JAJU913A December 2023 – August 2024
図 1-2 に、DC/AC 段のブロック図を示します。インバータ段は双方向であり、DC 段から AC 段へ、またはその逆への電力変換を可能にします。トポロジは H ブリッジ構造で、対角に配置されたスイッチの各グループは、出力電圧の半周期中に高周波で動作します。グリッドに並列に配置された追加のスイッチによって、出力フィルタを通る追加の電圧レベルが生成され、この電力変換システムは 3 レベルのトポロジになります。これにより、FET のスイッチング損失と COSS 損失が低減されます。また、一定の同相モード電圧が得られ、フリーホイーリング フェーズでは PV 入力段が AC グリッドから切り離されるために、リーク電流は無視できるほど小さくなります。
このトポロジは、AC グリッドと PV パネルの間で絶縁が確保されていないようなトランスレスのストリング インバータ アプリケーションに適しています。同相モード電流は、PV アプリケーションにおいて周知の課題であり、これは PV 表面が接地された屋根や近接する他の表面上に露出することに起因しています。図 1-6 に示すように、表面積が大きいと、PV パネルと接地の間の浮遊容量が大きくなり、湿気の多い環境や雨の日には 200nF/kWp にも達することがあります。コンバータの同相モード電圧をうまく抑制できない場合、この寄生容量によってシステムに大きな同相モード電流が流れ込み、EMI や、グリッド電流の歪みなどの問題につながる可能性があります。
トランスを含むマイクロインバータは電流に対して高インピーダンスのリターン パスを確保しますが、ストリング インバータのようなコスト重視のアプリケーションでは、そうではありません。ストリング インバータは通常、リターン電流に対して低インピーダンスのパスを確保するため、図 1-7 に示すように非常に高い電流値になります。したがって、トランスレスの概念では、グランドへのリーク電流が重要な問題になります。このような目的で、発振を抑えた特殊な単相トランスレス トポロジを実装することができます。これについては後述します。また、フレームレス パネルの導入により、このような問題はさらに少なくなりました。
この DC/AC コンバータ段は 87kHz という高いスイッチング周波数で動作し、正弦波グリッド電流を制御するため、EMI フィルタの設計をコンパクト化できます。単相の 230VRMS グリッドにより、20ARMS の出力電流で 4.6kW の出力電力が得られます。EMI フィルタは、同相モード除去能力を向上させるために両方のレールに分かれている 1 つの昇圧インダクタ、2 つの同相モード チョーク、Cx コンデンサ、Cy コンデンサで構成されています。EMI フィルタは、グリッドに注入される差動モード ノイズと同相モード ノイズの両方を減衰するように設計されています。さらに、このような単相アプリケーションに存在する 100Hz 電力リップルを補償するために、DC リンクには電解コンデンサが設けられています。貫通電流を防止するため、両方のハーフ ブリッジにデッド タイムを設定する必要があることに注意します。グリッドの電流は、比例共振 (PR) コントローラを使って、マイコンによって測定および制御されます。有効および無効電力を制御するには、共通結合点 (PCC) に流れる電流を高精度で測定する必要があります。電流制御を行うには、グリッド電圧周波数に同期したフェーズ ロック ループ (PLL) を実装する必要があります。DC リンク電圧制御ループを使用して、グリッドから供給される有効電流シンクまたはソースの振幅を制御します。