Steven Liu
従来、ヒューマン マシン インターフェイス (HMI) は、ユーザーが機械を操作するための物理的な管理パネルとして、プッシュ ボタン、スイッチ、インジケータ ライトなどから構成されていました。技術の進歩に伴い、各種プロセスの監視、ステータス情報の表示、コマンドの送信なども可能になりました。現在、HMI アプリケーションはあらゆる場所に存在しています。たとえば、テレビを制御するスマートフォン アプリ、自動車の音声コマンド、病院のメディカル モニタ、スマート ファクトリ内のタッチスクリーン管理パネルなどです。
私たちの毎日の生活では、そのような機械とのやり取りが継続的に増加しています。では、将来の HMI はどのような姿になるのでしょうか。従来のデータ収集、制御、表示に加えて、次世代の HMI は単純なヒューマン マシン インターフェイスとしてのアプリケーションにとどまらず、人間と機械との間の対話を実現することで、機械のインテリジェントな動作や人間との情報交換を可能にします。ビデオ「スマート ビルディング アクセス」では、タッチレスでのやり取り、物体とジェスチャの検出、顔認識を利用して、ビルディングにアクセスする例を紹介しています。
人間と機械との間の対話へと移行するためには、インタラクティブでスマートなアプリケーションが必要になりますが、それに伴い、HMI を実現するプロセッサに関連して一連の新しい課題が発生します。次世代 HMI の 3 つの検討事項を順に説明します。
新世代の HMI 設計では、各種新機能を実現するためにエッジ AI を活用します。たとえば、マシン ビジョンを採用すると、顔認識機能を通じて機械へのアクセスを制御できます。また、図 1 の例のように、ジェスチャ認識機能を通じて、タッチレス操作を実現することもできます。加えて、マシン ビジョンのようなエッジ AI 機能を HMI 設計に追加すると、現在のシステム ステータスや予防保守に関連して、より高精度の分析を実施できます。新しい HMI アプリケーションを作成する際には、エッジ AI アプリケーションの開発にかかわる労力と、プロセッサの能力について検討する必要があります。
シングルチップでの高い集積度は、デバイスの消費電力に影響を及ぼします。特に、エッジ AI 機能を全面的に有効にする場合には大きな影響があります。スマート設計で一般に求められる小さなフォーム ファクタは、特に過酷な環境での動作を想定する場合、最終製品の消費電力に関して、複雑さの水準を上昇させます。設計者はこの課題を克服するために、より電力効率の高い設計を行い、熱の制約を意識しながら、システム全体のコスト上昇も抑えることが求められます。また、最適化した電力設計の一環として、超低消費電力モードと複数の低消費電力モードを用意し、より長期的な製品寿命を確保する必要があります。
フィールド (現場) レベルで使用できるデバイスとセンサの数が増加し、各種リアルタイム産業用通信プロトコルが新規に登場している現状も、新しい HMI アプリケーションに課題を投げかけます。たとえば、スマート ファクトリ環境内の HMI は、他のデバイスや機械との通信を必要とするため、その設計ではコネクティビティ機能と制御機能を実装する必要があります。HMI にとって、ディスプレイは設計時のもう 1 つの検討事項であり、独自の機能を実装することや、人間と機械の間の情報交換を強化することができます。
HMI が進化を続けている現状で、各種アプリケーションの背後にあるプロセッサ技術はその進化に対応できる体制を整える必要があります。テキサス・インスツルメンツの Sitara™ AM62 プロセッサ ファミリの初期デバイス AM623、AM625、AM625SIP は、低消費電力と多くの産業用ペリフェラルの搭載を重視した設計を採用しており、次世代の HMI に関する検討事項を踏まえたデュアル ディスプレイ アプリケーションや小型フォーム ファクタ アプリケーションに向けて、電力効率の優れたエッジ AI 処理を実現するのに役立ちます。
AM625SIP は、AM6254 プロセッサのシステム イン パッケージ (SIP) バージョンで、512MB の LPDDR4 SDRAM が内蔵されています。このデバイスは、ハードウェア、ソフトウェア、消費電力などに関する、プロセッサの設計時にエンジニアが直面する多くの課題に直接対応します。SIP プロセッサには、ハードウェア設計の簡素化、サイズ / システム部品コストの最適化、LPDDR4 をチップ上にレイアウトするために必要な技術労力の削減など、他にもさまざまな利点があります。
さらに、AM62P プロセッサは、統合型のクワッド コア Arm Cortex-A53、より強力なグラフィックス処理ユニット (GPU)、32 ビットの LPDDR4 によって、HMI アプリケーションの性能を強化します。メモリ帯域幅の拡大により、レイテンシが大幅に短縮され、視覚的な遷移がスムーズになります。また、プロセッサに搭載された優れたマルチタスク機能によって、HMI アプリケーションに不可欠な即時の応答が可能になります。また、AM62P の特長は、拡張された GPU とビデオ コーデックによって、複雑な 3D グラフィックス、エフェクト、ビデオ ストリーミングを高い忠実度でレンダリングできることです。
AM62X プロセッサ ファミリに属する AM623、AM625、AM625SIP、AM62P プロセッサは、最大 1.4GHz で動作するシングルコアからクワッドコアまでの Arm Cortex-A53 プラットフォームのスケーラビリティや、TensorFlow をサポートするメインライン Linux によって、多様なエッジ AI 機能を実装できます。また、ユニバーサル非同期レシーバ / トランスミッタ (UART)、シリアル ペリフェラル インターフェイス (SPI)、I2C などのオンチップ リソースを搭載し、一般的な産業用センサまたはコントローラに適した接続オプションを活用できるので、設計をより簡素化できます。
AM623 と AM625 の最適化された電源設計は、コア電源で最小 7mW の複数の電力モードをサポートしており、ポータブル機器やバッテリ駆動機器の設計に使用できます。また、AM62P は専用のビデオ ハードウェア アクセラレータを搭載しているので、電源設計を最適化できます。これらのアクセラレータは、ビデオ処理を CPU から解放することで電力効率を向上させます。簡素化されたハードウェア設計により、コスト効率の優れたシステム ソリューションをコンパクトなサイズで実現できます。
AM623、AM625、AM625SIP プロセッサは、コスト効率の優れた RGB888 や、2K とフル HD の各ディスプレイをサポートする低電圧差動信号伝送 (LVDS) インターフェイスなど、多様なディスプレイ インターフェイスをサポートしています。AM62P は、DSI を搭載し、最大 3 つのディスプレイをサポートするので、ディスプレイ インターフェイスのリストがさらに拡充されます。マルチディスプレイ機能を活用すると、設計のフレキシビリティが高まり、イノベーションの実現が容易になります。
将来の HMI は、多様な環境とアプリケーションにわたって、人間と機械との間のコミュニケーションにインテリジェンスとイノベーションをもたらします。手術室では無菌環境を維持できるように、医療従事者がスクリーンにタッチする代わりに、音声を使用してメディカル モニタを操作できます。あるいは、騒音の多い工場で、労働者がジェスチャを使用するだけで管理パネルを操作できます。AM62 プロセッサ ファミリを活用して、次世代 HMI の設計を開始しましょう。
AM62X プロセッサ上でエッジ AI アプリケーションを評価するプロセスを簡素化するために役立つソフトウェアとすぐに使用できるデモが用意されています。また、エッジ AI の開発リソースとアカデミーを活用すれば、設計の労力と時間を節減できます。
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