JAJU768A November 2019 – July 2020
TIDA-050031 のリニア・チャージャの回路を、図 2-2 に示します。リニア・チャージャの利点は、シンプルで低コストなことです。初期充電電流を制限し、充電電流を一定の値にするため、トランジスタ Q2 と Q3 が追加されています。Q2 と Q3 が存在するため、短絡が起きたとき Q1 の損傷も防止できます。
TIDA-050031 の主要な回路である TPS61088-Q1 昇圧コンバータを、図 2-3 に示します。TPS61088-Q1 の Vin ピンは、ダイオードを経由して出力電圧から電力が供給されます。メイン・バッテリが利用可能なとき、降圧コンバータが動作し、Vout は約 8.7V であるため、Vin ピンの電圧は D2 の順方向電圧降下を考慮して約 8.4V です。EN ピンは Vcc と同じ電位になります。メイン・バッテリが利用可能になり、降圧コンバータが動作を開始すると、TPS61088-Q1 が同時にイネーブルになります。この条件では、Vin ピンの動作時静止電流は 3μA 未満で、この静止電流はバックアップ・バッテリではなく Vout から流れます。したがって、この構成ではバックアップ・バッテリの寿命が大幅に延長される可能性があります。
TIDA-050031 の動作シーケンスを、図 2-4 に示します。時刻 t0 で、メイン・バッテリが準備完了になります。降圧コンバータが動作を開始します。t1 の時点で、LDO 出力 5V で、LDO の PG ピンが High になり、リニア・チャージャが動作を開始します。これにより、100mA の定電流でバックアップ・バッテリが充電されます。t2 の時点でメイン・バッテリがブラウンアウトし、リニア・チャージャが動作を停止すると、ECall システムは TPS61088-Q1 昇圧コンバータを経由してバックアップ・バッテリから電力をが供給されます。t3 の時点でメイン・バッテリが回復し、再度降圧コンバータ経由で ECall システムに電力が供給されるようになります。