は、オーバーシュート/アンダーシュートが最小となる減衰応答です。