JAJA518B December 2020 – March 2022 INA168 , INA169 , INA240 , INA280 , INA290 , INA293
プログラマブル・ロジック・コントローラ (PLC) は、ファクトリ・オートメーション・アプリケーションの産業制御システムで最も広く採用されているコンピュータ・プロトコルです。PLC システムはシステムを制御し、優先度付けし、状態を示すコントローラです。このコントローラは、今日のコンピュータと同様な基本的バイナリ・ロジックによりプログラムされます。PLC システムは次の部分で構成されます。
PLC システムは産業用アプリケーションに広く使用され、インダストリー 4.0 の革命を推進しています。PLC システムにより、制御および自動化に使用する半導体デバイスを迅速に統合できるようになり、効率およびファクトリ・スループットが向上します。産業オートメーションおよび統合の例として、温度の制御、ライトによるフォルト表示のオン / オフ、圧力センサによるパッケージの重量測定、ソレノイド・リレーのオン / オフなどが挙げられます。
産業用システムはノイズの多い環境で使用され、高周波数の信号とノイズが低電圧信号に混入する可能性があるため、PLC システムの出力モジュールにはオプトカプラが使用されます。ノイズに対して堅牢で、単純なアーキテクチャで、プログラミング言語が簡単で、産業用の認定や安全性機能があることから、PLC システムは産業用プロトコルとして最も広く使用されています。
PLC システムの入出力は、図 1-1 に示すように、デジタルまたはアナログに分類されます。デジタル入力は、制御回路に ON/OFF の状態を示します。デジタル入力デバイスの例には、制限スイッチ、光電センサ、近接および圧力センサなどが挙げられます。アナログ入力デバイスは熱電対、速度計、力センサなどで、可変の応答を出力します。
PLC のデジタル出力は、モータを起動するスターターの ON/OFF、フォルトを示すランプの点灯、リレーを起動するソレノイドの制御などに使用されます。アナログ出力には電流レベル出力と抵抗レベルが含まれており、ヒーターの制御と監視や、モータの速度の制御などに使用できます。
PLC のデジタル出力回路の概要を、図 1-2 に示します。PLC のデジタル出力は、1A にも達する高い駆動力を考慮して設計されています。このデジタル出力を接続してソレノイド・リレーを駆動することで、PLC コントローラが開始した動作を制御できます。図 1-2 に示すように、負荷と直列に接続されたディスクリート電流センサは、負荷に流れる電流を絶えず監視し、過剰な電流の存在をコントローラに報告することで何らかの行動を起します。PLC デジタル出力は –0.7V~24V までスイングできるため、オフセットとゲイン誤差の低いハイサイド電流検出アンプを使用して、高出力ドライブの安全性を確保できます。
PLC のデジタル出力ドライブは大電流になる可能性があるため、主要な安全性パラメータの 1 つはシンキング電流能力です。出力は NPN トランジスタ付きで設計され、過電圧保護のためダイオードが組み込まれています。システムは、PLC デジタル出力の動作時に、電源からのシンキング電流が動作温度範囲にわたって、常に PLC の規定内であることを保証します。ディスクリート電流検出アンプを使うと、過電流状態からデジタル出力を保護し、誤った負荷状態を診断し、システムの早期障害に対して予防措置を講じることができます。
PLC デジタル出力は、大電流のソレノイド・ドライバや大電流の LED ランプに直接接続して、リレーを閉じたり、ファクトリ・オートメーション・アプリケーションでフォルトを示したりできます。出力の駆動電流が PLC システムの定格値よりも大きい場合、ディスクリート FET を使用することで 24V 電源から負荷への電流を制御できます。図 1-3 に、PLC デジタル出力を低オン抵抗の外部 FET に接続して、出力の駆動力をさらに高める方法を示します。この手法には 1 つ欠点があり、外部 FET の信頼性が問題となります。電流検出アンプを使用して負荷電流を監視すると、PLC システムが安全に動作していることを確認できます。
INA240 は、ディスクリート PLC デジタル出力の電流を測定するために設計された、全温度範囲にわたって入力オフセットとゲイン・ドリフトが小さい高精度双方向電流検出アンプです。INA240 は、コモン・モード・トランジェントに dv/dt の大きな信号が含まれるスイッチング・ノード環境で動作するよう、特に設計されています。大きな dv/dt 信号を除去する能力により、正確な電流測定を行い、必要な保護を保証して、要求される安全性標準を満たすことができます。INA240 は最大入力オフセット電圧が 25µV、最大ゲイン誤差が 0.2% と低いため、測定精度を犠牲にすることなく、小さな値のシャント抵抗を使用できます。オフセット・ドリフト係数およびゲイン誤差ドリフト係数はそれぞれ約 0.25µV/℃と 2.5ppm/℃で、温度にかかわらず正確で安定した電流測定が可能です。
INA240 の信号スループット帯域幅は、ゲイン 20 において 400kHz です。高い帯域幅とスルーレート (2V/µs) から、PLC システム内のサンプリング ADC が十分に速く電流をサンプリングできれば、このアンプは過電流や負荷の短絡状況を迅速に検出できます。
このアプリケーションには、他のデバイスとして INA293 も推奨されます。INA293 は、–4V~110V のコモン・モード電圧をサポートし、–20V~116V の電圧に耐える単方向電流検出アンプです。ソレノイドの駆動またはモータの起動時に見られる誘導性キックバックに耐えるために、この大きな負のコモン・モード電圧に耐える能力は重要です。INA293 は、過電流状態が発生した際の高速応答を可能にする 1MHz の広い帯域幅も持っています。
INA290 も、PLC システムで使用可能なデバイスです。INA290 は、2.7V~110V のコモン・モード電圧範囲で動作するように設計されています。このデバイスはハイサイド検出デバイスですが、–20V~120V のコモン・モード過渡に耐えます。