図 7-16 に、MCT8329A デバイスに実装されているモーター起動シーケンスを示します。
パワーオン状態これは、モーター起動シーケンス (MSS) の初期状態です。最初のパワーアップ時、またはスタンバイまたはスリープ・モードから MCT8329A デバイスが復帰したときは常に、MSS はこの状態で開始します。
DIR 変更判定MCT8329A では、MSS の開始時に方向変更コマンドが検出された場合、ISD で検出されたモーターの方向は、命令された方向と反対であると見なされ、RVS_DR_EN が 1b に設定されている場合、リバース・ドライブが実行されます。
ISD_EN 判定パワーオン後、MCT8329A の MSS は、初期速度検出 (ISD) 機能が有効化されている (ISD_EN = 1b) かどうかを調べる ISD_EN 判定に入ります。ISD が無効化されている場合、MSS は直接 BRAKE_EN 判定に進みます。ISD が有効化されている場合、MSS は ISD (Is Motor Stationary) 状態に進みます。
ISD 状態MSS はモーターの初期条件 (速度、回転方向) を決定します (「初期速度検出 (ISD)」を参照)。モーターが停止している (モーター BEMF < STAT_DETECT_THR) と見なされた場合、MSS は STAT_BRK_EN 判定に進みます。モーターが停止していない場合、MSS は回転方向の検証に進みます。
STAT_BRK_EN 判定MSS は、停止ブレーキ機能が有効化されている (STAT_BRK_EN = 1b) かどうかを確認します。停止ブレーキ機能が有効化されている場合、MSS は停止ブレーキ・ルーチンに進みます。停止ブレーキ機能が無効化されている場合、MSS はモーター起動状態に進みます (セクション 7.3.9.4 を参照)。
停止ブレーキ・ルーチン停止ブレーキ・ルーチンは、モーターを起動する前に、モーターを完全に停止させるために使用できます。STARTUP_BRK_TIME によって設定された時間の間、3 つのローサイド・ドライバ MOSFET のすべてをターンオンさせることで、停止ブレーキが作動します。
回転方向判定MSS は、モーターが正方向と逆方向のどちらで回転しているのかを判定します。モーターが正方向に回転している場合、MCT8329A は RESYNC_EN 判定に進みます。モーターが逆方向に回転している場合、MSS は RVS_DR_EN 判定に進みます。
RESYNC_EN 判定RESYNC_EN が 1b に設定されている場合、MCT8329A は BEMF > RESYNC_MIN_THRESHOLD 判定に進みます。RESYNC_EN が 0b に設定されている場合、MSS は HIZ_EN 判定に進みます。
BEMF > RESYNC_MIN_THRESHOLD 判定BEMF が RESYNC_MIN_THRESHOLD より大きくなるモーター速度の場合、MCT8329A は ISD 状態から得た速度および位置情報を使用して、閉ループ状態に直接遷移します (「モーターの再同期化」を参照)。BEMF が RESYNC_MIN_THRESHOLD より小さい場合、MCT8329A は STAT_BRK_EN 判定に進みます。
RVS_DR_EN 判定MSS は、リバース・ドライブ機能が有効化されている (RVS_DR_EN = 1) かどうかを調べます。リバース・ドライブ機能が有効化されている場合、MSS は逆方向モーター速度の確認に遷移します。リバース・ドライブ機能が有効化されていない場合、MSS は HIZ_EN 判定に進みます。
「速度」>「開ループ - 閉ループ・ハンドオフ」 判定MSS は、MCT8329A が閉ループで減速するのに十分な逆転速度であるかどうかを確認します。速度 (逆方向) が十分上がるまで、MSS は逆方向閉ループ減速にとどまります。速度が低すぎると、MSS は逆方向開ループ減速に遷移します。
逆方向閉ループ、開ループ減速、ゼロ速度クロスオーバーMCT8329A は逆方向で再同期し、モーター速度がハンドオフ・スレッショルドを下回るまで、閉ループでモーターを減速させます(「リバース・ドライブリバース・ドライブ」を参照)。逆方向のモーター速度が低すぎる場合、MCT8329A は開ループに切り替わり、開ループでモーターを減速させ、ゼロ速度に達します。次に開ループで正方向に加速し、モーター速度が十分に上がった後、閉ループ動作に入ります。
HIZ_EN 判定MSS は、コースト (ハイ・インピーダンス) 機能が有効化されている (HIZ_EN = 1) かどうかを確認します。コースト機能が有効化されている場合、MSS はコースト・ルーチンに進みます。コースト機能が無効化されている場合、MSS は BRAKE_EN 判定に進みます。
コースト (ハイ・インピーダンス) ルーチン本デバイスは、HIZ_TIME によって設定された特定の時間の間、6 つの MOSFET のすべてをターンオフすることで、モーターを惰性で回転させます。
BRAKE_EN 判定MSS は、ブレーキ機能が有効化されている (BRAKE_EN = 1) かどうかを確認します。ブレーキ機能が有効化されている場合、MSS はブレーキ・ルーチンに進みます。ブレーキ機能が無効化されている場合、MSS はモーター起動状態に進みます (セクション 7.3.9.4 を参照)。
ブレーキ・ルーチンブレーキは、BRK_MODE 設定に基づいてハイサイドとローサイドのどちらかの MOSFET を使って作動します。
閉ループ状態この状態では、MCT8329A は台形波制御を使ってモーターを駆動します。