JAJT345 September   2024 TRF1305B2

 

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    1.     DC 結合 RF サンプリング ADC
    2.     直線性の向上
    3.     損傷から ADC を保護する
    4.     まとめ
    5.     その他の資料
    6.     参考資料
    7.     商標

Srinivas Seshadri および Keyur Tejani

ワイヤレス通信システムでデータ レートを高めたり、レーダーで近接ターゲットを識別するために狭いパルスを使用したりするには、試験 / 測定装置に高い性能および帯域幅要件が求められます。高帯域幅オシロスコープや RF デジタイザなどの無線周波数 (RF) 試験 / 測定装置では、RF サンプリング A/D コンバータ (ADC) を使用して、DC から数 GHz までの信号を同時にデジタル化します。

RF サンプリング ADCは、狭帯域 ADC に接続されたミキサに置き換えます。これにより、システムの複雑さが軽減されるとともに、広帯域試験 / 測定装置、レーダー、ワイヤレス トランシーバの性能が向上します。

設計者は通常、RF サンプリング ADCを駆動するために、シングルエンド ゲイン ブロックをパッシブ バランとのカスケードで使用します。ただし、このアプローチには、達成可能な性能が制限されるという欠点があります。この記事では、これらの欠点について説明するとともに、RF 完全差動アンプ (FDA) が RF サンプリング ADC の性能を最大限に高めるのにどのように役立つかを示します。

DC 結合 RF サンプリング ADC

RF サンプリング ADC は、同相ノイズと干渉を除去し、2 次歪みを改善するために差動入力を受け付けます。帯域幅が広いので、システム設計者はトランス ベースのパッシブ バランを使用し、シングルエンド RF 信号を差動信号に変換して RF サンプリング ADCを 駆動します。ただし、パッシブ バランは、サポートする帯域幅に基づいて、低周波側では数百 kHz から数十 MHz の周波数で動作します。したがって、試験 / 測定装置でパッシブ バランを使用して RF サンプリング ADC を駆動すると、デジタル化可能な最小周波数が制限されます。

DC 結合 TRF1305 RF FDA は、DC~6.5GHz をカバーできる大信号帯域幅を使って、シングルエンドから差動への変換を実行しながら、信号の増幅を行います。図 1 は、DC 結合アプリケーションで RF サンプリング ADC を駆動する TRF1305 RF FDA を示しています。RF サンプリング ADC は入力同相範囲が狭いため、この同相範囲外で動作すると ADC 性能が低下します。単一または分割を選択できる電源と出力同相モード制御により、TRF1305 の出力同相モードを ADC の入力同相モードに一致させることが簡単にできます。これらの特長により、このアンプは DC 結合 RF 試験 / 測定装置 (高帯域オシロスコープ、任意波形ジェネレータ、RF デジタイザなど) の様々な機能に利用されています。

 RF サンプリング ADC に結合されている TRF1305 RF FDA DC図 1 RF サンプリング ADC に結合されている TRF1305 RF FDA DC

直線性の向上

シグナル チェーン内の部品の非直線性は、大きな干渉信号の存在下での小さな信号の検出に影響を及ぼします。2 次非線形性は、狭帯域システムではあまり重要ではありません。発生した非直線性は、対象となる周波数帯域を外れ、通常はフィルタによって除去されるからです。ただし、広帯域システムではこれは当てはまりません。。入力信号帯域幅が複数オクターブをカバーしている場合、信号の 2 次非直線性は帯域内に現れます。たとえば、RF サンプリング ADC を 0.5GHz~2GHz の RF 帯域幅で使用する例について考えてみます。0.5GHz の信号の 2 次非直線性は 1GHz で発生します。これは周波数の 2 倍です。ただし、この 2 次非直線性は、対象となる最大周波数 2GHz より低く、フィルタによって除外できないため、最小化する必要があります。

RF サンプリング ADC は、入力が平衡差動信号で駆動された場合に 2 次非直線性を最小化するように設計されています。広帯域パッシブ バランでは、差動出力でゲインの低下と位相不均衡が発生し、信号伝達の不均衡化と ADC の直線性性能の低下につながる可能性があります [1]。パッシブ バランの前にある、信号を増幅するために使用される RF ゲインブロックでは、動作がシングルエンドであるため、2 次非直線性が劣化します。TRF1305 や TRF1208 などの RF FDA には、差動出力でゲインおよび位相不均衡を改善するのに役立つフィードバック技法が組み込まれています。アンプの差動特性により、2 次歪みが最小限に抑えられ、システム全体の直線性が向上すると同時に、信号が増幅されます。

損傷から ADC を保護する

多くの試験 / 測定および航空宇宙 / 防衛システムでは、ユーザーの入力は不明です。これらのシステムのコアにある RF ADC は、大電力レベルとオーバードライブに敏感です。また、これらの ADC は一般に高性能で、多くの場合、シグナル チェーン内で最も高価な部品の 1 つです。そのため先行部品によって ADC が損傷しないようにシグナル チェーンを注意深く設計することが重要ですRF FDA は、RF サンプリング ADC をフルスケールで駆動しているときに線形になるよう設計されています。

図 2 は、4GHz の連続波入力で TRF1208 FDA を過負荷にしたときの出力飽和レベルを示しています。TRF1208 のゲインは 16dB で、その出力は FDA への入力電力が約 2dBm のときに 3.6Vpp に飽和します。そのため、RF FDA を使用して ADC を駆動すると、出力クリッピングによって過負荷が発生しているときに本質的に電力が制限されます。

 4GHz の連続波入力によって過負荷が発生しているときに TRF1208 FDA の差動出力が 3.6Vpp でクランプする図 2 4GHz の連続波入力によって過負荷が発生しているときに TRF1208 FDA の差動出力が 3.6Vpp でクランプする

図 3 に示すように、FDA と ADC の間にアッテネータ パッドを配置すると、ADC ピンでの電圧スイングが制限され、ADC が損傷から保護されます。また、システム設計の考慮事項が簡素化され、設計の柔軟性が高まります。

 過負荷が発生しているときに RF FDA の出力がクリップし、ADC への信号電力が制限される図 3 過負荷が発生しているときに RF FDA の出力がクリップし、ADC への信号電力が制限される

まとめ

RF サンプリング ADC の進歩と採用により、部品数を減らし、ボード サイズを小さくして RF 試験 / 測定装置のシステム アーキテクチャを簡素化することが可能になります。ADC 駆動アプリケーション用にカスタマイズされた TRF1305 などの RF FDA を使用すると、DC~6.5GHz 超の信号をシングルエンドから差動に変換することで、システム アーキテクチャをさらに簡素化できます。広帯域 RF FDA と RF サンプリング ADC を受信シグナル チェーンで組み合わせると、システム性能が向上すると同時に、部品数が減り、ボード サイズが小さくなり、システム コストが減少します。

その他の資料

参考資料

  1. Reeder, Rob。『アクティブ型とパッシブ型の RF コンバータ フロント エンドの比較』。Planet Analog、2022 年 1 月 26 日。

Electronic Design で公開されています。

商標

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