信頼性試験
以下の情報は、製品の信頼性に関して TI が実施している試験の種類を示します。
加速試験
ほとんどの半導体製品の寿命は、通常使用条件下で長年にわたります。ただし、寿命の確認をするために、何年も待つことはできません。そのために、印加するストレスを大きくする必要があります。ストレスの増大によって、潜在的な故障発生メカニズムが強化つまり加速され、故障発生の真の原因を識別しやすくなり、TI は故障モードを防止するための対策を講じることができます。
半導体デバイスで最も一般的な加速要因は、温度、湿度、電圧、電流です。ほとんどの場合、加速試験を実施しても物理的性質は変化しません。代わりに、観測の対象となる時間がシフトします。加速条件下と通常条件下の間で見られるシフトを、「ディレーティング」と呼びます。
高加速試験は、JEDEC ベースの品質試験で重要な要素になっています。以下の各試験は、JEDEC spec JESD47 に基づく高加速条件を反映しています。製品がこれらの試験に合格した場合、そのデバイスはほとんどの使用事例で受け入れ可能です。
認定試験 | JEDEC Reference(JEDEC 基準) | Applied Stress/Accelerant(印加ストレス / 加速要因) |
---|---|---|
HTOL | JESD22-A108 | 温度と電圧 |
温度サイクル | JESD22-A104 | 温度と温度変化率 |
温度湿度バイアス | JESD22-A110 | 温度、電圧、湿度 |
uHAST | JESD22-A118 | 温度と湿度 |
高温保存 | JESD22-A103 | 温度 |
Temperature Cycle(温度サイクル)
JESD22-A104 規格に従い、標準的な温度サイクル(TC)試験は、ユニットに対して極端な高温と極端な低温を設定し、それら 2 つの値の間で温度を遷移させます。あらかじめ規定されたサイクル数にわたってユニットにこれらの条件を繰り返し適用する(サイクル)方法で、この試験を実施します。
High Temperature Operating Life(HTOL)(高温動作寿命)
HTOL は、高温かつ動作条件下におけるデバイスの信頼性を判断する目的で使用します。この試験は、JESD22-A108 規格に従い、通常は長期間にわたって実施します。
Temperature Humidity Bias/Biased Highly Accelerated Stress Test(THB / BHAST)(温度、湿度、バイアス / バイアス印加高加速ストレス試験)
JESD22-A110 規格に従い、THB と BHAST はデバイスに対して高温と高湿度の条件を設定すると同時に、バイアス電圧印加の条件下に置き、デバイス内部の腐食を加速することを目的とします。THB と BHAST は同じ目的のためのものですが、BHAST の条件と試験手順により、THB よりかなり迅速に試験を完了することができます。
Autoclave/Unbiased HAST(オートクレーブ / バイアス無印加 HAST)
Autoclave and Unbiased HAST(オートクレーブ / バイアス無印加 HAST)は、高温かつ高湿度条件下におけるデバイスの信頼性を判断します。THB や BHAST と同様、この試験は腐食を加速する目的で実施します。ただし、これらの試験とは異なり、ユニットにバイアス印加ストレスを加えることはありません。
High Temperature Storage(高温保存)
HTS(Bake or HTSL(ベーキングまたは HTSL とも呼びます)は、高温条件下におけるデバイスの長期的な信頼性を判断します。HTOL とは異なり、試験期間中、デバイスを動作条件下に置くことはありません。
Electrostatic Discharge(ESD)(静電気放電)
静電気放電は、静止状態にある不均衡な電荷が原因で発生します。通常、絶縁体相互の表面をこすり合わせるか、接触していた絶縁体どうしを引き離すときに発生します。一方の表面は電子を獲得し、もう一方の表面は電子を失います。その結果、不均衡な電気的条件が発生し、これを「静電荷」(静的な電荷)と呼びます。
静電荷が一方の表面からもう一方の表面に移動する際に、静電気放電(ESD)が発生し、2 つの表面の間を非常に小規模な雷が走ります。
静電荷が移動する際に、電荷は電流になり、ゲート酸化膜、金属の層、接合部を損傷または破壊する可能性があります。
JEDEC は 2 とおりの異なる方法で ESD の試験を行います。
1. 人体モデル (HBM)
人体に蓄積された静電荷がデバイスを経由してグランドに流れる人体放電の動作をシミュレートするために策定された、コンポーネント・レベルのストレス法です。
2.荷電デバイス・モデル (CDM)
JEDEC JESD22-C101 の仕様に従って、製造機器と製造プロセスで発生する充電と放電のイベントをシミュレートする、コンポーネント・レベルのストレス法です。