JAJSKW9 December 2020 DRV8434S
PRODUCTION DATA
ステッピング・モータでは、モータの巻線電流、逆起電力、機械的トルク負荷の間に明確な関係があります (図 7-21 を参照)。与えられた巻線電流に対して、モータの負荷がモータの最大トルク能力に近づくと、逆起電力の位相は巻線電流に応じてシフトします。DRV8434S は、モータ電流の立ち上がり電流象限と立ち下がり電流象限の間の逆起電力の位相の変化を検出することで、モータの過負荷ストール条件またはエンドオブライン・トラベルを検出できます。
このストール検出アルゴリズムは、デバイスがスマート・チューン・リップル・コントロール・ディケイ・モードで動作するようにプログラムされているときのみ機能します。ストール検出を有効にするには EN_STL ビットを「1」にする必要があります。また、何らかのフォルト条件 (例:UVLO、OCP、OL、OTSD) が存在する場合、ストール検出は無効になります。
このアルゴリズムは、PWM オフ時間を監視することで立ち上がり電流象限と立ち下がり電流象限の逆起電力を比較し、12 ビット・レジスタ TRQ_COUNT で表される値を生成します。この比較は、TRQ_COUNT 値がモータ電流、周囲温度、電源電圧に事実上依存しないような方法で行われます。このアルゴリズムはフルステップ動作モードをサポートしています。
モータの負荷が軽い場合、TRQ_COUNT はゼロ以外の値になります。モータがストール条件に近づくにつれて TRQ_COUNT はゼロに近づくため、トルク・カウントを使ってストール条件を検出できます。TRQ_COUNT がストール・スレッショルド (12 ビット STALL_TH レジスタで表されます) を少しでも下回ると、本デバイスはストールを検出し、SPI レジスタの STALL、STL、FAULT ビットが High にラッチされます。nFAULT ピンでストール検出フォルトを通知するには、STL_REP ビットが「1」である必要があります。STL_REP ビットが「1」の場合、ストールが検出されると nFAULT ピンは Low に駆動されます。
ストール条件では、モータのシャフトは回転しません。ストール条件が解消すると、モータは再び回転を開始し、モータは目標速度まで回転数を増加させます。CLR_FLT ビットと nSLEEP リセット・パルスのどちらかによって障害クリア・コマンドが発行されると、nFAULT は解放され、FAULT レジスタはクリアされます。
TRQ_COUNT は、回転するモータの最新の 4 つの電気的半サイクルの平均トルク・カウントとして計算されます。その計算値は次の 100ns 以内に本デバイスの CTRL8 および CTRL9 レジスタで更新されます。これらのレジスタは次の更新まで変更されません。その後の更新は電気的半サイクルごとに行われます。
モータのコイルの抵抗が大きいと、TRQ_COUNT が小さくなる場合があります。TRQ_SCALE ビットを使うと、小さい TRQ_COUNT 値を拡大し、その後の処理を簡単にできます。最初に計算された TRQ_COUNT 値が 500 未満であり、かつ TRQ_SCALE ビットが「1」の場合、TRQ_COUNT は 8 倍されます。TRQ_SCALE ビットが「0」の場合、TRQ_COUNT はアルゴリズムによる当初の計算値を維持します。
ストール・スレッショルドは 2 つの方法で設定できます。ユーザーが STALL_TH ビットを書き込む方法と、ストール学習プロセスを使ってアルゴリズムにストール・スレッショルド値を学習させる方法です。ストール学習プロセスは、STL_LRN ビットを「1」に設定することで開始します。アルゴリズムが理想的なストール・スレッショルドを学習できるように、意図的にモータを短時間ストールさせます。学習が成功すると、STALL_TH レジスタは学習したストール・スレッショルド値で更新されます。STL_LRN_OK ビットは、学習が成功した後 High になります。
学習されたある速度のストール・スレッショルドは、別の速度ではうまく機能しない場合があります。モータ速度が大きく変化するたびにストール・スレッショルドを再学習させることを推奨します。