基盤となる半導体チップの供給確保の重要性

45nm ~ 130nm のプロセス ノードが重要な理由

10 4 月 2024 | 製造

今日、数十億個のトランジスタを単一のチップ上に設計することが可能です。トランジスタの集積度が高ければ高いほど、より微細なノードが必要になります。一部の製造プロセスでは、5nm (ナノメートル) あるいはさらに微細なノードを使用しています。

しかし、基礎的なアナログ半導体や組み込みプロセッシング半導体は、45nm ~ 130nm の範囲内にあるノードで製造されています。また、私たちが日々使用するエレクトロニクス製品の大半は、それらの半導体製品を幅広く採用しています。

「車載や産業用のアプリケーションから、ノート PC や電話の回路基板に至るまで、私たちが目にするほとんどのエレクトロニクス システムには、最も微細なプロセスは使用されていませんし、今後も使用する必要はないでしょう」と、TI のアナログ シグナル チェーン担当シニア バイス プレジデントを務める Hagop Kozanian は述べています。「大半のシステムは、45nm またはそれより大きいノードを使用して、最適な性能を達成しています。アナログ パーツを使用する多くの設計にとって、単純にノード サイズを微細化するだけでは、性能の低下とコストの上昇をもたらす可能性があります」

業務に合わせたツールの選択

アナログ シグナル チェーンや電源コンポーネントは、最も微細なノードを目指す競争から恩恵は受けません。むしろ、最善の部品を市場に供給するということは、各部品特有のニーズに適した手法やテクノロジーを使用し、設計や製造を行うことを意味します。

「半導体業界では、さまざまなアプリケーションの多様な要件を満たす、あらゆる種類のチップが必要です。大半のチップの要件として、ノード サイズは表面的なものにすぎません」と、Hagop は述べています。「45nm ~ 130nm のプロセス テクノロジーに対する TI の投資は、より高い電圧で高精度を実現するのに役立ちます。その結果、レーダー システムや宇宙空間の人工衛星に適した信号のように、アプリケーションにとってより良い性能を達成することや、より多くの電力を供給できる電源を高性能サーバーに搭載することにつながります」

電圧とノード サイズの関係は複雑です。最小のノード サイズで製造したチップは通常、ほんの数年前であっても非常に低い電圧で動作させる必要がありました。ただし、例えばアナログ センサ部品の場合、電圧がより低くなると、信号を変換するためにより多くのハードウェアが必要になります。その結果、誤差を招き、遅延が生じる可能性があります。

「車載や産業用のアプリケーションでは、より高い電圧に耐えるデバイスをサポートする、より大きなノードで動作させたいと考えています。これらのデバイスは、効率的な電力供給を行うと同時に、システム内の銅配線の総量を減らすのに役立ちます」と、先進テクノロジー開発担当バイス プレジデントの Sameer Pendharkar は述べています。

デジタル信号処理や無線能力を搭載した TI のフル統合型マイコンは、特にこの種の高度な 45nm ノードの製造への投資により可能になりました。

「TI のプロセス ノードは、TI の製品に合わせて最適化されています。TI の典型的なマイコン、ワイヤレス コネクティビティ製品、レーダー デバイスの場合、ダイ サイズのうち 60% 以上は、アナログや RF 向けに最適化されたトランジスタが占めています。デジタル トランジスタのプロセスに合わせて、これらのアナログ トランジスタのプロセス ノードを微細化することはありません。したがって、より微細なプロセス ノードを採用した場合でも、顕著な利点にはつながりません」と、組み込みプロセッシング担当シニア バイス プレジデントの Amichai Ron は述べています。「TI のお客様にとって、過度な微細化は性能上の利点につながらず、デバイスのコスト上昇を招くことになります」

重要な投資の実行

45nm ~ 130nm のプロセス ノードでリーダーシップを発揮するには、お客様が製品を必要とするときにキャパシティを確保しながら、TI 製品独自の要件に適したプロセス テクノロジーを開発し、保持する必要があります。

「車載や産業用のような業界は、ほんの数年先ではなく、数十年後まで TI の製品をお客様は必要としています」とAmichaiは述べています。「TI 独自の製造ノウハウ、プロセス、ファクトリに投資を行うことで、今後何年にもわたって使用される基礎的な半導体チップを非常に安定した状態で供給できるようになります」

TIは現在、45nm ~ 130nm のプロセス向けに 300mm ウエハの製造能力を拡大している数少ない半導体企業の 1 社です。また、設計から製品供給まで、製品ライフ サイクル全体を社内でサポートしている数少ない 1 社でもあります。TI は以下の分野で投資を行っています。

  • 300mm ウエハ製造能力の拡大:チップは一般的に、最初に大きいシリコン ウエハ上の回路として製造され、次に個々のチップに切断、配線や封止などの組み立てとパッケージングが行われいます。7 つの新しい 300mm ウエハ ファブに対する TI の最近の投資は、スケーラビリティ、効率、品質の向上につながるもので、エレクトロニクス製品向け半導体の今後数十年にわたる成長に対応できます。半導体業界で最大かつ最も高度なサイズである 300mm ウエハは、200mm ウエハに比べて 2 倍以上のチップ製造数を達成できます。したがって、より多くの 300mm ウエハ製造能力を確保すると、より多くのチップを製造すると同時に、製造チップ 1 個あたりのエネルギーと水の使用量、さらにコストや廃棄物総量を減らすことができます。
     
  • テクノロジー:300mm ウエハ製造への投資の拡大と並行して、TI は独自のプロセス テクノロジーにも取り組んでいます。45nm ~ 130nm プロセス ノード向けの TI の製造ノウハウは、TI 製品専用に設計されています。これにより、TI は性能の向上、電力密度の向上、消費電力の低減、サイズの小型化などの成果を確実に達成できています。また、価格と性能の最適な両立を実現し、非常に革新的な製品を継続的に供給することができます。
     
  • TI はまた、組み立てとテストの施設を世界各地に保有し、運営しているため、地理的な多様性を維持し、サプライ チェーンを管理することができます。TI は自社の製造能力や、組み立てとテストの能力を拡大するために投資を行っています。同時に、お客様が信頼できる高い供給体制を維持できるよう、複数の拠点から供給を行う製造フローを通じて、製品の入手しやすさを向上させています。
     
  • パッケージング:ウエハの生産量全体をサード パーティー、または社外の組み立て / テスト (outside assembly and test:OSAT) 施設へ出荷し、最終製品にするためのパッケージングを実施する多くの半導体企業とは異なり、TI は自社製品の大半を社内で組み立てるほか、ソリューション サイズ、使いやすさ、性能に合わせて最適化された、標準パッケージと高度パッケージを合計で数千種類取り揃えています。

「これらの投資は TI 独自の供給体制を確実なものにし、自社製品にとって最適なテクノロジーを実現するのに役立ちます」と、Sameer は述べています。「また、市場でプロセス微細化のニーズに応じて、それに対応する準備ができています」

成長と拡大を続けている業界への確実な供給

TI は、2023年までにウエハ製造、組み立ておよびテストに関するオペレーションの90%を、自社化するために投資を行っています。製造施設を自社で所有して運営することで、TI は自社のサプライ チェーンをより的確に管理し、世界各地のお客様に製品を確実な供を提供する体制を強化することができます。

「適切なコスト、性能、消費電力、精度、電圧レベルを達成する幅広い製品ラインアップを供給するには、この方針と、基礎的な半導体の重要な領域で製造の革新を実現するための取り組みが不可欠です」と、Sameer は語ります。

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