JAJU906 October 2023
現在、バッテリ・エネルギー・ストレージ・システム (BESS) は、住宅、商業および産業、グリッド・エネルギー・ストレージ、管理において重要な役割を果たしています。BESS は、各種の高電圧システム構造を採用しています。商業および産業およびグリッド BESS には、それぞれがスタックされたパックを含む複数のラックが含まれます。住宅用 BESS にはパックのみが含まれます。
パックは、BESS を構成する基本的なモジュールです。パックは、直列および並列接続の複数のバッテリ・セルで構成されます。セル・チャネル数は 12~64 です。バッテリ・セルには、ライフサイクル全体にわたる適切な動作および保存温度、電圧範囲、電流範囲と安全性とが必要とされるため、設計者はパック・レベルでバッテリ・セルを監視および保護する必要があります。
バッテリ管理ユニット (BMU) は、パック内の各バッテリ・セルの電圧と温度をライフサイクル全体にわたって監視するコントローラです。BMU には、電圧と温度を監視するための高い測定精度が求められます。BMU によって収集された情報は、安全および充電管理のために、ラック・レベル・コントローラのバッテリ制御ユニット (BCU) に送られます。BMU と BCU の間の堅牢かつ高速な通信も求められます。
安全性、規制、コストに関する懸念が、BESS に LiFePO4 バッテリを採用するという需要を喚起しています。LiFePO4 バッテリの充電または放電曲線は、約 85%~100% の充電状態 (SOC) の範囲ではかなりの直線性を維持しますが、約 10%~約 85% の SOC の範囲では傾きが急激に変化します。これは、BESS 設計で許容される電圧精度を選択する際に重要となります。ほとんどの条件で、高い SOC 精度と広い放電深度 (DOD) を計算するには 3mV~5mV の精度で測定する必要があります。
通信インターフェイスとして、通信の堅牢性を高めるために CAN (Controller Area Network) が従来から広く使用されています。CAN 構造のコントローラでは、CAN 通信機能を動作させるため、マイクロコントローラ・ユニット (MCU)、デジタル・アイソレータ、絶縁型電源モジュールが必要とされます。
デイジー・チェーンで CAN 設計を置き換えることもできます。CAN インターフェイスの場合と比較して、BMU で求められるものは数個のトランスのみです。したがって、特に大容量バッテリ・パック・アプリケーションでは、デイジー・チェーン設計は CAN よりもコストの点で有利です。多くの BMU ノードと CAN インターフェイス・デバイスで構成される大容量 BESS 内 CAN 構造では、コストが問題となるためです。BMU および BCU 通信インターフェイス間に求められる強化絶縁は、デジタル・アイソレータと絶縁型電源モジュールを必要とするため、絶縁要件もコストを上昇させます。
この設計は、大容量バッテリ・パック・アプリケーションと、住宅、商業および産業、グリッド BESS などに適用できるアプリケーションを想定しています。本設計は、2 つの BQ79616 デバイス (バッテリ・モニタ、バランサ、内蔵ハードウェア保護機能) を使用して、32s バッテリ・パックの各セル電圧と温度を監視し、セル過電圧、セル低電圧、過熱などの状況からパックを保護しています。本設計には、最大 32s のセル温度を測定するための 8:1 の GPIO 拡張比を得るのに必要な 4 つの TMUX1308 デバイスと、外付け EEPROM (電気的に消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリ) にパック情報を復元するための SPI (シリアル・ペリフェラル・インターフェイス) の拡張に必要な 1 つの TMUX1574 デバイスが含まれます。本設計は、セル・チャネルあたり 100mA のバランシング電流を得るために内部セル・バランシング (CB) を採用しており、将来的により大きなバランシング電流に対応できるように、外部 CB 回路にも対応できます。
2 つの BQ79616 デバイス間のオンボード通信には、コンデンサ絶縁型デイジー・チェーンを採用しています。BMU と、BMU または BCU との間のオフボード通信には、トランス絶縁型デイジー・チェーンを採用しています。本設計は、CAN 構造内で使用される可能性があるオフボード MCU との絶縁型 UART インターフェイスにも対応できます。