JAJA707 October 2022 LDC3114-Q1 , TMAG5170-Q1 , TMAG5173-Q1
今日の車両には、センター・コンソールの音楽、エアコン、統合型 GPS などを制御するため、さまざまな設定があります。人間がこれらを制御するためのボタン、ダイヤル、その他の方法は、ヒューマン・マシン・インターフェイス (HMI) に分類されます。新しい自動車の HMI 分野には、センター・コンソール、ステアリング・ホイール、ウィンドウ制御などがあります。
車両の HMI のさまざまな必要に対応するため、様々なものが実装されています。ボタンやスイッチなら、機械式スイッチ、静電容量式タッチ・ボタン、誘導性タッチ・ボタン、磁気スイッチやラッチ、またはセンター・コンソールのディスプレイ画面上のボタンを使用して、実装されたものを活用できます。実装ごとに利点も異なるため、ボタンの使用事例と希望する操作感について考慮する必要があります。静電容量式や誘導性のタッチ・ボタンなどの実装では、目的のボタンの操作感を得るために、触覚式または機械式フィードバックを実装する必要があります。これらの要素を設計に追加するのは簡単ですが、ボタンの意図した操作感を事前に検討する必要があります。
車内のダイヤルやノブについて考えてみると、これらはポテンショメータ、ロータリー・エンコーダ、ホール効果センサを使用して実装できます。ロータリー・エンコーダ自体も、機械式接点から磁気式エンコーダや誘導式エンコーダまでの各種のテクノロジーで作成できます。
従来型の HMI アプリケーションでは、磨耗や破損が一般的な問題です。電気回路において、機械的接点を使用する実装には、磨耗や破損の可能性があります。車両には多種多様な HMI ポイントが存在するため、潜在的な故障箇所を減らせば、ユーザーエクスペリエンスが向上し、システムの寿命全体で必要な修理回数が減少します。この理由から、多くの設計者はより堅牢な代替テクノロジーを検討します。
タッチ・ボタンの実装に誘導性検出技術を使用すると、シームレスなタッチ表面を実現できます。これにより、ほこり、ごみ、損傷に対する堅牢性を維持しながら、ボタンを押す圧力を検出できます。誘導性タッチ・ボタンの圧力検出は、誘導性センサ・コイルと金属ターゲットとの間の結合を利用して行われます。金属ターゲットがセンサに向かって曲がったり動いたりすると、コイルのインダクタンスが変化し、ボタン押下イベントの判定に使用できます。
金属の動きによってインダクタンスが変化するため、ボタンの性能は手袋、ほこり、汚れなどの影響を受けません。一部の静電容量式ボタンの実装とは異なり、一貫した性能を実現するために、金属ターゲットを GND に接続する必要はありません。LDC3114-Q1 のようなデバイスにはボタンのアルゴリズムも含まれており、押下イベントが発生するとデジタル出力で信号を送信します。また、このアルゴリズムを使用すると、温度などの環境が変化したり、ボタン表面が損傷したりしても、ボタンは動作し続けられます。テキサス・インスツルメンツの LDC テクノロジーは、コンデンサと組み合わせたときのインダクタ・コイルの共振周波数を検出して動作します。このため、誘導性タッチ・ボタンは近くの DC 磁界の影響を受けません。誘導性タッチ・ボタンの詳細については、以下のテキサス・インスツルメンツの資料を参照してください。
ホール効果センサは、スイッチ、ラッチ、リニア・センサの 3 種類に分けることができます。スイッチとラッチは、検出された磁界に基づいてデジタル出力を行い、リニア・デバイスは磁界強度の情報をアナログ出力やデバイスのレジスタで出力します。リニア・センサには、磁界の 1 軸、2 軸、または 3 軸を検出するデバイスがあります。タイプごとに異なる利点があり、目的の使用事例に応じて活用できますが、共通の利点がいくつかあります。ホール効果センサを使用すると、アプリケーションで高い精度と正確性が得られるほか、感度を高くできるので、小さな磁石で動作します。HMI など、高速なサンプル・レートが必要ないアプリケーションでは、低消費電力のホール効果センサを活用してシステムの消費電流を削減できます。ホール効果センサの基礎と一般的なアプリケーションの詳細については、『ホール効果センサの概要』の製品概要を参照してください。
車内のダイヤルは、さまざまな機能を制御し、単純な状態セレクタからボリューム・ホイールまで様々のものがあります。ダイヤルの機能によって、ダイヤルの位置、回転の変化、または両方が必要になることがあります。ダイヤルの位置のみが必要な場合は、スイッチを使用して離散的なステップで位置を把握し、状態セレクタで使用できます。回転の変化が必要な場合は、ラッチを使用できます。ラッチを使用すると、磁界が N から S に変化するときに出力が変化します。リング型磁石とラッチを使用して、回転の変化を簡単に追跡できます。また、ホール・センサを使用するロータリー・エンコーディング・アプリケーションでは、2 番目のラッチを追加して直交出力を生成するのも一般的です。
回転の角度は、ラッチ実装により MCU で追跡できますが、電源サイクルの間で角度を保存する必要があります。ホール効果ラッチ・センサによる回転エンコーディングの詳細については、『2D ホール効果を使用する増分ロータリー・エンコーディングの直交誤差の低減』アプリケーション・ノートを参照してください。または、リニア・センサを使用して、磁石の回転角度を追跡し、変更することもできます。これは、磁界の 2 軸に加えて、2 つの 1D リニア・ホール・センサまたは単一の 2D や 3D のリニア・ホール・センサを使用して実行できます。
HMI のダイヤルに 3D リニア・センサを使用する例を、『誘導性タッチおよび磁気ダイヤルの非接触ユーザー・インターフェイスのリファレンス・デザイン』に示します。ホール・センサによる角度検出の詳細については、『多軸リニア・ホール効果センサによる角度の測定』アプリケーション・レポートを参照してください。
ロッカー・スイッチは、上、下、中間など 3 つの状態を持つものと定義されます。これらのスイッチは、押されていないときは中間位置に戻ります。ウィンドウ制御、クルーズ制御、無線のボリュームなど、さまざまな車載アプリケーションで使用されます。このようなアプリケーションにホール効果センサを使用すると、システムの機械的接点の数が減少し、摩耗や破損の可能性が減るため、耐久性が向上します。このようなアプリケーションでは、低消費電力のホール・センサを活用して、消費電流を減らすこともできます。この方式を実装する手段の 1 つは、ロッカー・スイッチに磁石を取り付け、ホール・センサを使用して、スイッチがアクティブ状態で位置 1 または 2 にあるか、中間位置にあるかを判定することです。アクティブ位置に 2 つのセンサを使用すると、どちらのアクティブ位置にも出力がないことから、中間位置であることを判定できます。ホール・センサによるロッカー・スイッチの実装方法の詳細については、『ホール効果スイッチを使用する HMI ロッカー・スイッチ』アプリケーション・ノートを参照してください。