半導体試験装置は、絶え間ない進化を続ける重要な製品分野です。半導体と IC がますます進化し、エレクトロニクスの限界を超えていくにつれて、試験装置も進化し続ける必要があります。テキサス・インスツルメンツは、IC のテストで最良の結果をもたらす幅広い高精度アンプを提供しています。
電圧印加 (被試験デバイス (DUT) または負荷励起とも呼ぶ) は重要なサブシステムです。半導体デバイスに特定の電圧条件を印加し、その半導体デバイスの応答の仕方を観察することは、そのデバイスが正しく応答することを確認するうえで重要です。最良の最終結果を得るには、電圧印加を正しく行う必要があります。正しい結果を得るため、DUT に印加されている電流と電圧をフィードバックとして測定します。
半導体デバイスのピンに電圧または信号を印加する際、FPGA (フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ) からのデジタル信号が D/A コンバータ (DAC) を制御します。その DAC 出力は、パワー・アンプ (ゲイン・アンプと電力アンプを組み合わせたデバイス) に供給され、増幅されます。そのパワー・アンプの出力が半導体デバイスのピンに印加されます。
半導体試験装置の用途によっては、ゲイン段が必要な場合があります。パワー・アンプを高ゲイン構成で使用すると帯域幅が制限されるため、ゲイン・アンプとパワー・アンプの間でゲインを分配する必要があります。この分配により、DAC 出力に高いゲインを適用しながら、帯域幅を広げることができます。ゲインを分配することは、必要な精度をいくらか緩和するのにも役立ちます。パワー・アンプのゲインを下げると、オフセット電圧とノイズが増幅されないため、精度を高めることができます。
パワー・アンプは、テスト電圧を駆動する回路の一部です。パワー・アンプの最も重要な仕様の 1 つは電源電圧範囲です。設計しようとしている試験装置のタイプによって、さまざまな電源電圧範囲が必要とされます。自動試験装置 (ATE) は、幅広いデバイスをテストするために広い電源電圧範囲を必要とします。たとえば、OPA462 は最大 180V の電源電圧で使えます。メモリ試験装置は –10V~+32V の仕様範囲を必要としますが、OPA454 オペアンプは ±50V の電源電圧範囲によってこれに対応できます。
プロセス技術に起因して、一部のアンプでは長い熱起因のリンギング (セトリングタイムが長くなる現象) を示す場合があります。この現象の原因は、アンプのオフセット電圧ドリフトです。オフセット・ドリフトが小さいアンプを選択すると、セトリングタイムを大幅に短縮できます。JFET の場合は特にそうです。
正しい結果を得るために、テスト信号は厳格に制御されます。そのため、許容誤差要件を満たすために低オフセット・ドリフトが必要とされます。また、テスト時間がデバイスのコストに大きな影響を及ぼすため、短時間で結果を得るための高速セトリングと高スルーレートが必要とされます。表 1 に、OPA454、OPA455、OPA462 の精度、セトリングタイム、スルーレートの仕様を示します。
製品名 | ドリフト (µV/℃、最大値) | セトリングタイム (μs) | スルーレート (V/µs) |
---|---|---|---|
OPA462 | 20 | 5 (120V ステップ) | 32 (80V ステップ) |
OPA454 | 10 | 10 (80V ステップ) | 13 (80V ステップ) |
OPA455 | 20 | 5.2 (120V ステップ) | 32 (80V ステップ) |
各種負荷を駆動できる堅牢な出力段を維持するには、広い電源電圧範囲、高い精度、高速なセトリングの他にも各種機能が必要です。高い出力負荷駆動能力、過熱保護、電流制限保護、独立した出力ディセーブルなどの機能は、回路を過負荷から保護するだけでなく、入力信号または電力バジェットを犠牲にすることなく低電圧回路へと信号を伝達することができます。
デバイスに対して正しい条件を確実に印加するには、電圧と電流のフィードバックを測定する必要があります。図 1-1 に、計測アンプ (IA) を使用して電流測定を実装し、分圧器を使用して電圧測定を実装し、両方の測定結果を別々の A/D コンバータ (ADC) にドライバで入力する様子を示します。
電流を測定するには、IA を実装する必要があります。ディスクリート・ソリューションを使って信号の帯域幅または電源電圧範囲を広げることもできます。これは、差動アンプ (INA149 など) に入力するためのバッファとしてパワー・アンプを使うことで行うことができます。ディスクリート・ソリューションの代わりに、120V 入力保護機能を備えた INA818 などのモノリシック IA を使うと、ボード・サイズを縮小し、設計の複雑さを減らすことができます。次に、テスト・インターフェイスでフィードバック・データを読み取ることができるように、その出力信号を ADC に入力できます。
しかし、差動信号を ADC に送る前に、ADC を高精度アンプで駆動し、満足できるシステム精度を確保する必要があります。この要件が必要とされる最大の理由は、ほとんどの差動アンプ (IA) が低ノイズ向けに最適化されておらず、ADC のアクイジションタイム中に信号を確定させることができないことです。例外の 1 つは INA849 です。このデバイスは超低ノイズ・フロアと高速セトリングタイムを両立させています。
正しい結果を得るには、超低ノイズ・アンプを使って ADC を駆動する必要があります。OPA2210 は、低ノイズ (1/f および広帯域) と十分に高い帯域幅を実現することで、信号処理能力の低下を防止しています。
業界初の 36V、高精度完全差動アンプ THP210 を使用すると、フィードバック用の差動アンプと ADC ドライバを統合できます。THP210 は電源電圧範囲が 3V~36V と広いため、ダイナミック・レンジを広げることができます。これらの機能はボード面積を節約するだけでなく、信号の品位を維持し、高い精度を得ることができます。
電圧測定の際、DUT の近くに分圧器を接続します。分圧器の出力は、ドライバ (この信号もバッファリングする必要があります) を使って ADC に送られます。OPA2182 は、TI のゼロドリフト・テクノロジーを採用することで優れたオフセット・ドリフトを実現しています。オフセット・ドリフトが小さいこのデバイスは温度較正が不要であり、バッファとドライバを組み合わせたデバイスとして使えるため、ボード・サイズと回路の複雑さを低減できます。
テキサス・インスツルメンツは、ATE とメモリ・テスターのための各種プラットフォームで使える幅広い高精度アンプを提供しています。DUT 励起では、正しい電圧を印加し、印加された電圧を測定してフィードバックするために高精度アンプを使います。
表 1-2 に、関連デバイスの概要を示します。
製品名 | 概要 |
---|---|
超低ノイズ (1nV/√Hz)、高速 (28MHz、35V/μs)、高精度 (35μV) の計測アンプ | |
550V、高同相電圧、差動アンプ | |
低消費電力 (350μA)、高精度 (35μV)、低ノイズの計測アンプ、過電圧保護付き | |
超低ノイズ (2.2nV/√Hz)、高精度 (35μV)、広帯域幅 (18MHz) のアンプ | |
業界初の高電圧、完全差動、低ノイズ (3.7nV/√Hz) のアンプおよび ADC ドライバ | |
業界最小のオフセット・ドリフト (0.012µV/℃、最大値) のチョッパー安定化オペアンプ |
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