JAJT312 February   2024 UCC28910

 

  1.   1
  2.   2
    1.     3
    2.     関連記事

John Dorosa

最も一般的な電源の 1 つはオフラインで、AC電源とも呼ばれます。一般的な家庭用機能の統合を目的とした製品の増加に伴い、1W 未満の出力能力を必要とする低電力オフライン コンバータの需要が高まっています。これらのアプリケーションにとって最も重要な設計上の課題は、効率、統合、低コストです。

低電力のオフライン コンバータのトポロジを決定するとき、通常最初に候補となるのはフライバックです。ただし、絶縁が必須ではない場合、この方法が最善のアプローチとは限りません。たとえば、最終製品がスマート ライト スイッチで、ユーザーがスマートフォンのアプリで制御するとします。この場合、動作中にユーザーが露出した電圧に接触することはないため、絶縁は必要ありません。

フライバック トポロジは部品表 (BOM) の部品数が少なく、電力段部品が数個しかなく、広い入力電圧範囲に対応できるようにトランスを設計できるため、オフライン電源に適切なソリューションです。しかし、設計の最終的な用途で絶縁が必要ない場合はどうすればよいでしょうか。この場合、入力がオフラインであることを考慮して、設計者は依然としてフライバックを使用したいと考えるでしょう。FET (電界効果トランジスタ) と 1 次側レギュレーションを搭載したコントローラを採用すると、小型のフライバック ソリューションを設計できます。

UCC28910 フライバック スイッチャを 1 次側レギュレーションで使用する非絶縁型フライバックの回路図の例を、図 1に示します。これは現実的な方法ですが、オフラインの上下反転型降圧トポロジならフライバックよりも効率が高く、BOM の部品数も少なくなります。この Power Tip では、低電力の AC/DC 変換で上下反転型降圧を使用する場合の利点について解説します。

GUID-20240205-SS0I-CHKD-ZW3M-BBXLCC903VZG-low.png図 1 この非絶縁型のフライバック設計は UCC28910 フライバック スイッチャを使用して AC を DC に変換しますが、上下反転型オフライン降圧トポロジを使用すると、より効率的に AC/DC 変換を行えます

上下反転型降圧の電力段を、図 1 に示します。フライバックと同様に、2 つのスイッチング部品、1 つの磁気部品 (トランスではなく単一のパワー インダクタ)、2 つのコンデンサがあります。上下反転型降圧トポロジは、その名前が示すように降圧コンバータと似ています。これらのスイッチは、入力電圧とグランドとの間でスイッチング波形を生成し、その波形がインダクタとコンデンサのネットワークでフィルタ処理されます。違いは、出力電圧が入力電圧を下回る電位に制御されることです。出力が入力電圧より低い値に「フローティング」している場合でも、通常のように下流の電子機器に電力を供給できます。

GUID-20240205-SS0I-68PB-SRZC-KWPTXVCRLP5P-low.png図 2 上下反転型の降圧出力段の概略回路図

FET がローサイドにあるので、フライバック コントローラから直接駆動できます。UCC28910 フライバック スイッチャを使用する上下反転型の降圧を、‌‌‌‌図 3 に示します。1 対 1 の結合型インダクタは、磁気スイッチング部品として機能します。1 次巻線は、電力段のインダクタとして機能します。2 次巻線は、タイミングと出力電圧のレギュレーション情報をコントローラに通知し、コントローラのローカル バイアス電源 (VDD) コンデンサを充電します。

GUID-20240205-SS0I-FPG9-B0NT-GC1ZGMPCVMDP-low.png図 3 UCC28910 フライバック スイッチャを使用する上下反転型の降圧設計の例

フライバック トポロジの欠点の 1 つは、トランス全体にわたるエネルギーの伝送方法です。このトポロジは、FET のオン時間にはエア ギャップにエネルギーを蓄積し、FET のオフ時間にはそのエネルギーを 2 次側に伝送します。実際のトランスでは、1 次側にある程度の漏れインダクタンスが生じます。エネルギーが 2 次側に伝送されると、残ったエネルギーは漏れインダクタンスに保存されます。このエネルギーは使用できず、ツェナー ダイオードや抵抗 / コンデンサのネットワークにより放散する必要があります。

降圧トポロジでは、FET のオフ時間にダイオード D7 を経由してリーケージ エネルギーが出力に供給されます。これにより部品数が減少し、効率が向上します。

もう 1 つの違いは、各磁気の設計損失と導通損失です。上下反転型の降圧には電力を伝送する巻線が 1 つしかないため、電力供給のすべての電流がこの巻線を通過するので、銅線を有効に利用できます。フライバックでは、銅線がこれほど有効に利用されません。FET がオンのとき、電流は 1 次巻線を流れますが、2 次巻線は流れません。FET がオフのとき、電流は 2 次巻線を流れますが、1 次巻線は流れません。したがって、より多くのエネルギーをトランスに蓄積し、フライバック設計でより多くの銅線を使用することで、同じ量の出力電力を供給できます。

図 4 は、入力と出力の仕様が同じで、降圧のインダクタと、フライバック トランスの 1 次巻線およびと 2 次巻線との電流波形を比較したものです。左側にある青色の箱は降圧インダクタの波形、右側にある 2 つの赤色の箱はフライバックの 1 次および 2 次巻線です。

各波形について、2 乗平均平方根電流に巻線の抵抗を乗じて導通損失を計算します。降圧には巻線が 1 つしかないため、磁気における合計導通損失は 1 つの巻線での損失です。ただし、フライバックの合計導通損失は、1 次と 2 次の巻線における損失の合計です。また、同様の電力レベルで上下反転型の降圧設計を使用する場合に比べて、フライバックの磁石は物理的に大きくなります。どちらかの部品の蓄積されたエネルギー量は 1/2 L × IPK2 と等しくなります。

図 4 に示す波形について、上下反転型の降圧が蓄積する必要がある電力は、フライバックが蓄積する必要のある電力の 1/4 だけと計算されます。結果として、上下反転型の降圧設計は、同等の電力が供給されるフライバック設計に比べて、フットプリントはかなり小さくなります。

GUID-20240205-SS0I-FD3K-6PHW-L2KLSLXCGD6Z-low.png図 4 降圧とフライバックのトポロジにおける電流波形の比較

絶縁が必要ない場合、低電力のオフライン アプリケーションにとって、フライバック トポロジが必ずしも最適なソリューションとは限りません。上下反転型の降圧を使用すると、より小型のトランスやインダクタを使用できるため、効率の向上と BOM コストの削減を実現できます。パワー エレクトロニクスの設計者に重要なのは、可能なすべてのトポロジのソリューションを検討し、特定の仕様に最適なものを判断することです。