JAJT317 May   2024 ADS9218 , ADS9219 , ADS9227 , ADS9813 , ADS9815 , ADS9817

 

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    2.     半導体テスター
    3.     データ アクイジション装置
    4.     リニア エンコーダ
    5.     まとめ
    6.     その他のリソース:

Kyle R. Stone

A/D コンバータ (ADC) は、電流、電圧、電力などの重要な電気的パラメータを高精度で監視および制御するように設計されたシステムの電圧と電流を監視および制御するため、同時サンプリングを使用します。最も重要なパラメータには、速度と精度があります。これらを向上させることで、シグナル チェーンの性能を最大限に高めることができます。さらに、チャネル密度が高い ADC を使うと、ボード サイズを小さくすることができ、または 1 枚のボードが処理するデータ量を増やすことができます。この技術記事では、半導体テスター、データ アクイジション装置、ハイエンド リニア エンコーダなど、サイト数の多いシステムにおいて、高精度の高速 ADC を使って精度とスループットを高める方法を説明します。

半導体テスター

チャネル密度は、半導体試験装置、特に自動メモリ試験装置において重要な役割を果たします。チャネル密度が高いほど、試験装置はより多くの試験サイトに対応でき、半導体デバイスのテスト スループットを高めることができます。チャネル数が多く、パッケージが小さい ADC を使うことで、高いチャネル密度を実現できます。しかし、チャネル数が多くても、ADC の帯域幅とセトリング時間を最適化することが重要です。帯域幅の拡大とセトリング時間の短縮により、信号のスループット時間は短くなります。その結果、半導体テスターのテスト時間全体が短縮されます。一般にメモリ テスターは多重化されたシステムであり、マルチプレクサ出力のデータを ADC が素早く取り込めるように、応答時間を短くする必要があります。

図 1 に、メモリ テスタの ADC 構成の回路図を示し、表 1ADS9817 のセトリング時間および帯域幅モードを示します。ADS9817 は、7mm x 7mm のパッケージに封止された、18 ビット、8 チャネル、デュアル同時サンプリング ADC です。

 メモリ テスタの ADC 構成の回路図 図 1 メモリ テスタの ADC 構成の回路図
表 1 ADS9817 の帯域幅モード
帯域幅モード セトリング時間 (フルスケールの 0.01%) 信号対雑音比 (標準値)
低ノイズ (21kHz まで) 2.5µs 92dB
広帯域幅 (最大 400kHz) 69.42µs 85.5dB

ADC の総合未調整誤差 (TUE) は、試験装置の性能とそれに関連するキャリブレーション手法に影響を及ぼすもう 1 つの要因です。高精度デバイスを使うと、システム設計の総合的な精度を高め、必要なキャリブレーション回数を減らすことができます。ADS9817 は、小さい積分非直線性 (INL) 誤差と、非常に小さい温度ドリフト係数 (オフセット ドリフト係数 0.5ppm/℃、ゲイン ドリフト係数 0.7ppm/℃) を持っています。これらの仕様は TUE を小さくし、ひいてはキャリブレーション回数を減らし、テスターの性能を向上させます。表 2 は、ADS9817 デバイスの TUE を理解する上での手掛かりとなります。

表 2 各種動作条件での ADS9817 の測定精度
総合未調整誤差 (TUE) (25℃)
INL (ppm) オフセット誤差 (ppm) ゲイン誤差 (ppm) TUE (ppm) 誤差 (%)
TUE (25℃) 15.26 495.90 183.10 528.84 0.053
キャリブレーション後の TUE (25℃) 15.26 0 0 15.26 0.0015
キャリブレーション後の TUE (25℃ ±5℃) 15.26 2.5 3.5 15.85 0.0016

データ アクイジション装置

高速データ アクイジション システムには、無減衰加速度計、広帯域幅電流トランスデューサなどの高周波数センサの出力を測定するために、広帯域幅でエイリアス フリーの高精度シグナル チェーンが必要です。広いダイナミック レンジにわたって高速な過渡信号を正確に取り込むために、高速かつ高精度の ADC が必要です。データ アクイジション システムには、発生する可能性がある各種の信号を正確に取り込むために、約 20MSPS の ADC が必要です。ADS9219 は、20MSPS 時に 95dB の信号対雑音比を実現します。

図 2 に、データ アクイジション システムの回路ブロック図を示します。ADC ドライバを内蔵しているため、フロントエンド アンプの帯域幅要件を緩和できます。この拡張により、データ アクイジション システムは高い精度と広い帯域幅の両方を実現できます。ADC がアナログ情報を取得した後、データ アクイジション ソフトウェアはデジタル化されたデータを処理し、ユーザーに出力します。

 データ アクイジションのための ADC
                    構成の回路図 図 2 データ アクイジションのための ADC 構成の回路図

リニア エンコーダ

サーボ ドライブ内で、アナログ インクリメンタル エンコーダは 1Vpp のサインおよびコサイン信号を出力し、それらの信号を ADC がデジタル化します。サイン信号とコサイン信号を補間することで、サーボ ドライブはモーターの位置と速度を決定できます。これらの信号を正確に補間するには、2 つの同時サンプリング チャネルが必要です。レーザー干渉計、ハイエンド リニア エンコーダなど、高い精度が要求されるモーター制御最終機器は、サインおよびコサイン モーター方式を利用することで、高速で動作するモーターを測定し、正確に動かすことができます。エンコーダの出力信号周波数はモーターの速度に直接関係しているため、ハイエンド リニア エンコーダには、サンプリング レートの高い ADC が必要です。

ADS9219ADS9218 はそれぞれ 20MSPS と 10MSPS の 2 チャネル同時サンプリング ADC であり、エンコーダのサインおよびコサイン出力の測定に最適です。THS4541 は、低消費電力かつ高性能の ADC ドライバとして機能する高速完全差動アンプです。これらのデバイスは、サインおよびコサイン モーター制御に適した選択肢です。なぜなら、これらの ADC は広い帯域幅で両方の信号を同時に取り込むことができ、より厳密な制御とより正確な動作を可能にするためです。モーター コントローラは、制御アルゴリズムで 2 つの信号を使って電気モーターを正確に制御できます。サイン信号とコサイン信号は位相が 90 度ずれているため、制御アルゴリズムはモーターの位置と回転速度を検出できます。図 3 に、インクリメンタル エンコーダ システムのエンコーダのブロック図を示します。

 THS
                    デバイスを使用したエンコーダのブロック図 図 3 THS デバイスを使用したエンコーダのブロック図

まとめ

半導体テスターが、高いチャネル密度と、特定の精度レベルでの高速性を必要とする理由を説明しました。データ アクイジション装置は、信号を取り込むために非常に速い速度を必要とします。また、サインおよびコサイン制御を使用したハイエンド リニア エンコーダは、正確な制御を実現するため、高精度同時サンプリング ADC を必要とします。ADS9219 または ADS9817 を使うと、小型で動作精度が高い一流のシステムを構築でき、最終機器のキャリブレーション回数とダウンタイムを最小化できます。

その他のリソース: