JAJU914 December   2023 DRV8210 , INA350 , MSPM0L1306

 

  1.   1
  2.   概要
  3.   リソース
  4.   特長
  5.   アプリケーション
  6.   6
  7. 1システムの説明
    1. 1.1 用語
    2. 1.2 主なシステム仕様
  8. 2システム概要
    1. 2.1 ブロック図
    2. 2.2 設計上の考慮事項
      1. 2.2.1 システム設計理論
      2. 2.2.2 ブリッジのバイアス印加
      3. 2.2.3 INA 段
      4. 2.2.4 フィルタ設計
    3. 2.3 主な使用製品
      1. 2.3.1 マイクロコントローラ - MSPM0L1306
      2. 2.3.2 OPA-LMV324A
      3. 2.3.3 LDO-TPS7A2433
      4. 2.3.4 INA350
      5. 2.3.5 DRV8210
      6. 2.3.6 ATL431LI
  9. 3ハードウェア、ソフトウェア、テスト要件、テスト結果
    1. 3.1 ハードウェア要件
      1. 3.1.1 システムの接続
    2. 3.2 ソフトウェア要件
    3. 3.3 デモの実行
    4. 3.4 テスト結果
  10. 4設計とドキュメントのサポート
    1. 4.1 デザイン ファイル
      1. 4.1.1 回路図
      2. 4.1.2 BOM
      3. 4.1.3 PCB レイアウトに関する推奨事項
    2. 4.2 ツールとソフトウェア
    3. 4.3 ドキュメントのサポート
    4. 4.4 サポート・リソース
    5. 4.5 商標
  11. 5著者

システム設計理論

血液は腕に流れ込み、血管内で圧力を生じさせます。血流は心拍数に応じて変化し、周期的な波形が生成されます。カフの圧力が収縮期血圧より高くなると血流は遮断され、血流が遮断されると波形は消えます。測定中は、センサからの圧力データは、カフからの静圧と血管からの振動波に重ね合わされたものとなります。カフの圧力がさらに上がると、振動波は大きくなります。最大値に達すると振動波は小さくなり、血管が閉塞されると振動波は消失します。振動波が最大値となるときのカフの圧力を平均圧力と呼んでいます (図 2-3 を参照)。

GUID-20231215-SS0I-THGS-RLRJ-C09VCZBQJHSF-low.svg図 2-3 オシロメトリック法による血圧測定

振動波とエンベロープの取得は簡単ですが (図 2-3 を参照)、収縮期パラメータと拡張期パラメータが必要です。振動曲線からこれらのパラメータを取得する方法は 2 つあります。一つは比例係数法と呼ばれる方法で、平均血圧と収縮期血圧および拡張期血圧との間に比例関係が存在します (係数はそれぞれ Ks、Kd と呼ばれている)。

式 1. S P M P = K s   v a l u e   r a n g e 0.30 - 0.75
式 2. D P M P = K d   v a l u e   r a n g e 0.45 - 0.90

これら 2 つの係数は、多数の統計データから得られたものです。比例係数法はシンプルでマイクロコントローラ アプリケーションに適していますが、個々の差が大きく一貫性がありません。この方法では大きな誤差が発生することがあります。

他にも多くのアルゴリズムやアプローチがあり、消費電力とプロセッサ要件のバランスをとることができます。参照用として、表 2-1 に比例係数 (Ks、Kd) を示します。付属のソフトウェアでは、血圧アルゴリズム セクションは空白のままになっています。

表 2-1 平均圧力範囲による Ks 値、Kd 値 (J Moraes)
平均圧力範囲 (mmHg) Ks 平均圧力範囲 (mmHg) Kd
MAP > 200 0.5 MAP > 180 0.75
200 ≥ MAP > 150 0.29 180 ≥ MAP > 140 0.82
150 ≥ MAP > 135 0.45 140 ≥ MAP > 120 0.85
135 ≥ MAP > 120 0.52 120 ≥ MAP > 60 0.78
120 ≥ MAP > 110 0.57 60 ≥ MAP > 50 0.6
110 ≥ MAP > 70 0.58 50 ≥ MAP 0.5
70 ≥ MAP 0.64 50 ≥ MAP 0.5

この設計では、オムロンの 2SMPP-03 圧力センサを使用しています。このセンサは、このアプリケーションで対象となる 0kPa~40kPa の圧力範囲にわたって、約 0mV~30mV の出力電圧範囲を実現します。これは 100µA でバイアスを印加される 20kΩ のピエゾ抵抗ブリッジ センサです。このブリッジは、低消費電力のために選択されています。通常、バッテリ駆動時間を延長するためには、信号対雑音比 (SNR) は犠牲にされることがありますが、この低コストのシグナル チェーンは入力換算ノイズを 10µVPP 未満に抑えることができ、これによって、信号チェーンのゲインを増加させ、圧力ブリッジを駆動するために必要な電流を低減することができます。