BAW 共振器テクノロジー
次世代タイミング ソリューションに適した超低ジッタと優れた信頼性を実現
BAW とは
バルク弾性波 (BAW) は、圧電 (ピエゾ) 変換を使用してギガヘルツ単位の周波数と高品質の (Q 値が大きい) 共振を生成する共振器テクノロジーです。他の IC を搭載した標準的なプラスチック パッケージに直接統合できます。従来の水晶共振器や MEMS (微小電子機械システム) 共振器に比べると、効率向上につながる製造しやすさ、フレキシビリティの向上、周波数安定性の向上、超低ジッタ、振動や衝撃などが発生する過酷な環境条件下での信頼性の向上など、BAW には多くの利点があります。
TI の BAW (バルク弾性波) テクノロジーの特長
業界をリードするジッタ特性を実現
TI のネットワーク シンクロナイザ製品に TI の BAW テクノロジーを統合すると、42fs (フェムト秒) という超低ジッタ特性が実現
信頼性を重視して製作済み
BAW (バルク弾性波) テクノロジーは、機械的衝撃や振動などの過酷な環境条件に対する高い復元力を実現し、水晶振動子ベースのソリューションに比べて 100 倍の MTBF (平均故障間隔) を達成します。
製造しやすさ
製造、組み立て、パッケージングを含め、TI はこの製品を社内製造プロセスで生産しているため、より迅速なサンプル出荷とリード タイムの短縮を実現しています。その結果、シリコン ベースの統合型ソリューションの供給に関するお客様の懸念を軽減できます。
開発中の設計がシンプルに
BAW を低消費電力ワイヤレス マイコンやクロック ジェネレータに統合すると、外部の水晶振動子 / 発振器が不要になり、お客様は BOM (部品表)、コスト、スペースの節減が可能
BAW テクノロジー採用で設計が向上
BAW テクノロジーの採用で、より信頼性の高いシステムを製作可能
バルク弾性波 (BAW) 共振器は、既存の水晶振動子や MEMS (微小電子機械システム) 共振器テクノロジーに比べて多くの改良を実施しました。主な改良点は、耐振動性、耐衝撃性、MTBF (平均故障間隔)、FIT (故障率:時間あたりの故障回数) に関する BAW 共振器の信頼性です。
- BAW 共振器は 2ppb/G (重力加速度が 1 のときに、10 億分の 2 の変動) より良好な安定性を維持でき、振動発生前、振動発生中、振動発生後にジッタや周波数の著しい劣化はありません。
- 1,500G の機械的衝撃が加わった場合でも、BAW 共振器は周波数偏差を 0.5ppm 未満に維持でき、ジッタの劣化はありません。
- 35℃ 時の BAW 共振器の FIT レートは 0.3、MTBF は 33 億時間であり、10 億時間の動作で 0.3 個の故障に相当します。
High Reliable BAW Oscillator MTBF and FIT Rate Calculations
Vibration and Mechanical Shock Performance of TI BAW Oscillators
Testing TI BAW resonator technology in mechanical shock and vibration environments
BAW テクノロジーの超低ジッタ特性による利点をご確認ください
BAW (バルク弾性波) テクノロジーの超低ジッタ特性は、800Gbps と 1.6Tbps の各イーサネットをベースとするネットワークや、5G/6G ワイヤレス インフラ アプリケーションの厳格な要件を満たすのに役立ちます。
- 電圧制御発振器として BAW テクノロジーをネットワーク シンクロナイザに組み込むと、従来の発振器に比べて 20dB の特性改善や、50fs (フェムト秒) のジッタ特性を実現できます。
- 低ノイズでばらつきの小さいクロック供給源は、EtherCAT、SerDes、PCIe (Peripheral Component Interconnect Express)、ASIC (特定用途向け IC)、FPGA のクロック処理に関するビット エラー レート要件に適合します。
How to use the LMK05318 as a jitter cleaner
Understanding clocking needs for high-speed 56G PAM-4 serial links (Rev. A)
超低ジッタ に関する主な製品
BAW テクノロジーは、クロック処理とタイミングに関する多様なニーズに対応
既存の共振器の周波数範囲は、数 kHz から数 MHz です。TI のバルク弾性波 (BAW) テクノロジーは、ギガヘルツ (GHz) 単位の周波数で共振し、さまざまなタイミング アプリケーションに適した、より広い範囲の周波数を生成します。
- ギガヘルツ単位の共振器周波数を分周出力デバイダ (分周器) に統合すると、TI の各種発振器とクロック ジェネレータは、1MHz ~ 400MHz の範囲で周波数を生成できます。
水晶発振器に対するスタンドアロン BAW 発振器の利点
BAW に付加的な回路を統合すると、PCB 面積を節減可能
TI の各種発振器、クロック ジェネレータ、ワイヤレス マイコンに BAW テクノロジーを統合すると、追加部品が不要になり、プリント基板 (PCB) の面積を節減できます。
- TI の BAW 発振器は、3.2mm x 2.5mm と、2.5mm x 2.0mm の各パッケージに封止済みであり、既存部品の置き換えが容易です。
- クロック ジェネレータに BAW 共振器を統合すると、外部クロックまたは水晶振動子が不要になり、部品点数の低減と設計のシンプル化を実現できます。
- ワイヤレス マイコンに BAW 共振器を統合すると、外部の水晶振動子または発振器のリファレンス クロックが不要になります。
ビルディング・オートメーション向け BAW 発振器ソリューション
BAW Oscillator Solutions for Network Interface Card
世界初の水晶不使用ワイヤレス SimpleLink™ マイコンを採用すると、水晶不使用が簡単に実現
デバイスの寿命全体にわたって周波数精度を維持
バルク弾性波 (BAW) テクノロジーを採用すると、安定性が向上します。
- 40℃ ~ 105℃ の動作温度範囲にわたって ±10ppm の温度安定性。
- 総合的な周波数安定性は ±25ppm です。これは、半田シフト (半田による物理的接触の強化に伴う熱抵抗の変化や微小な温度変化)、初期公差、–40℃ ~ 105℃ の範囲内での変動、1.8V ~ 3.3V の範囲内での変動、10 年にわたる経年劣化を含めた数値です。
水晶発振器に対するスタンドアロン BAW 発振器の利点
TI の バルク弾性波 (BAW) 共振器技術に関する 5 つの重要な事項
BAW 共振器を社内製造する方法で、供給の安定性に関するお客様の懸念を軽減
TI は、製造、組み立て、テストを含め、バルク弾性波 (BAW) テクノロジーをベースとする製品を社内で製造しています。
- 全面的に社内製造しているため、外部ベンダへの依存性が低下しています。
- 他の IC を搭載した標準的なプラスチック パッケージに、TI の BAW 共振器を直接統合した結果、複数の周波数、複数の出力タイプ、電圧バリエーションに対応できるように作り分けた (複数バージョン) 単一の ICを製造し、サンプル デバイスと量産デバイスを出荷することができます。
主なアプリケーションの概要
PCIe とイーサネットのクロック処理に適した TI のマルチソース (複数の供給元) BAW をベースとする発振器やクロック ジェネレータを採用すると、エンタープライズ システムで必要なシステムの信頼性と性能が最大化
TI のマルチソース (複数の供給元) BAW (バルク弾性波) をベースとする発振器とクロック ジェネレータは、多様なエンタープライズ アプリケーションに適したクロック処理ソリューションの実現に役立ちます。
- サーバー管理プロセッサ、Open Compute Project 3.0/CPU1 PE3 x 16、およびサーバーのマザーボードに搭載している FPGA (フィールド プログラマブル ゲート アレイ) に適したクロック処理機能を、3mm x 3mm パッケージに封止した単一ソリューション。
- 56Gbps と 112Gbps のイーサネットや、スマート ネットワーク インターフェイス カードとハードウェア アクセラレータに適した PCIe (Peripheral Component Interconnect Express) Gen 6 までの世代に対応するリファレンス クロック。
- SSD (ソリッド ステート ドライブ) 内のコントローラに適した、PCIe Gen 6 準拠のリファレンス クロック。
主なリソース
TI の BAW (バルク弾性波) テクノロジーを活用した低ジッタ クロックを実装すると、112Gbps や 224Gbps の次世代 PAM4 SerDes に適したシグナル インテグリティ向上とコスト削減が可能
TI のバルク弾性波 (BAW) ベースのネットワーク シンクロナイザは、112Gbps と 224Gbps の PAM4 SerDes の厳格なジッタ要件への対応に役立ちます。
- TI のネットワーク シンクロナイザ製品に BAW テクノロジーを統合すると、42fs (フェムト秒) のジッタ特性を実現できます。
- TI の BAW ベースの発振器とネットワーク シンクロナイザは低ドロップアウト レギュレータを内蔵しており、非常に優れた電源除去比とクロック特性を実現します。
- IEEE 1588 高精度タイム プロトコル (PTP) に対応する同期イーサネット (SyncE) ソリューションと、Class-D のタイミング精度を達成する PTP ソフトウェアは、G8275.1、G.8275.2、SyncE G.8262 に適合しています。
主なリソース
- LMK5B33216 – 2.5GHz のバルク弾性波発振器 (BAW VCO) を内蔵し 16 出力、3 個の DPLL と APLL (デジタルとアナログの PLL) を採用したネットワーク・シンクロナイザ
- LMK05318B – BAW (バルク弾性波) 対応、超低ジッタのシングルチャネル・ネットワーク・シンクロナイザ・クロック
- LMK6P – 低ジッタ、高性能、バルク弾性波 (BAW)、固定周波数、LVPECL (低電圧で正極性の ECL)、発振器
- CLOCK-TREE-ARCHITECT – Clock tree architect プログラミング・ソフトウェア
- PSPICE-FOR-TI – TI Design / シミュレーション・ツール向け PSpice®
- TICSPRO-SW – TICS (テキサス・インスツルメンツのクロックとシンセサイザ) Pro ソフトウェア
BAW ベースのネットワーク シンクロナイザを採用した結果、TI の各種クロック処理ソリューションは、世界各地で導入されている 4G と 5G の各ネットワークで一般的な選択肢になっているほか、6G 設計の基板になる見込みです
TI のバルク弾性波 (BAW) ベースのネットワーク シンクロナイザは、無瞬断切り替え (ヒットレス スイッチング) やホールド オーバの特性実現すると同時に、超低ジッタのクロックを供給し、5G の設計をシンプルにします。
- 複数の内蔵 LDO は、入力側の電源電圧レールに対して、-75dBc より良好な電源除去比を実現します。
- プログラマブルな出力スイングと同相電圧に加えて、JEDEC JESD204B と JESD204C をサポートします。
- IEEE (米国電気電子学会) 1588v2 高精度タイム プロトコル (PTP) に対応するソフトウェアは、包括的なタイミング サポートを達成しています。1PPS (1 秒につき 1 個のパルス:Pulse Per Second) 信号の偏差は ±5ns 未満です。部分的なタイミング サポートは、パケット遅延変動が 230μs を上回る場合、±1μs 未満です。
主なリソース
- LMK5C33216 – ワイヤレス通信向け、JESD204B 対応、BAW (バルク弾性波) 搭載、超低ジッタ・クロック・シンクロナイザ
- LMK6C – 低ジッタ、高性能、バルク弾性波 (BAW)、固定周波数、LVCMOS、発振器
- ITU-T G.8262 Compliance Test Results for the LMK5C33216 – アプリケーション・ノート
- TICSPRO-SW – TICS (テキサス・インスツルメンツのクロックとシンセサイザ) Pro ソフトウェア
- PLLATINUMSIM-SW – PLLatinum™ シミュレーション・ツール
TI の BAW をベースとする発振器、クロック ジェネレータ、ワイヤレス マイコンを採用すると、ビル オートメーション システムでシステムの信頼性と性能が最大化
ビル オートメーション システムは、安全性、堅牢性、信頼性をスケーラブルなレベルで最大化します。より優れた性能を実現するには、高精度クロック データを活用した複雑な高信頼性ネットワークが必要です。TI のバルク弾性波 (BAW) ベースの各種製品は、このようなニーズを満たすのに役立つソリューションを実現します。
- BAW テクノロジーは耐振動性と耐衝撃性を改善し、各種水晶振動子テクノロジーに比べて 100 倍の MTBF (平均故障間隔) を実現しています。
- –40℃ ~ 105℃ の動作温度範囲に対応するほか、10 年間の経年劣化を含めて ±25ppm の総合的な周波数安定性を達成します。
主なリソース
- ビルディング・オートメーション向け BAW 発振器ソリューション – アプリケーション概要
- Vibration and Mechanical Shock Performance of TI BAW Oscillators – アプリケーション・ノート
TI の BAW ベース製品を採用すると、スペースの制約という懸念を緩和し、医療システムのエンドポイントに高性能クロックを供給することが可能
TI のバルク弾性波 (BAW) テクノロジーを採用すると、医療システムで性能、サイズ、信頼性に関する基準を上回ることができます。
- TI の各種ネットワーク シンクロナイザ製品は、JEDEC JESD204B 規格に準拠した、ジッタ特性が 42fs (フェムト秒) のクロックを実現します。
- TI の各種製品に BAW テクノロジーを統合した結果、追加部品が不要になり、従来は必要だったクロック処理デバイスとその外部回路に割り当てるプリント基板の面積を節減することができます。
- BAW テクノロジーは、水晶振動子テクノロジーより優れた耐振動性と耐衝撃性を実現します。
主なリソース
- LMK05318B – BAW (バルク弾性波) 対応、超低ジッタのシングルチャネル・ネットワーク・シンクロナイザ・クロック
- LMK5B33216 – 2.5GHz のバルク弾性波発振器 (BAW VCO) を内蔵し 16 出力、3 個の DPLL と APLL (デジタルとアナログの PLL) を採用したネットワーク・シンクロナイザ
- CC2652RB – 水晶不使用、BAW 共振器搭載、SimpleLink™ 32 ビット Arm Cortex-M4F、マルチプロトコル 2.4GHz ワイヤレス・マイコン