JAJT273 January   2024 AWR2544

 

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    1.     進化を続ける車両アーキテクチャ
    2.     サテライト アーキテクチャの利点
    3.     サテライト アーキテクチャ向けに設計されたレーダー センサ
    4.     まとめ
    5.     その他の資料

世界的な新車アセスメント プログラムの安全性評価および規制でアクティブ セーフティ機能に対する厳格化が進むなか、今日の車両において安全性は譲れない要素になっています。世界中の自動車メーカーは、自動緊急ブレーキ (AEB)、アダプティブ クルーズ コントロール (ACC)、先進レーン センタリングなど、自社の車両に搭載された先進運転支援システム (ADAS) の機能を継続的に強化することで、これらの安全性要件を満たし、より高いレベルの自律運転を目指しています。これらの機能をサポートし、安全性に関する規制に適合するために、車両に搭載されるレーダー センサの数は増加を続けています。

進化を続ける車両アーキテクチャ

車載システムの設計者が ADAS 機能の実装に取り組む 1 つの方法は、電気システムと電子システムのアーキテクチャの構造と統合を再考することです。現在の代表的なアーキテクチャはエッジ アーキテクチャです。このアーキテクチャは高度なインテリジェント レーダー センサで構成され、コントローラ エリア ネットワークまたは 100Mb イーサネット インターフェイスを介して ADAS の電子制御ユニット (ECU) に処理済みのデータをストリーミング送信します。これらのセンサは高性能を実現するように設計されており、プロセッサに加え、多くの場合は距離、ドップラー、角度の高速フーリエ変換 (FFT) とそれに続く高度なアルゴリズム (物体の検出、分類、追跡) を実行するための専用のアクセラレータで構成されます。それらの各エッジ レーダー センサから取得した最終的な物体データが ADAS ECU に送信されます。図 1 に、エッジ アーキテクチャを示します。

GUID-539C94A4-D3B2-41CD-A9EB-7BC620DE77E2-low.jpg GUID-12CB00C9-7AEC-44DD-93AC-FD19A529E93A-low.jpg図 1 ADAS ECU に接続されたエッジ アーキテクチャのレーダー センサ

エッジ アーキテクチャがさらに進化し、それに取って代わりつつあるのがサテライト アーキテクチャです。このアーキテクチャでは、車両に分散して搭載されたセンサ ヘッドから強力な集中型 ECU に高速な 1Gb イーサネット インターフェイスを介して事前処理済みの距離 FFT データをストリーミング送信します。データ処理の大部分は集中型 ECU にオフロードされます (図 2)。サテライト アーキテクチャでは、個々のレーダー センサですべてのデータ処理を個別に行うエッジ アーキテクチャとは異なり、集中型プロセッサで最小限に処理されたデータを使用して集中型データ処理を行うことができます。

GUID-8F8AAF6C-E728-4F38-A9FE-B498C53A84F1-low.jpg GUID-8CBF7610-BB95-41EC-AA28-A7005479F6A7-low.jpg図 2 集中型 ECU に接続されたサテライト アーキテクチャのレーダー センサ

サテライト アーキテクチャの利点

集中型処理により、効果的なセンサ フュージョン アルゴリズムを実装することで、より正確な意思決定を実現できます。これは、人間がそれぞれの目で別々に意思決定を行うのではななく、両方の目からの情報に基づいて脳で意思決定を下すことにたとえることができます。OEM (受託製造) メーカーは、角度分解能 (分散開口レーダー) や最大速度を高めるアルゴリズム、さらには物体分類のための機械学習アルゴリズムを展開できます。センサ入力をこれらのアルゴリズムと組み合わせることで、センシング性能が向上し、比較的精度の高い認識マップが得られます。これは、自動車メーカーにとって、自律性レベルの向上につながります。運転者や同乗者にとっては、より安全な自動車を意味します。

さらに、サテライト レーダー センサを使用すると、システムのスケーラビリティとモジュール性が向上します。自動車のより利便性の高い位置にセンサを配置できるため、さまざまな ADAS アプリケーションを実現できます。センサの数や構成を変更するだけで、カバレッジの度合いを調整することも可能です。これにより、単一のプラットフォームを、コスト重視のローエンド車両から、自律性レベルが異なる差別化されたプレミアム車両までスケーリングできます。

サテライト アーキテクチャは、センサ フュージョン アルゴリズムと集中型 ECU のより大きな計算能力を通じて付加価値を高めます。簡素化されたサテライト センサとソフトウェアによる差別化は、システムの複雑さを緩和し、価値を創造する新しい方法を実現するのに役立ちます。さらに、サテライト レーダーを使用すると、自動車メーカーは無線ソフトウェア アップデートを使用してシステム性能の向上とセキュリティの強化を図ることができます。これらの性能、スケーラビリティ、簡素化といった複数の利点により、自動車業界でサテライト アーキテクチャが注目されるようになっています。

サテライト アーキテクチャ向けに設計されたレーダー センサ

テキサス・インスツルメンツの AWR2544 レーダーオンチップ センサは、サテライト アーキテクチャ向けに設計された製品です。4 個のトランスミッタと 4 個のレシーバを搭載した 77GHz トランシーバを内蔵しており、検出範囲の拡大と性能の向上を実現しています。また、コストが最適化されたレーダー処理アクセラレータとスループットを強化した 1Gbps イーサネット インターフェイスを備えており、距離 FFT 圧縮データの生成とストリーミング送信が可能です。このデバイスは ASIL B (自動車安全水準 B) に対応しており、ハードウェア セキュリティ モジュールによりセキュアな実行環境を提供します。

また、このデバイスではテキサス・インスツルメンツの立体配置パッケージ (LOP:launch-on-package) テクノロジーを採用しており、パッケージ放射素子から 3D アンテナにプリント基板 (PCB) 内の導波管を通じて信号を直接送信できます。図 3 に、3D 導波管アンテナを搭載した AWR2544LOP 評価基板を示します。

GUID-7C5F3DD3-AE5E-4068-A853-96A2B73AD3BC-low.png図 3 AWR2544LOP 評価基板

システム レベルでは、LOP テクノロジーにより、信号対雑音比の向上による性能の向上、熱管理の容易さ、コストのかかる RF PCB 材料の回避によるコストの削減、複数のセンサの設計における PCB の再利用による柔軟性の向上が実現しています。

テキサス・インスツルメンツでは、システムの実装を容易にするために、互換性があり、安全性が強化された、最適化されたパワー マネージメント集積回路も提供しています。LP87725-Q1 は、3 個の低ノイズ降圧コンバータ、1 個の低ドロップアウト レギュレータ、1 個のロード スイッチを搭載しており、AWR2544 ベースのサテライト アーキテクチャに電力を供給するほか、イーサネット物理層も形成しています。

まとめ

ADAS アプリケーションは、自律性レベルと安全性要件の上昇に対応できるように継続的に進化しています。サテライト アーキテクチャのような新しいアーキテクチャが登場するにつれて、これらのシステムで使用するセンシング テクノロジーと処理テクノロジーも新しい機能に対応するように進化する必要があります。AWR2544 レーダー センサのようなデバイスを採用することで、車載システムの設計者は、これらのトレンドに柔軟に対応し、あらゆる人にとって、より安全でスマートな車両を製作することができます。

その他の資料