JAJU912 November 2023
IEC 61800-9 エネルギー クラス IES2 に対応する高いエネルギー効率を達成した AC 入力 3 相インバータは、世界的なエネルギー消費量の低減に貢献するだけでなく、ヒートシンクのサイズが小さい小型高電力密度設計を可能にします。モーターが機械的可動システム (6 軸ロボットなど) の一部になっている産業用ロボットおよびファクトリ オートメーション アプリケーションで使われるモーター内蔵型サーボ ドライブでは特に、フォーム ファクタと重量は重要な役割を果たします。
モーター内蔵型 3 相インバータにはしばしば、単相 200~230VAC 入力 (整流された 320VDC に相当) から電力を供給します。入力電力レベルは通常 3kW 未満です。現在、230VAC 入力サーボ ドライブの大半は、8kHz~16kHz の PWM スイッチング周波数を採用した IGBT ベースのパワー スイッチを利用しています。絶縁ゲート型バイポーラ トランジスタ (IGBT) の電力損失に起因して、ヒートシンクのサイズは 3 相インバータ全体のサイズの 30% よりも大きくなることがあります。
窒化ガリウム (GaN) パワー トランジスタは、8kHz~16kHz という低いパルス幅変調 (PWM) スイッチング周波数であっても、IGBT に比べて電力損失を大幅に低減するのに役立ちます。LMG3422R030 などのドライバ内蔵型 GaN-FET は、スイッチング損失と導通損失の両方を低減することで、16kHz PWM で 99.4% のピーク効率を達成できます。これにより、従来型 IGBT ベース 3 相インバータに比べて、総合電力損失を 1/4 以下に低減できます (このリファレンス デザインの 7ARMS 出力位相電流を参照)。
TIDA-010255 リファレンス デザインは、6 つの高速スイッチング LMG3422R030 600V 30mΩ GaN-FET を使って、高効率、ホット側 MCU 制御の 320VDC、2kW、3 相出力段を実現しています。LMG3422R030 は、ドライバ、保護機能、温度通知機能を内蔵しているため、外部保護および温度監視回路のためのシステム コストを低減できると同時に、信頼性を向上させるのに有効です。インダクタとブートストラップ電源を内蔵した降圧モジュールにより、パワー マネージメントとゲート駆動バイアス電源の占有面積を低減できます。1mΩ の同相電流シャントと ±50mV 入力の強化絶縁型変調器 AMC1306M05 とを使用して、高精度で直線性の高い位相電流検出を実現します。MCU グランド (GND) がパワー GND (DC–) と等しいホット側制御に起因して、DC リンク電圧と 3 相電圧を検出するのに絶縁は不要です。非絶縁型 AMC1035 デルタ シグマ変調器が DC リンク電圧を測定します。非絶縁型アナログ位相電圧帰還方式を使うと、12 ビット ADC 内蔵 C2000 MCU を使用した InstaSPIN-FOC などの高度なセンサレス設計が可能です。
産業用ドライブを使用してテキサス・インスツルメンツの GaN 技術を評価するため、このリファレンス デザインでは、C2000 MCU controlCARD (F28379D controlCARD など) と組み合わせて使うための 180 ピン HSEC コネクタと、その他のマイコン (Sitara AM2631、AM2431 など) に接続するための標準ヘッダーのどちらかで 3.3V I/O インターフェイス信号を提供しています。
このリファレンス デザインは、室温でヒートシンクを使わず、320VDC の DC リンク電圧、16kHz PWM、最大 7.7ARMS (連続) の 3 相出力電流を使ってテスト済みです。大電流または高い周囲温度でテストする場合、PCB の裏側にヒートシンクを取り付けることができます。PCB には取り付け穴があります。