入力 | ADC 入力 | デジタル出力 ADS8860 |
---|---|---|
-10 mV | Out = 0.2V | 0A3DH または 262110 |
5 mV | Out = 4.8V | F5C3H または 6291510 |
AVDD | DVDD | Vref_INA | Vref | Vcc | Vee |
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5.0 V | 3 V | 3.277 V | 5.0 V | 15 V | -15 V |
計装アンプは、低レベルのセンサ出力を高レベル信号に変換してADCを駆動する一般的な方法です。通常、計装アンプは低ノイズ、低オフセット、低ドリフトに最適化されています。しかし、多くの計装アンプの帯域幅は最高サンプリング レートでADCにおける電荷のキックバックを適切にセトリングするのに十分ではありません。本書には、計装アンプとともに広帯域バッファを使用して、高いサンプリング レートで適切なセトリングを実現する方法を示します。さらに、多くの計装アンプは高電圧電源用に最適化されており、高電圧出力 (すなわち ±15V) を低電圧アンプ (5V など) に接続する必要があります。この設計では、電流制限抵抗を使用して、計装アンプがオペアンプの入力電圧範囲を逸脱した場合にアンプを電気的オーバーストレスから保護する方法を示します。関連するクックブックには、広帯域バッファを使用しない簡易な手法を示しています (『計装アンプを使用したスイッチト キャパシタ SAR ADC 駆動回路』)。簡易な手法では、バッファ付きの設計に比べてサンプリング レートが制限されます。なお、以下の回路はブリッジ センサを示していますが、この方法は多種多様なセンサに利用できます。
この回路実装は、アナログ入力モジュール、心電計 (ECG)、パルス オキシメータ (血中酸素飽和度計)、ラボ計測機器、鉄道輸送用制御ユニットなどの用途に適しています。
仕様 | 計算結果 | シミュレーション結果 |
---|---|---|
サンプリング レート | 1Msps | 1Msps、–44µVにセトリング |
オフセット(ADC入力) | 40μV × 306.7 = 12.27mV | 16 mV |
オフセット ドリフト | (0.4μV/℃) × 306.7 = 123μV/℃°C | 該当なし |
ノイズ | 978μV | 586μVRMS |
以下のグラフは、-5mV~+15mVの入力に対する線形出力応答を示しています。この件の詳しい理論については、『計装アンプ使用時の SAR ADC の線形範囲の決定』を参照してください。INA826の出力がオペアンプの入力電圧範囲を超えた場合には、ESDダイオードがオンになり、入力を制限します。抵抗 R3 が入力電流を制限してアンプを損傷から守ります (「計装アンプ-オペアンプ間の過電圧保護フィルタ」を参照)。オペアンプの出力は ADS8860 の絶対最大定格の範囲内に収まっています (–0.3V < VIN < REF +0.3V)。
この構成での帯域幅のシミュレーション結果は11.45kHzです。この帯域幅では、SARコンバータを最高速度で駆動できません。この件の詳細については、TI プレシジョン ラボ ビデオ シリーズの『Op Amps: Bandwidth 1』(英語) を参照してください。
OPA320バッファ(20MHz)を使用する理由は、ADC8860における電荷のキックバックによる急激な過渡事象に応答する能力があるからです。このようなシミュレーションは、サンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。
簡易なノイズ計算を用いて概算します。計装アンプが高ゲインであることから、そのノイズが支配的になるため、OPA192のノイズは無視します。
計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。アンプ ノイズ計算の詳しい理論については、『TI Precision Labs - Op Amps:Noise 4』(英語) を、データ コンバータのノイズについては『Calculating the Total Noise for ADC Systems』(英語) を参照してください。
INA826とOPA320の間のフィルタは2つの目的を果たします。1つはOPA320を過電圧から保護すること、もう1つはノイズまたはアンチエイリアシング フィルタとして動作することです。通常状態で出力が OPA320 の範囲内 (すなわち 0V~5V) に収まるように INA826 のゲインを増減します。このため、通常、OPA320の入力に印加される過電圧信号は確認されません。ただし、電源投入時やセンサ切断時には、INA826 の出力がいずれかの電源レール (すなわち ±15V) に達することがあります。過電圧の場合には、抵抗 (R3) が OPA320 に流れ込む電流を制限して保護します。過電圧事象に際しては OPA320 に内蔵されている ESD ダイオードがオンになり、過電圧信号を正 / 負電源に送ります。以下の例では、過電圧信号が正電源に送られ、過渡電圧サプレッサ (D1、SMAJ5.0A) がオンになって電流をシンクしています。抵抗値を増やして、OPA320の絶対最大入力電流(10mA)まで電流を制限しています。この件の詳細については、『TI Precision Labs - Op Amps: Electrical Overstress (EOS)』を参照してください。
以下の図は、よく使用されている計装アンプの入力フィルタを示しています。差動ノイズは Cdif でフィルタ処理され、同相ノイズは Ccm1 および Ccm2 でフィルタ処理されます。なお、Cdif ≥ 10Ccm とすることを推奨します。これにより、部品の許容差が原因で同相ノイズが差動ノイズに変換されるのを防止できます。以下のフィルタは、15kHzの差動カットオフ周波数用に設計されています。
デバイス | 主な特長 | リンク | 類似デバイス |
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ADS8860 | 分解能: 16ビット、SPI、サンプル レート: 1Msps、シングルエンド入力、Vref入力電圧範囲: 2.5V~ 5.0V | シングルエンド入力、SPI 搭載、デイジー チェーン対応、16 ビット、1MSPS、1 チャネル SAR ADC | 高精度 ADC |
OPA192 | 帯域幅: 8kHz、レール ツー レール出力、消費電流: 450nA、ユニティ ゲイン安定 | 高電圧、レール ツー レール入出力、5μV、0.2μV/℃、高精度オペアンプ | 高精度オペアンプ (Vos が 1mV 未満) |
INA826 | 帯域幅 1MHz (G = 1)、低ノイズ 18nV/rtHz、低オフセット ±40µV、低オフセット ドリフト ±0.4µV/℃、低ゲイン ドリフト 0.1ppm/℃ (標準値) | 高精度、200μA 消費電流、36V 電源の計装アンプ | 計測アンプ |
主要なファイルへのリンク
テキサス・インスツルメンツ、SBAC184 用のソース ファイル、ソフトウェア サポート