JAJU768A November   2019  – July 2020

 

  1.   概要
  2.   リソース
  3.   特長
  4.   アプリケーション
  5.   5
  6. 1システムの説明
    1. 1.1 主なシステム仕様
  7. 2システム概要
    1. 2.1 ブロック図
    2. 2.2 設計上の考慮事項
    3. 2.3 主な使用製品
      1. 2.3.1 TPS61088-Q1
      2. 2.3.2 LMR33630-Q1
      3. 2.3.3 TPS7A2501
      4. 2.3.4 ATL431AIBDZR
    4. 2.4 システム設計理論
  8. 3ハードウェア、ソフトウェア、テスト要件、テスト結果
    1. 3.1 必要なハードウェアとソフトウェア
      1. 3.1.1 ハードウェア
    2. 3.2 テストと結果
      1. 3.2.1 テスト構成
      2. 3.2.2 テスト結果
  9. 4デザイン・ファイル
    1. 4.1 回路図
    2. 4.2 部品表 (BOM)
    3. 4.3 PCB レイアウトに関する推奨事項
      1. 4.3.1 レイアウトのプリント
    4. 4.4 Altium プロジェクト
    5. 4.5 ガーバー・ファイル
    6. 4.6 アセンブリの図面
  10. 5関連資料
    1. 5.1 商標
    2. 5.2 Third-Party Products Disclaimer
  11. 6著者について
  12. 7改訂履歴

システム設計理論

TIDA-050031 のリニア・チャージャの回路を、図 2-2 に示します。リニア・チャージャの利点は、シンプルで低コストなことです。初期充電電流を制限し、充電電流を一定の値にするため、トランジスタ Q2 と Q3 が追加されています。Q2 と Q3 が存在するため、短絡が起きたとき Q1 の損傷も防止できます。

GUID-6D78C595-7997-47DE-B7C6-9AA5CDF3B025-low.gif図 2-2 リニア・チャージャ回路

TIDA-050031 の主要な回路である TPS61088-Q1 昇圧コンバータを、図 2-3 に示します。TPS61088-Q1 の Vin ピンは、ダイオードを経由して出力電圧から電力が供給されます。メイン・バッテリが利用可能なとき、降圧コンバータが動作し、Vout は約 8.7V であるため、Vin ピンの電圧は D2 の順方向電圧降下を考慮して約 8.4V です。EN ピンは Vcc と同じ電位になります。メイン・バッテリが利用可能になり、降圧コンバータが動作を開始すると、TPS61088-Q1 が同時にイネーブルになります。この条件では、Vin ピンの動作時静止電流は 3μA 未満で、この静止電流はバックアップ・バッテリではなく Vout から流れます。したがって、この構成ではバックアップ・バッテリの寿命が大幅に延長される可能性があります。

GUID-68B85633-CBA5-498E-B25A-B302FAF9FD54-low.gif図 2-3 TPS61088-Q1 昇圧コンバータ

TIDA-050031 の動作シーケンスを、図 2-4 に示します。時刻 t0 で、メイン・バッテリが準備完了になります。降圧コンバータが動作を開始します。t1 の時点で、LDO 出力 5V で、LDO の PG ピンが High になり、リニア・チャージャが動作を開始します。これにより、100mA の定電流でバックアップ・バッテリが充電されます。t2 の時点でメイン・バッテリがブラウンアウトし、リニア・チャージャが動作を停止すると、ECall システムは TPS61088-Q1 昇圧コンバータを経由してバックアップ・バッテリから電力をが供給されます。t3 の時点でメイン・バッテリが回復し、再度降圧コンバータ経由で ECall システムに電力が供給されるようになります。

GUID-9DC4426F-9AC4-48D8-91FD-6F003A160F4D-low.png図 2-4 動作シーケンス