入力 | ADC 差動入力 (Vdif) | ADC 同相入力 (Vcm) | デジタル出力 ADS9110 |
---|---|---|---|
0 V | -5 V | 2.5 V | 20000H |
5 V | +5 V | 2.5 V | 1FFFFH |
V+ (オペアンプ) | AVDD | DVDD | REFP |
---|---|---|---|
5 V | 5 V | 3 V | 5 V |
この回路では、ADS8912B 完全差動 ADC を駆動するために、2 つの OPA320 オペアンプを使用してシングルエンドから差動への変換を実行します。この問題を解決するもう 1 つの手法は、完全差動アンプ (FDA) を使用するものです。FDA の例については、『オペアンプと FDA を使用したユニポーラ信号用シングルエンド / 差動信号変換回路』を参照してください。何千種類ものオペアンプが入手できるため、完全差動アンプを探すより、個々の要件を満たすオペアンプを探すほうが容易なこともあります。例えば、ほとんどの FDA の対レール振幅、オフセット、バイアス電流、ドリフトは、多くの高精度オペアンプより劣っています。他方、オペアンプによる手法では反転および非反転経路に非対称な群遅延が生じます。さらに、FDA アンプは多くの場合、歪みや ADC 駆動特性において優れています。一般に、FDA による手法は最高水準の SNR と THD を実現し、オペアンプによる手法は最高水準の DC 特性を実現します。ただし、2 つの回路方式の比較は、個々のオペアンプや FDA によって影響を受けます。
仕様 | 目標 | 計算結果 | シミュレーション結果 |
---|---|---|---|
ADC 過渡入力電圧セトリング (1MSPS) | < 0.5LSB = 19.1µV | NA | 5µV |
入出力範囲 | NA | NA | 0.1 < VIN < 4.9V –4.8V < VOUT < 4.8V |
ノイズ | NA | 30.5µVRMS | 28.4µVRMS |
以下のグラフに、この回路 (0V~5V のシングルエンド入力、–5V~+5V の完全差動出力) の DC 伝達特性を示します。線形範囲は両電源レールから約 0.1V 内側に制限されている (Vin の線形範囲は約 0.1V~4.9V) ことに注意します。この制限はアンプの出力振幅の限界によるものです。線形振幅範囲を拡大するには、アンプの正負電源を調整する必要があります。その方法の例については、『低消費電力センサ測定:3.3V、1ksps、12 ビット、シングルエンド、デュアル電源回路』を参照してください。
この例では、主に Rfilt、Cfilt の値により帯域幅の限界が設定されます。また、アンプの閉ループ帯域幅も全体的な帯域幅に影響を与える場合があります。U2 のノイズ ゲインは 2 であるため、U2 の帯域幅は U1 の帯域幅の半分であることに注意します (BWU2 = GBW/Gn = 20MHz/2 = 10MHz)。
群遅延は、印加された入力信号と出力信号との間の時間遅延です。すべてのアンプおよびフィルタで群遅延が生じます。この回路では、反転経路と非反転経路の両方で異なる群遅延が生じるため、群遅延が重要となります。これにより、高い周波数の信号が歪む可能性があります。詳細については、時間ドメイン プロットの群遅延を参照してください。
以下のグラフに、群遅延が時間領域信号に与える影響を定性的に示します。群遅延の影響を強調するために、このプロットの誤差は誇張されています。緑色の信号は AIN_P の出力を表し、青色の信号は AIN_N の反転出力を表しています。2 つの信号は重なるのが理想ですが、群遅延により青色の信号が右にずれています。信号の動きが遅いと誤差は比較的小さく、速いと誤差は大きいことに注意します。したがって、低周波信号では歪みが小さくなり、高周波信号では歪みが悪化します。SPICE は THD をシミュレートしないため、定量値については測定が必要です。ただし、入力信号周期がチャネル間群遅延の 1,000 倍を超える場合には、この影響はおおむね無視できます。
以下のノイズ計算では、アンプと抵抗のノイズを考慮します。U1 のノイズは U2 によって反転され、差動出力で加算されることに注意します。このノイズは直接相関しているため、ノイズ源に通常用いられる二乗和平方根で加算するのではなく、直接加算します。また、出力フィルタは 1 次であるとして近似していますが、実際はより複雑なフィルタであることに注意します。ノイズの計算結果とシミュレーション結果はほぼ一致しています (計算結果 = 30.5µVRMS、シミュレーション結果 = 28.4µVRMS)。
ノイズの計算結果とシミュレーション結果はほぼ一致しています (計算結果 = 30.5µVRMS、シミュレーション結果 = 28.4µVRMS)。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。
以下のシミュレーションは、500kSPS 時のフルスケール DC 入力信号のセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、サンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。
デバイス | 主な特長 | リンク | 他の使用可能デバイス |
---|---|---|---|
ADS8912 | 分解能 18 ビット、サンプル レート 500ksps、リファレンス バッファ搭載、完全差動入力、Vref 入力電圧範囲 2.5V~5V | VREF バッファ、LDO、強化 SPI インターフェイス搭載、18 ビット、500kSPS、1 チャネル SAR ADC | 高精度 ADC |
OPA320 | 帯域幅 20MHz、レール ツー レール、ゼロ クロスオーバー歪み、VosMax = 150µV、VosDriftMax = 5uV/C、en = 7nV/√Hz | 高精度、ゼロ クロスオーバー、20MHz、Ib = 0.9pA、RRIO、CMOS オペアンプ | 高精度オペアンプ (Vos が 1mV 未満) |
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