宇宙エレクトロニクスの新たな規格を打ち立てる

QML Class Pは宇宙エレクトロニクス向けの耐放射線強化プラスチックパッケージング規格であり、サイズ、重量、消費電力を考慮し宇宙関連ミッションを推進します。この規格の制定にあたり、TIとNASAおよび業界のリーダーとどのように協力しているかご紹介します

25 3 月 2024 | テクノロジーと革新

好奇心と技術革新が宇宙探査を前進させるにつれ、サイズ、重量、消費電力に関する制約は厳しさを増しています。宇宙関連製品の設計では、エラーが許容されることはほぼありません。また、官民組織による宇宙探査活動が増大する中、地球の軌道内、軌道外に関わらず、継続的な協力と改善が必要です。

QML (Qualified Manufacters List) Class P は、宇宙分野のエレクトロニクス向けの、新しいプラスチック パッケージに関する規格です。TI は最近、NASA や他の業界エキスパート企業と協力し、この規格の制定を主導しました。宇宙エレクトロニクスは、QML の中で規定されている政府の規格を満たす必要があります。その規格は、セラミックとプラスチック両方のパッケージングも含め、耐放射線特性 (radiation-tolerant) デバイスや耐放射線強化 (radiation-hardened) デバイスを網羅しています。QML は、宇宙という過酷な環境において、意図したとおりにパーツが動作することを保証するものです。

「パッケージング規格である QML Class P を活用すると、より高度な計算を宇宙空間で実現できます。たとえば、人工衛星や他の宇宙船が地球へデータを送り返すのではなく、自律的にデータを処理し、意思決定を下すことが可能になります」と、TI のスペースパワー事業部の製品ライン マネージャを務める Javier Valle は語ります。「より多くの処理能力を実現するには、より多くの電力も必要です。TI の QML Class P 製品ポートフォリオを使うことで、パッケージ全体のサイズを縮小しながら電源の効率を向上させることができ、その結果、電力密度が大幅に向上します」

設計の予測可能性を確保し、政府の基準に従って認証や認定に適合できるように、QML には多くのClassがあります。私たちの知識や使用事例の進歩に伴って、Class P のような新しい規格の導入が進んでいます。QML Class P 規格により、人工衛星、惑星や衛星の表面探査車、その他の宇宙船に搭載するパワー マネージメント、プロセッサ、通信、高速集積回路(IC) で、耐放射線強化プラスチック パッケージを使用できるようになります。

 

プラスチックの採用により宇宙分野の開発を加速

米国のさまざまな政府機関の仕様に適合しているという理由から、従来はセラミック パッケージが信頼性の高い選択肢となっていました。セラミック パッケージを採用した宇宙エレクトロニクスメーカーは、QML Class V という認証規格に基づき、市場にICを供給してきました。

一方、QML Class P の制定前は、プラスチック パッケージを対象とする標準化済みの耐放射線強化規格はありませんでした。

初期のプラスチック パッケージ規格は、アウトガスに対して特に脆弱でした。アウトガスとは、宇宙の過酷な温度や真空という条件下で、有機化合物が気化したガス成分が放出されることです。アウトガスは、エレクトロニクスの故障を招く懸念があり、場合によっては宇宙ミッションの一時停止または完全な打ち切りが生じる可能性もあります。

製造と試験の手順が進歩したことで、宇宙空間でのアウトガス排出やその他の環境問題の影響に対処できるようになりました。しかし、メーカーごとにこのような進歩が異なる可能性があることから、標準化を行わない限り、新しいテクノロジーを宇宙で運用できるかどうか、という信頼性は不十分でした。

プラスチック パッケージに関する QML 基準を必要としているお客様から繰り返しご意見を伺い、TI は業界や標準化機構から 36 人を超える専門家で構成されたグループを結成しました。

 

未来を見据えるTI 製品

宇宙事業に携わる企業は、TI の宇宙用強化プラスチック (Space Enhanced Plastic:SEP) 製品ラインアップを使用している従来の耐放射線特性電子設計から、TI の QML Class P 製品ラインアップを使用する耐放射線強化設計に簡単に移行できます。TI はピン互換性を確保しているため、他のハードウェアに変更を加える必要はありません。

TI の QML Class P 認証済み製品ラインアップは、ソーラー パネルからポイント オブ ロード電源まで、宇宙船の電力システム (EPS) 全体に対応できるソリューションを取り揃えており、製品ポートフォリオを拡大し続けています。

宇宙探査の未来へ進み続けるTIは、宇宙向けの設計における無限の可能性と解決策をもたらします。60年以上にわたり、宇宙向けのソリューションを開発してきたTIは、これからも次のフロンティアを目指すお客様の開発を支援していきます。

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