Michael Wang、 Zhen Yu
現在行われている人工知能 (AI) とニューラル ネットワークに関する議論は、主に生成用途 (画像、テキスト、ビデオの生成) を対象にしているため、AI が産業やインフラストラクチャ分野のエレクトロニクスに革命をもたらす実践的な例は見逃されがちです。
モーター ドライブ、ソーラー エネルギー (図 1 を参照)、バッテリ管理などの用途に使用されるリアルタイム制御システムでの AI の使用は、新しい大規模言語モデルほど注目されていないものの、障害検出にエッジ AI を使用すると、システムの効率、安全性、生産性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
この記事では、統合型マイコン (MCU) を活用すると、高電圧のリアルタイム制御システムで故障検出機能がどのように強化されるのかについて解説します。これらの MCU は、統合型のニューラル ネットワーク処理ユニット (NPU) を使用して CNN (convolutional neural network:畳み込みニューラル ネットワーク) モデルを実行し、システムの障害を監視するときにレイテンシと電力使用量を低減するのに役立ちます。リアルタイム制御を管理する MCU にエッジ AI 機能を統合することで、システム設計を最適化すると同時に、全体的な性能を強化ができます。
モーター ドライブやソーラー システムの信頼性の高い動作を実現するには、誤アラートを低減すると同時に、モーター ベアリングの異常や実際の障害を監視できるよう、高速で予測可能なシステム障害検出機能が必要です。エッジ AI 対応 MCU が監視できる障害は 2 種類あります。
応答性の高い監視がないと、システムで実際の故障や誤警報に起因する予期しないダウンタイムやシステム障害が発生し、運用効率とオペレータの安全性に影響を及ぼす可能性があります。たとえば、ソーラー インバータで誤警報が発生すると、システムのダウンタイムが発生し、検査が必要になるためとし、生産性に影響を及ぼす可能性があります。動作中のアークを検出できなかった場合、火災やシステムの損傷のリスクが上昇する可能性もあります。
モーター ベアリングの障害監視方法の中には、リアルタイム制御、振動分析による監視、温度監視、音響測定を行うため、MCU に加えて複数のデバイスを使用するものがあります。このディスクリート ベースの手法では、その後でデータに基づくルールベースの検出を使用して潜在的な障害を監視します。これには人手での解釈が必要で、初期段階の障害を見逃したり、障害の種類を正確に検出できなかったりする可能性があります。
同様に、アーク障害を検出する従来の方法は、周波数ドメインで電流信号を分析し、スレッショルド ベースのルールを適用してアーク障害の信号を検出することです。しかし、どちらの方式もシステムに関する豊富な専門知識を必要とし、適応性と感度に限界があるため、検出精度が制限されます。また、障害監視用システムに、モーター制御用の専用リアルタイム制御 MCU 以外のデバイスを追加すると、システムが複雑になる可能性があります。
エッジ AI ベースの障害検出機能が内蔵され、TMS320F28P550SJ などのリアルタイム MCU 内で CNN モデルをローカル実行できれば、故障検出率の向上と誤警報の防止に役立つと同時に、より的確な予防保守を行えます。エッジ AI を採用すると、これらのシステムは周囲の環境を学習して適応することで、リアルタイム制御を最適化し、システム全体の信頼性、安全性、効率を向上させると同時に、ダウンタイムを短縮できます。図 2 をご覧ください。
モーター ベアリングとアーク障害検出用の CNN モデルは、振動信号などの未加工センサ データから複雑なパターンを学習し、ベアリングの障害を示す微妙な変動を検出できます。
CNN モデルは、モーターの振動信号、ソーラー DC 電流、バッテリの電圧と電流などの未加工または事前処理されたセンサ データから自律的に学習できるため、故障検出と予防保守のためのセンサ データ分析に優れています。人間の介入なしで、有意義な特徴を直接抽出することにより、堅牢で正確な検出が可能でます。一方で、さまざまな作業条件や各種ハードウェアのバリエーションを表すセンサ データや、高速フーリエ変換 (FFT) などのさまざまな前処理アルゴリズムを活用することで、検出や推論の総レイテンシを短縮しながら、モデルの適応性、ノイズ耐性、信頼性を向上できます。
CNN は大量のデータを効率的に処理し、さまざまな動作条件にわたって適切に動作するため、産業用の環境でのリアルタイム監視と予防保守に有用です。これらの環境で CNN モデルを活用することで、モーター ベアリングの障害をより早期に、かつ効果的に検出し、機器の信頼性と運用効率を向上できます。
モーター ドライブの場合、CNN はベアリングの磨耗や回転子の不均衡などの障害パターンを、振動や電流信号から識別できます。ソーラー エネルギー システムでは、CNN が DC 電流波形の異常を発見し、アーク障害を検出できます。バッテリ管理アプリケーションでは、CNN モデルによってバッテリの充電プロファイルの寿命を分析し、バッテリを状態を監視して、バッテリの充電状態を推定できます。これらの適応性により、動的な条件で正確な障害検出が保証され、リアルタイム処理により効率が最適化されます。
モーター ドライブやソーラー システムのような用途では、リアルタイムの障害検出により、動作の安全性と長期的な信頼性を確実に実現できます。障害を正確に識別したり、障害を事前に予測したりする能力は、システムの信頼性を大幅に向上させ、コストのかかるダウンタイムを防止し、全体的な性能を向上させます。エッジ AI は革新的なアプローチを提供し、ローカルかつリアルタイムにでデータを処理することで障害検出精度を大幅に向上させ、レイテンシを短縮して応答性を向上させます。
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