JAJSPK0A December 2022 – October 2023 DRV8461
PRODUCTION DATA
従来のピーク電流モード制御は、検出 MOSFET の瞬間的な電流を調べて、駆動時間と減衰時間を決定します。そのため、モーター・ドライバはシステムの瞬間的な誤差に反応します。このような電流の急激な変化により、モーターから可聴ノイズが発生します。
ノイズのないステッパ・モーター動作を実現するため、DRV8461 にはサイレント・ステップ減衰モードが搭載されています。サイレント・ステップは、静止時と低速時に PWM スイッチングを行うことでノイズを除去する電圧モードの PWM レギュレーション方式です。そのため、サイレント・ステップで動作するステッパ・モーター・アプリケーションは、低ノイズ動作が不可欠となる 3D プリンタ、医療機器、ファクトリ・オートメーションなどのアプリケーションに最適です。
デバイスがサイレント・ステップ減衰モードで動作している場合:
サイレント・ステップ・ループは低帯域幅動作向けに設計されているため、モーター速度が中程度から高速のときは、減衰モードから DECAY ビットでプログラムされた従来の電流モード減衰方式の 1 つに戻すことが可能です。サイレント・ステップから他の減衰モードへはすぐに移行しますが、他の減衰モードからサイレント・ステップへは電気的半周期の境界で移行します。
図 7-18 に、サイレント・ステップ減衰モードの実装のブロック図を示します。
表 7-23 に、サイレント・ステップ減衰モードに関連する SPI レジスタのパラメータを示します。
パラメータ |
説明 |
---|---|
EN_SS |
EN_SS ビットが 1b の場合、サイレント・ステップ減衰モードはイネーブルになります。デバイスは、コイル A およびコイル B の電流に対してそれぞれ 1 つのゼロ交差が発生した後、サイレント・ステップで動作を開始します。EN_SS に 0b を書き込むと、サイレント・ステップ減衰モードはディセーブルされ、DECAY ビット設定に従って減衰モードが変化します。 |
SS_PWM_FREQ[1:0] |
サイレント・ステップ減衰モードでの PWM 周波数 (FPWM) を表します。
PWM 周波数が高くなると、スイッチング損失も大きくなります。 |
SS_SMPL_SEL[1:0] | サイレント・ステップ電流ゼロ交差サンプリング時間。デフォルト値は 2μs です。ゼロ交差付近で電流波形が歪んでいる場合は、サンプリング時間を長くしてください。
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SS_KP[6:0] |
サイレント・ステップ PI コントローラの比例ゲインを表します。範囲は 0~127 で、デフォルト値は 0 です。 |
SS_KI[6:0] |
サイレント・ステップ PI コントローラの積分ゲインを表します。範囲は 0~127 で、デフォルト値は 0 です。 |
SS_KP_DIV_SEL[2:0] |
KP の分割係数。実際の KP = SS_KP / SS_KP_DIV_SEL です。
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SS_KI_DIV_SEL[2:0] |
KI の分割係数。実際の KI = SS_KI / SS_KI_DIV_SEL です。
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SS_THR[7:0] |
デバイスがサイレント・ステップ減衰モードから、DECAY ビットによってプログラムされた別の減衰モードに遷移する周波数をプログラムします。この周波数は、正弦波電流波形の周波数に相当します。
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SS_THR スレッショルドを、指定されたマイクロステッピング設定のステップ周波数 (fSTEP) に変換するには、式 14 を使用する必要があります。
ここで、usm はマイクロステップ数 (4、16、256 など) に相当します。デバイスがカスタム・マイクロステッピング・モードで動作している場合、ステップ周波数を求めるには、式 14 に usm = 256 を使用します。
サイレント・ステップ・ループのゲインと周波数との関係を以下に示します。
ループ伝達関数には、次の 2 つの極と 1 つのゼロが含まれます。
目標のループ・ゲインを実現するには、比例ゲイン KP を選択する必要があります。KP を求めるには、以下の式を使用します。
ここで、UGB はループのユニティゲイン帯域幅、RMOTOR はモーター・コイル抵抗、LMOTOR はモーター・コイル・インダクタンス、IFS はフルスケール電流、VM は電源電圧です。
モーターの極をキャンセルするには、ゼロを配置する必要があります。離散化された実装では fP と fZ を等しくすることで、次の式を使用して KI を計算できます。
例として、以下の使用事例を考えてみます。
上記の式を使用すると、KP = 0.1885、KI = 0.00566 となります。次のレジスタ値を設定できます。
以下の画像に、モーターがサイレント・ステップ減衰モードで動作しているときの滑らかな正弦波コイル電流の波形を示します。
SS_SMPL_SEL ビットは、ゼロ交差点付近の電流波形の滑らかさに影響を及ぼします。デフォルト値の 2μs サンプリング時間は、ほとんどのモーターやアプリケーションで適切に動作します。電流波形の歪みがゼロ交差付近に見られる場合、サンプリング時間の値を最大 5μs まで増やすことができます。以下の画像は、サイレント・ステップ減衰モードからスマート・チューン・リップル・コントロール減衰モードへの遷移例で、サンプリング時間は 5μs です。