Trevor Dowd
技術記事『低消費電力 60GHz ミリ波レーダー センサを活用し、これまで以上に多くのアプリケーションで高精度センシングを実現する方法』では、60GHz ミリ波 (mmWave) レーダー センサが産業用およびコンシューマ エレクトロニクスのアプリケーションで高精度センシングを実現する仕組みが、著者の同僚である Kishore Ramaiah によって説明されています。本記事では、低消費電力 77GHz レーダー センサが、様々なアプリケーションで正確かつ確実に動作する方法を紹介します。
従来、77GHz 周波数帯域のレーダー センサは、死角検出や自動的な緊急ブレーキなど、先進運転支援システムのセンシング アプリケーションのほか、産業用タンク内のレベル トランスミッタなどに使用されてきました。一方、オフハイウェイ車両、E-バイクや自転車、駐車場の車止めなどの用途に向けた近接センシングと距離センシングの需要も高まってきています。このような領域では、これらのセンサによって作業環境の安全性を強化し、運転中の快適性や効率性を改善できる可能性があります。
精度と信頼性に優れたレベル センサは、石油ガス、化学、石油化学、上下水道管理、食品や飲料、製薬、資源採掘などの業界においては欠かせないものです。77GHz 帯域のミリ波レーダーを使用するレーダー センサなら、複雑な反射や干渉を伴う難易度の高い環境であっても、高い精度と分解能を実現できます。
レーダー センサを従来のテクノロジーと比較した場合の最大の利点は、腐食性、摩擦性、粘着性のある物質を非接触で測定できることです。76~81GHz の帯域幅で動作する本センサは、物質の液面の高さの小さな変化を確実に検出でき、長距離でも、または乱流、気泡、ガス、ほこり、水蒸気、温度変化、湿気が存在する環境でも高い精度で測定できます。帯域幅が広いため、レーダー チャープの開始周波数と終了周波数の差が大きく、距離分解能が向上します。このようにレーダー センサは、産業環境における安全性の強化に役立ち、リモートでの水位監視を実現して、危険な場所や行きにくい場所に人間が物理的に足を運ぶ必要性をなくすことができます。バッテリを使って動作させる場合も、低消費電力レーダーはメンテナンスなしで何年にもわたる寿命を確保できます。
77GHz 帯域で動作するレーダー デバイス IWRL1432 は、超低消費電力アーキテクチャを採用し、前述の各種アプリケーションにおいて高精度のセンシングを可能にします。IWRL1432 にはディープ スリープ モードが組み込まれ、1 回の測定で消費するエネルギーは 4mJ 未満であるため、バッテリ寿命は非常に長くなります。これらのセンサは、トランスミッタあたり 11dBm の出力電力で、わずか 3cm から 80m を超える距離の測定に対応できます。ハードウェア アクセラレータとマイコンを小型パッケージに完全統合し、マイコンの増設を不要にしています。図 1 に示す産業用タンクでは、水位検出にレーダー センサを利用しています。
E- バイクは近年、持続可能性と効率性の観点から、移動手段として大きな人気を集めています。ただ、特に霧が発生して薄暗い場合など、E- バイクや自転車の利用者が路上でお互いを認識しにくい状況では、事故の発生につながりやすくなります。
IWRL1432 のようなレーダー センサによって前方や後方への近接通知や衝突検知機能を取り入れることで、乗り手の安全性が高まります。レーダー センサは、視覚信号や音声信号を通じて乗り手や接近車両の運転手に通知を行い、衝突の危険がある可能性を知らせることができます。図 2 は、レーダー センサによって自転車の乗り手の安全性が高まると思われる場面を示しています。
センサ テクノロジーは、駐車場において効率的で安全なアクセス制御を実現するにあたって重要な役目を果たしています。駐車場の出入り口付近には、赤外線センサと超音波センサが設置され、車両の存在を検知するために使用されています。しかし、こうした種類のセンサは検知できる範囲が限られているうえ、ほこり、温度変化、音波が発生すると精度が低下しがちです。
IWRL1432 など、より広い検知範囲 (10m 超) と視野角 (150 度) を備えるレーダー センサであれば、このような制限を克服し、広めの出入り口で長めの距離を対象にアクセス制御ができます。また、雨や極端な温度など、厳しい環境条件下での耐久性にも優れています。レーダー センサは、誤って歩行者に反応することなく車両だけを検知するように、車両と人間を区別できるようになっています。また、アクセス制御システム、ゲート コントローラ、駐車場管理ソフトウェアにレーダー センサを統合することも簡単にできます。
農業機械や建設機械などのオフハイウェイ車両では、レーダー センサを使用して、重要な情報を提供したり、さまざまなタスクを支援したりできます。大型で扱いにくい車両を操作する際には、周囲にある樹木や別の機械などの障害物を検知して、衝突を防止できます。レーダー センサは対地速度も正確に測定でき、これは起伏がある不安定な地形や泥の地面などでは重要になります。人や物体の検出から対地速度の測定まで対応し、77GHz 帯域で SIL 2 のセンシングを実現する IWRL1432 レーダー センサによって、オフハイウェイ車両の効率性と安全を高めながら、操作環境を改善できます。
77GHz レーダー センサの IWRL1432 を使用することで、設計者はレベル トランスミッタ、E- バイク、駐車場の車止め、オフハイウェイ車両などのセンシング アプリケーションの課題に取り組むことができます。低消費電力動作、さまざまな環境条件での高い信頼性、広視野角、高精度という特長を通じて、効率性に優れた高性能センシング ソリューションを実現できます。
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