ソフトウェア デファインド ビークルが自動車業界を変革する 3 つの理由

ソフトウェアによって制御される車両が、メーカー、ドライバー、同乗者に及ぼす影響とは

3 12 月 2024 | テクノロジーと革新

車を修理するためにカー ディーラーに行く必要がない世界があるとしましょう。ボタンを押したり電話をかけたりすると、リアルタイムで更新が実行されるのです。そのような世界では、自動車を数年間保有した後で、それが時代遅れに感じられたり新しい機能が必要になったりしても、新しい自動車に買い換える必要がないかもしれません。現時点では思いもよらない機能、たとえば、後席が Wi-Fi® と Web カメラを使用できるセカンド オフィスになるなどの機能が現実になる可能性があります。

私にとって、その世界は既に現実のものになっています。私はソフトウェア デファインド ビークル (SDV) を所有しています。これはソフトウェアによって、ハードウェアだけでなく、操作、設計、ユーザー体験も制御される自動車です。メーカーはソフトウェア優先のアプローチで設計を行うことで、長期にわたって車両に改善を加え、ドライバーと乗員の双方に新しい体験とカスタマイズ性を提供できます。

SDV の導入は始まったばかりですが、急速に普及しつつあります。メーカーは SDV アーキテクチャの採用を進めています。間もなく SDV アーキテクチャが消費者のドライビング体験を変え、自動車業界を一変させることになるでしょう。

なぜ SDV が自動車業界の未来に影響を与えるのか、私の考える 3 つの理由をご紹介します。

テクノロジー企業と自動車メーカー間のコラボレーションの増加

電気エンジニアリングでは、電子部品をゾーンと呼ばれる区分に分けて構造化します。ステアリング操作からラジオの再生まで、各ゾーンで自動車の複数の機能を実行できます。ゾーン化によって、このような機能すべてを 3 枚または 4 枚のボードに集中化し、複雑な配線を減らして設計効率を高められることから、メーカーにとって有益です。たとえば、フロント ゾーンではワイパー制御、シート制御、ステアリング制御、ヘッドライト制御などの機能を実行できるでしょう。

ゾーン アーキテクチャによって、ソフトウェア システムの管理が容易になり、全体的なレイテンシが短縮され、更新や変更の柔軟性が高まるため、このアーキテクチャは SDV 設計の基本となっています。複数のボードを 3 つまたは 4 つ程度のゾーンまで減らすことで、ソフトウェア更新が可能になり、簡易化されます。

各ゾーンの中心を担うのは半導体部品です。このため、TI などの企業が自動車メーカーに緊密に協力して、このような自動車でソフトウェア システムを運用するためのテクノロジーを提供しています。たとえば、温度変化に応じたインテリジェントな電力分配、スケーラブルなコンピューティング ソリューション、センサを監視するシグナル コンディショニングのほか、コントローラ エリア ネットワーク、ローカル相互接続ネットワーク、イーサネットなどの車内ネットワーク用の通信インターフェイスも提供しています。高集積レーダー チップセットは、先進運転支援システム (ADAS) による事故防止に役立ちます。バッテリ管理システムのリアルタイム監視機能は、電圧、電流、温度を監視して、バッテリの保守が必要な時期を判定します。

SDV によってソフトウェアを一元化し、ハードウェアとソフトウェアを分離することで、迅速な技術革新が可能になります。ソフトウェアはプロセッサ、マイコン (MCU)、センサから取得したデータを利用して車両全体のパフォーマンスを最適化し、ADAS 機能やバッテリ監視機能、カスタマイズ機能などによって、安全性の向上にも貢献します。業界で設計されるチップのスマート化が進み、プログラムや修正によって新機能を追加できるようになると、設計エンジニアはそのためのソフトウェアを作成する必要があります。

ソフトウェア優先のアプローチ

さまざまな機能をボタン 1 つで実行できる世界を実現するためには、設計エンジニアがソフトウェアを最優先事項に据えて、柔軟性とカスタマイズ性の高い車両を設計する必要があります。SDV の最大の特徴は、消費者が車を購入して運転を始めた後でも、継続的に改善を加え、車両に機能を追加できる点です。ハードウェアとソフトウェアを分離することで、早期の製品化を実現できます。ハードウェア チームが先にリリースできますが、ソフトウェア チームも並行して段階的な導入を実施し、製品に継続的に機能を追加することができます。

スマートフォンの更新と同様に、メーカーはソフトウェアの更新と改善を継続的に実施展開できます。SDV は安定的に更新が行われるため、ドライバーは現在よりも長期にわたって車両を利用できるようになります。自動車の電子機器は高度に進化しているため、ドライバーはメーカーの提供する新しいソフトウェア アップグレードを検討して、好みのものを適用することができます。

SDV を所有するユーザーは車を本当に楽しむために必要なインテリジェンスを得られ、自動車メーカーはバグ修正のためのプッシュ機能や (車両を整備する必要性が減ります)、車両に関する高度診断を実施する機能を利用することができます。ハードウェアをゾーン アーキテクチャに実装することで、全体的なボードの数と必要なアクションが減り、メーカーのコストが削減されます。一方で、顧客はディーラーのサービス工場に出向く必要がなくなり、リモートで問題を解決できるようになります。

新しいビジネス モデルの可能性

SDV は、さまざまな種類の運転アルゴリズムや利用者の好みに対応できる能力を備えています。SDV を自律運転させる場合には、毎朝出勤途中にお気に入りのコーヒー ショップに立ち寄る機能を実装できます。家族で同じ車を共有している場合には、運転席にいるドライバーの好みに応じて、音楽やエアコンの設定を変えることができます。

このような例は、いずれもメーカーに収益源の可能性をもたらします。ドライバーがこのような拡張機能を選択すると、メーカーはそれをシームレスに車両に組み込み、サブスクリプション モデルと同様の方法で料金を徴収できます。

身の回りを見渡せば、あらゆるものがスマート化しつつあります。SDV の場合、AI を自動車に搭載して、他のデバイスや産業インフラとの高度な連携を確立することができます。たとえば、電気自動車であれば自動車と電力網間の通信、自動車と住宅間の通信を通じて、電力を住宅に供給することができます。

ユーザーとメーカーの両方の立場から見て、SDV が自動車業界を変革しつつあるのは明らかであり、自動車業界で重点的に取り組み続ければ、さらなる可能性が広がります。

TI の車載システム担当ディレクターであるMark Ng がこのブログを執筆しました。

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