宇宙空間からの環境研究を支える半導体テクノロジー

画像処理テクノロジー、デバイス分類、パッケージングが地球を理解するのに役立つ理由

3 10 月 2024 | テクノロジーと革新

人類の歴史の中では、環境事象がもたらす波及効果を理解することが常に課題となってきました。どのようにして針葉樹林の霜から、暴風雨前線が生じ、激しい雨が降り、何百キロも離れた港でのシルト (沈泥) の急な流入が引き起こされるのでしょうか。

針葉樹林と港の関係性を地上から見つけることは不可能か非常に困難です。しかし、地球観測衛星が利用しやすくなったおかげで、科学者や政策立案者は宇宙から地球を観察して、地質学、気象学、生態学の相互関係を明らかにできるようになりました。

「かつては、衛星画像を 1 枚撮り、そこから何かを推測するのが精一杯でした。現在、私たちは毎日何度も衛星画像を撮影できます」と TI の宇宙および航空電子工学部門でシステム マネージャを務める Jason Clark は語ります。「時間の経過とともに物事がどのように変化するかを観察し、何が起こるかを予測できます。地震がさらに発生する可能性があるか、この浮氷塊は縮小するか拡大するか、などを予測できるのです。」

大きな画像を生成する画像処理テクノロジー

光学、レーダー、および赤外線による画像処理によって、宇宙から環境の包括的な画像を得ることができます。

「これらのさまざまなセンサをすべて組み合わせて宇宙から撮影することで、私たちの周囲の世界をより大きく、より高品質な画像として再現できます」と、TI の航空宇宙および防衛担当ディレクターである Laura Mueller は語ります。

光学画像では、カメラを使用して気象、雲、地形の変化を捉えます。雲の下の地表を測定するには、より長い波長を使用して雲を貫通するレーダー画像処理が必要です。ただし、レーダー画像処理には、貫通能力が高くなるほど、空間分解能が低下するという制限があります。

合成開口レーダーは、物体から反射される電磁波を捉えることで、この課題を克服します。レーダー アンテナはサイズ、つまり開口が大きいため、潮位や浮氷塊の厚さなど、物体をより高精度に測定できます。

「人工衛星の軌道に沿った動きを活用することで、実際にははるかに小さい物理的なアンテナを使用して、実質的に長さ数キロの仮想開口または合成開口を作り出すことができます」と Jason は述べます。「これにより、気象条件に左右されずに、はるかに正確な観測を行うことができます。」

光学画像処理やレーダー画像処理から得られる深さや厚さなどの測定結果に基づき、ハイパースペクトル画像処理や赤外線画像処理を使用することで、科学者は大気そのものや大気に含まれる物質の組成を理解したり、土壌の化学組成を再現したりできます。赤外線画像を使用した測定では、温度の変化を追跡することもできます。

最新の宇宙グレードの製品と分類を活用した信頼性の高い人工衛星の製作

地球観測の未来を支える画像処理テクノロジーの多くは、決して新しいものではありません。しかし、宇宙空間における変化の激しい環境に耐えられる耐障害性を備えながら、データ処理の要求を満たすコンポーネントが存在しなかったため、これまで、これらのテクノロジーの使用は商業用途や研究用途に限られていました。

「宇宙で何かを行うには多くの課題を解決する必要があります」と Jason は言います。「軌道上にあるハードウェアにアクセスして修理するのは容易ではないので、TI では、高い放射線レベルや大きな温度変動への曝露に対処でき、信頼性と機能性を長期間維持できるデバイスを設計し、テストを実施しています。」

環境研究の分野では、信頼性と生存性が特に重要です。時間経過に伴う温度パターンや地形変化を追跡するには、これらの研究に必要な期間にわたって耐えることができる材料とテクノロジーが欠かせません。

そのため、従来、人工衛星のオペレータは、軍事仕様の認定メーカー リスト (QML) Class V に従って製造され、放射線耐性が強化されたコンポーネントを使用する必要がありました。セラミック パッケージに密閉されている Class V コンポーネントは、高放射線量やオフ ガスへの耐性があります。通常のプラスチック パッケージでは、宇宙での激しい温度変動によって化学物質が発生し、センサ アレイが劣化するおそれがあります。

宇宙グレードの QML Class P は、放射線耐性が強化されています。特殊なプラスチックにパッケージングされ、ガスの発生を最小限に抑える要件を満たす、新しい分類に含まれる宇宙用コンポーネントです。QML Class P コンポーネントはサイズが小さいため、より多くのコンポーネントを人工衛星に搭載し、人工衛星の機能を高めることができます。 

放射線耐性が強化されたコンポーネントは、静止軌道と中高度軌道で運用される地球観測衛星において放射線要件と性能要件を満たすのに役立ちます。また、これらのコンポーネントは、10 年以上にわたる継続的な監視下で信頼性が維持されるように設計およびテストされています。  

地球低軌道で運用される人工衛星については、宇宙用強化プラスチックなどを使用して、放射線耐性を備えたコンポーネントが用意されています。緩和された放射線要件、短いミッション期間、人工衛星のより大きな体積に合わせてカスタマイズされており、コストが最適化されたプラスチック パッケージに組み込まれ、テスト済みの放射線性能を実現しています。

「TI では、さまざまなデバイス分類を提供しており、お客様がシステム ニーズのバランスを確保するのに役立ちます」と Laura は言います。「TI は、放射線耐性を強化したデバイスと放射線耐性を備えたデバイスで構成された幅広いラインナップを通じて、システム レベルの仕様を満たしたり、信頼性に関するニーズに対処したりするのに役立つ製品を提供しています。」

これらの分類やデバイスは、現在そして今後にわたって重要な役割を担います。 

「地球が誕生してから数十億年経ちますが、それに比べると、人類が測定を行うようになってから、ほんのわずかの時間しか経っていません」と Jason は述べます。「それにもかかわらず、現在 TI は科学者との協力を通じて、科学者が将来必要とするものをご用意できます。」

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