組込みプロセッシング技術の未来を左右する 3 つのトレンド
組込みの未来を担う技術は、スマート ホーム、都市、工場、自動車を変革し、日常的に使用する電子機器を最適化し、より良い世界を創造するための新しい方法を提供します
組込みプロセッシングの未来はどのようなものになるでしょうか?
技術的な観点から言えば、組込みシステムはエネルギー効率をいっそう向上させるでしょう。その流れは、エネルギーの節減や、より環境持続性の高いエレクトロニクスを実現します。
また、より高度な自律型ロボットがタスクを実行し、利便性を向上することにより、将来には、いっそう没入性の高い方法で人間が対話型操作を実行できるようになり、周囲との一体化が可能になります。データ量の拡大が続く中、これらのシステムはデータの取得、分析、対応を実行できるようになります。さらに重要なことは、進化した技術がより身近になり、より多くの人がその恩恵を受けられるようになることです。
このような未来の実現には、組込みプロセッサの進化が必要です。組込みプロセッサはより少ない消費電力で、より多くのインテリジェンスを提供する必要があります。また、手頃な価格で、より多くのコンポーネントを統合し、直観的な組込みソフトウェアとツールによるサポートも必要です。
TI が業界で目にすることや、お客様との会話に基づき、包括的な組込みプロセッシング製品ラインアップが提供すべき重要な機能として、以下の 3 つのトレンドを挙げることができます。
1. より統合されたセンシング機能
私たちの身の回りのあらゆるものから、より多くのデータを収集し、それらを活用する革新的な方法を見つけるというニーズは、絶えず高まっています。
たとえば、スマート・シティでは、エネルギー管理システムはデータを使用してビル内のエネルギー使用状況の管理と制御を行い、無駄を省き、使用コストを削減することができます。また、公共の安全システムにインテリジェンスを追加すると、緊急事態を検知して対応することで、私たちの住む街の安全性とセキュリティを維持することができます。スマート・ホームでは、コネクテッド・デバイスで構成されたエコシステムにより、居住者のエネルギー消費量、快適性、安全性を向上させることができます。より持続可能で再生可能なエネルギー源で電力網のインフラをアップグレードする必要性とともに、リアルタイム データを取り扱える組込みインテリジェンスの価値は、ようやく理解と実現化が進み始めたところです。
エネルギー管理とその関連インフラは、急速に増加している多くの使用事例と可能性の一つに過ぎません。私たちが日常的に使用しているエレクトロニクスに、より多くのセンシング機能と処理機能を搭載することで、私たちの生活にさらなる品質と利便性をもたらしています。
TI がマイコンの新しい製品ラインアップを開発する際、これらのシステムでセンシングと組込みインテリジェンスを統合できることが、優先事項の 1 つでした。私たちの目標は、設計者がシステムのセンシング機能を強化し、より多くのアナログ機能を統合して、追加のコンポーネントを必要とせずに、システム内でセンシング回路の開発を効率化できるようにすることでした。このレベルの統合を達成した 1 つの事例は、MSPM0 マイコンを使用して小型フォーム・ファクタを実現しながら、煙をより迅速に検出できる、チャンバーレスの煙探知器です。
2. あらゆる組込みシステムに人工知能 (AI) を搭載
家庭やオフィス ビルをリアルタイムで監視するスマート セキュリティ カメラや、工場の組み立てラインの変革を進める自律型ロボットなど、あらゆるシステムにインテリジェンスを付加することが標準的になりつつあります。あらゆる場所で自動化、特にスマート オートメーションの需要が高まる中、継続的に増加するデータを処理し、インテリジェントな意思決定を行い、迅速に対応する必要があるシステムに対し、設計エンジニアはより多くの機能と性能を実装しています。
エッジ インテリジェンスは、スマートな自動化システムの中核にあります。つまり、データを収集したセンサに近い場所で計算や処理が行われ、セキュリティ、迅速性、信頼性をいっそう高めた処理につながります。
たとえば、工場全体に多くのカメラを設置し、機械の故障を検出・予測するために、継続的に機器を検査している様子を想像してみてください。仮にそのデータをローカル・ネットワークから外部のクラウドへ送信し、処理と分析が実施されるのを待った上で組み立てラインの停止を決定すると、組み立てラインの品質とスループットが低下することに加え、全体のコストも増加する恐れがあります。一方、エッジにインテリジェンスを搭載することで、必要に応じて一瞬で組み立て工程を停止させることができます。
コストと消費電力の制約により、従来は設計者がエッジに実装できるインテリジェンスの量には限りがありました。TIの AM6xA ビジョン プロセッサは、共通の開発環境に支えられ、電力効率に優れた低コストのプロセッシング オプションを提供し、この課題の解決に貢献することを目的に開発されました。
これらのプロセッサは、組込みビジョン アプリケーションに適しており、たとえば、自動化された店舗にスマート カメラを設置することで、消費者がどの商品をかごに入れたのかを識別し、そのままチェックアウトができる「grab-and-go shopping」レジなし店舗も実現します。
3. 使いやすさにより設計者の開発期間を短縮
TI のお客様である機器メーカー各社は、新製品やイノベーションの市場投入期間の短縮という課題に直面しており、これにより組込みシステムの増加に対応しようとするニーズが加速してきました。TI のお客様は、市場環境や嗜好の変化に柔軟に対応しながら、差別化された機能を迅速かつ確実に作り出す必要があります。
組込みプロセッシングの製品ラインアップとそれを支えるエコシステムは、設計が容易でなければなりません。また、お客様のあらゆる組込みニーズをサポートするのに十分な堅牢性を備えたサポートを提供することにより、製品開発期間を短縮し、設計者がイノベーションにもっと時間を割けるようにしなければなりません。そのためTIでは、業界標準ソフトウェアとオープン ソース ソフトウェア、コミュニティ ベースの開発プラットフォーム、統合型ソフトウェア開発環境の採用の強化に取り組んでいます。TI がこれらのリソースを採用することで、お客様はそれらの分野のエキスパートが積み上げてきた知識と経験を活用し、より効率的に開発を進め、非常に迅速に製品を市場に投入することができます。エンジニアがあらゆるシステムにインテリジェンスを容易に追加できるように TI が革新を進めることで、インテリジェンスの採用率が向上し、お客様にとっての価値も大幅に向上します。
組込みプロセッシング技術の未来と、これらの技術が具現化される TI の新しい製品ラインアップ、そしてより良い世界を創造するための新しい方法をお客様がどのように解き放つのか、とても楽しみにしています。