JAJT381 November 2024 LM5137F-Q1 , TPS62883-Q1
Dihia Bitam
先進運転支援システム (ADAS) の急速な進化に伴い、リアルタイム データ処理の複雑さが増すとともにリアルタイム データ処理に対する需要が高まっています。リアルタイム データ処理には、物体認識、センサ フュージョン、意思決定などのタスクを処理するための高性能プロセッサが必要になります。このような複雑さの増大により、パワー マネージメントに関する新しい課題が生じています。まずは自動車のバッテリ (12V、24V、または 48V) です。プリレギュレータがバッテリ電圧を降圧してポイント オブ ロード (POL) 降圧コンバータに電力を供給し、最適な動作に必要な正確な電圧をプロセッサに供給します。さらに、システム全体の機能安全要件を満たすことに重点が置かれており、このような要件を満たすうえで電力段が重要な役割を果たします。
80V LM5137F-Q1デュアル チャネル降圧コントローラや 6V、30A TPS62883-Q1 2 相降圧コンバータなどのソリューションは、大電流車載プロセッサに電力を供給すると同時に、システムが最高で車載用安全性要求レベル (ASIL) D の機能安全準拠を達成できるように支援します。
TPS62883-Q1 は、テキサス・インスツルメンツが国際標準化機構 (ISO) 26262 に従って開発した機能安全準拠 30A 降圧コンバータです。このデバイスは、電流定格が 12A~30A のピン互換オプションを提供するスケーラブルな製品ファミリの一部です。100A を超える負荷を供給できるスタック可能アーキテクチャをサポートしており、より大きな電流に対する需要が高まり続けている最新の ADAS システム オン チップ (SoC) の電力要件を満たすことができます。図 1 に、2 個の TPS62883-Q1 コンバータをスタックした構成を示します。
TPS62833-Q1 は、安全準拠の内部監視を使用することで、外部出力電圧監視を不要にします。また、I2C による出力電圧の変化は、出力電圧制御ループと内部出力電圧監視の両方に対して同時に効果を発揮します。この機能により、ダイナミックまたはアダプティブ電圧スケーリング時に出力電圧監視の盲点がなくなります。I2C 互換インターフェイスを介した通信は、MCU がバス通信のビット エラーを検出してフラグを立てられるように、巡回冗長検査 (CRC) で保護できます。
また、TPS62883-Q1 は熱警告スレッショルドに基づいて警告を出し、低電圧ロックアウトや過電圧ロックアウトなどの重大なフォルト状態がシステムで発生した場合は、安全状態に移行します。このデバイスには、nINT フォルト ピンも搭載されています。このピンは、フォルト状態が発生したときにマイコン (MCU) に通知します。これにより、MCU はアプリケーションの要件に応じて必要な措置を講じることができます。
電源の課題は、大電流要件を満たすことだけではありません。実際、高性能プロセッサの信頼性の高い動作を維持するには、負荷過渡応答が不可欠です。処理需要が急激に変化すると、消費電力が突然変化して電圧のアンダーシュートやオーバーシュートが発生し、誤動作が引き起こされる可能性があります。これらの SoC の信頼性の高い動作を確保するには、高速負荷過渡応答が不可欠です。
SoC は、各電源電圧の定義済み許容誤差を規定します。コア電圧レールは最も重要なものです。電源電流の動的特性は高く、電圧は低く、許容誤差はミリボルト程度であるためです。
負荷過渡の合計バジェットは、図 2 に示すように、複数の要因に基づいて決まります。一般に、負荷過渡電圧の偏差に対して大きな残りウィンドウが必要になります。これを確保することで、出力キャパシタンスを小さくすることができるからです。TPS62883-Q1 は、±0.5% の DC 出力電圧精度と内部電圧監視を提供します。これにより、外部電圧監視によって生じる追加の許容誤差が排除されます。
TPS62883-Q1 は、柔軟なドループ補償機能も搭載しています。このため、設計の要件に合わせてドループ動作を微調整できます。この機能は、出力電圧がゼロから最大出力電流までの間で直線的にスケーリングするように、出力電流に基づいて公称出力電圧をスケーリングします。
図 3 に示すように、出力電圧は無負荷の状況では公称値よりもやや高く設定され、最大負荷の状況では公称値よりもやや低く設定されます。したがって、ドループ補償は、重負荷ステップが発生したときや負荷が解放された場合に、出力電圧を一定の許容範囲内に維持するのに役立ちます。
さらに、TPS62883-Q1 の 2 相設計は、単相設計に比べてループ帯域幅が広く、出力電圧リップルが大幅に小さいため、負荷過渡に対して余裕があります。これらの機能の組み合わせにより、出力キャパシタンスの量を減らして厳格な負荷過渡要件を満たすとともに、コストとシステム全体の複雑さを低減させることが可能になります。
テキサス・インスツルメンツでは、お客様がシステム レベルの機能安全認証を効率化できるように、業界標準のレポートと追加リソースを提供しています。これには、機能安全 FIT 率や故障モード効果、診断分析 (FMEDA) などの IC レベルの資料が含まれます。
自動車が自動運転へと進む中、ADAS の複雑さは大幅に増大し続けており、その結果、アプリケーション プロセッサの電力需要が増加しています。同時に、機能安全は非常に重要です。これらのシステムが信頼できるものでなければ、ユーザーは安心して使用できないからです。TPS62883-Q1 をスタッカブル構成で使用すると、100A を上回るコア電力を達成できるとともに、最高で ASIL D の機能安全準拠を実現するシステム設計が可能になります。
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