設計目標
AC ゲイン |
フィルタのカットオフ周波数 |
電源 |
90 dB |
fL |
fH |
Vcc |
Vee |
0.7 Hz |
10 Hz |
3.3 V |
0 V |
設計の説明
一部の MSP430™ マイコン (MCU) は、オペアンプ、DAC、プログラマブル ゲイン段など、構成可能な統合型信号チェーン要素を内蔵しています。これらの要素は、スマート アナログ コンボ (SAC) というペリフェラルを形成しています。さまざまな種類の SAC の詳細や、構成可能アナログ シグナル チェーン機能を活用する方法については、「MSP430 マイコンのスマート アナログ コンボ トレーニング」をご覧ください。設計を開始するには、低ノイズの長距離 PIR (パッシブ赤外線) センサ コンディショナ回路の設計ファイルをダウンロードしてください。
このデザインは、MSP430FR2355 マイコン内にある 4 個の統合型オペアンプ ブロック (SAC) のうち 2 個を活用します。2 個の SAC_L3 ペリフェラルは、汎用モードのカスケード接続オペアンプとして構成済みであり、パッシブ赤外線 (PIR) センサからの信号を増幅およびフィルタ処理します。この回路は、回路の出力でノイズを低減することを目的とする複数のローパス フィルタとハイパス フィルタを搭載しており、離れた距離で動作を検出し、誤トリガ (人などが接近したときに装置が動作するはずが、誰もいないときに動作する) を減らすことができます。この回路内の 2 段目にあるオペアンプの出力を、MSP430FR2355 マイコン内の他の内蔵ペリフェラルに内部または外部から接続することができます。たとえば、A/D コンバータ (ADC) ウィンドウ コンパレータは (CPU を経由せずに) この出力を定期的にサンプリングし、信号がスレッショルドをまたいで範囲外になったときに割り込みをトリガし、動作が発生したと通知すること、またはアラートを生成することができます。
デザイン ノート
- 同相電圧と出力バイアス電圧は、R2 と R3 (および R7 と R8) の間の抵抗分圧器を使用して設定します。
- 十分なループ ゲインを確保するには、2 つ以上のアンプ段を使用する必要があります。
- ノイズをさらに減らすため、ローパスおよびハイパス フィルタを追加することもできます。
- コンデンサ C4 および C8 は、回路の帯域幅を狭くすることでノイズをフィルタ処理し、アンプの安定に役立ちます。
- アンプの総合積分ノイズを減らすには、アンプの出力に RC フィルタ (例:R6 と C5) が必要です。
- 回路の最大ゲインは、フィルタのカットオフ周波数の影響を受けることがあります。目的のゲインが得られるように、カットオフ周波数を調整します。
- この設計では、MSP430FR2355 MCU 内の 2 つの SAC_L3 ペリフェラルを汎用モードのカスケード接続オペアンプとして構成しています。
- この設計は、MSP430FR2311 MCU 内のトランスインピーダンス アンプ (TIA) と SAC_L1 ペリフェラルをカスケード接続オペアンプとして使うことで、実装することもできます。しかし、TIA の最大入力電圧が VCC/2 に制限されているため、それに応じて同相電圧とゲインが制限されます。
- 低ノイズの長距離 PIR (パッシブ赤外線) センサ コンディショナ回路の設計ファイルには、MSP430FR2355 MCU 内の SAC_L3 および ADC ウィンドウ コンパレータ ペリフェラルを適切に構成する方法を示したサンプル コードが含まれています。
設計手順
- ローパス フィルタ用に大きな値のコンデンサ C1、C5、C9 を選択します。値の大きなコンデンサは、標準抵抗値と比べて限られた標準値しか選択できないため、これらのコンデンサを最初に選択します。
- ローパス フィルタを構成する R1、R6、R11 の抵抗値を計算します。
- ハイパス フィルタのコンデンサ C2、C3、C6、C7 の値を選択します。
- ハイパス フィルタを構成する R4 および R9 の抵抗値を計算します。
- 分圧器を使用して、アンプの同相電圧を電源電圧の 1/2 に設定します。ハイパス フィルタのコーナー周波数を正しく設定するため、分圧器の等価抵抗は R4 と等しくします。
- 必要な総合ゲインを得るため、各ゲイン段で必要なゲインを計算します。回路の総合ゲインの目標値を、両方のゲイン段に均等に割り当てます。
- 最初の段のゲインを設定するため、R5 の値を計算します。
- ローパス フィルタのカットオフ周波数を設定するため、C4 を計算します。
- 最初のゲイン段のゲインおよびカットオフ周波数は 2 番目のゲイン段と等しいため、両方の段ですべての部品値を等しくします。
- 回路の出力に置くローパス フィルタのカットオフ周波数を設定するため、R11 を計算します。
設計に使用されているオペアンプ
MSP430FRxx スマート アナログ コンボ |
|
MSP430FR2311 SAC_L1 |
MSP430FR2355 SAC_L3 |
Vcc |
2.0V~3.6V |
VCM |
-0.1V~VCC + 0.1V |
Vout |
レール ツー レール |
Vos |
±5mV |
AOL |
100 dB |
Iq |
350µA (高速モード) |
120µA (低消費電力モード) |
Ib |
50pA |
UGBW |
4MHz (高速モード) |
2.8MHz (高速モード) |
1.4MHz (低消費電力モード) |
1MHz (低消費電力モード) |
SR |
3V/μs (高速モード) |
1V/μs (低消費電力モード) |
チャネル数 |
1 |
4 |
|
MSP430FR2311 |
MSP430FR2355 |
設計の代替オペアンプ
MSP430FR2311 トランスインピーダンス アンプ |
Vcc |
2.0V~3.6V |
VCM |
-0.1V~VCC/2V |
Vout |
レール ツー レール |
Vos |
±5mV |
AOL |
100 dB |
Iq |
350µA (高速モード) |
120µA (低消費電力モード) |
Ib |
5pA (TSSOP-16、OA 専用ピン入力付き) |
50pA (TSSOP-20 および VQFN-16) |
UGBW |
5MHz (高速モード) |
1.8MHz (低消費電力モード) |
SR |
4V/μs (高速モード) |
1V/μs (低消費電力モード) |
チャネル数 |
1 |
MSP430FR2311 |