JAJU944 August 2024
図 3-4 に、TIDA-020065 の動作を最もよく表しているステート マシンを示します。最初に、MCU が起動し、プリチャージ モードに移行して、15ms にわたって負荷コンデンサを充電します。この 15ms の期間が経過した後、nLPM を High にプルすることで、本システムはアクティブ モードに遷移します。
アクティブ状態では、最大 30A の負荷に対応するメイン FET が駆動されます。S3 を押すと、本システムをアクティブ モードから低消費電力モードに遷移させることができます。S2 を使うと、設定された時間電流ヒューズ特性を切り替えることもできます。
MSPM01306 の ADC ペリフェラルは、アクティブ モードの出力電流を定期的に監視するため、100μs ごとにサンプリングを行います。過負荷電流が検出されると、本システムは即座にアクティブ モードからシャットダウン モードに遷移します。電流パルスがアクティブである期間の長さとそのパルスの高さに応じて、ソフトウェアは、設定された時間電流特性を使用して、図 3-5 に示す電流範囲にわたって、ワイヤ ハーネスと負荷を保護します。
ソフトウェアの I2t アルゴリズムは、実際の溶断式ヒューズの挙動を再現します。つまり、ピーク負荷過渡またはその他の過電流がワイヤの電流能力を超え、車両の配線を損傷させる前に、出力が遮断されます。I2t アルゴリズムは、式 10 によって最もよく説明されます。
ここで、
実際のヒューズをより的確にシミュレートするため、ADC サンプルが取得されるたびに、の測定値からを減算します。この追加により、スマート ヒューズは Inom スレッショルドで動作でき、通常の負荷過渡によって誤ってシャットダウンすることを回避できます。
監視可能な電流の最大値 (この設計では 66A) までしか I2t アルゴリズムを実行できないという制限を回避するため、SC スレッショルドまでは一定時間で出力をシャットダウンするための固定遅延シャットダウン スレッショルドが追加されています。この設計では、固定遅延シャットダウン時間として 4ms が選択されていますが、本システムで許容される電流パルスに応じてこの時間を設定してください。
ヒューズ シャットダウンと固定遅延シャットダウンのどちらかが発生すると、本システムはクールダウン モードに移行します。このモードでは、INP が Low にプルされ、本システムは過負荷イベントから回復できます。デフォルトでは、MSPM0L1306-Q1 は出力を回復させるため、自動的に 4s 以内に再び INP を High にプルします。その一方で、TP14 を Low にプルすることで、クールダウン モードでラッチオフ動作を行うようにソフトウェアを構成することもできます。その場合、S2 または S3 を押すことでユーザー入力が受信されるまで、出力は無期限にオフ状態に維持されます。この挙動を溶断型ヒューズと比較すると、溶断型ヒューズの場合、交換が必要である一方、この設計の場合、リセット可能な過電流保護が実現できることが分かります。より現実的なアプリケーションでは、ワイヤ ハーネスを冷却するのに十分な時間が確実に経過するように、ソフトウェアは車両の配線の熱的条件を考慮します。
即時にシャットダウンを行うには、TPS1213-Q1 の短絡保護機能が使用されます。ハードウェア障害が検出されたことを MSPM0L1306-Q1 に知らせるため、nFLT が Low にプルされます。この状態で S2 または S3 を押すと、INP がトグルされ、TPS1213-Q1 の SC 保護ラッチがクリアされます。