JAJSO67 january 2023 MCT8329A
PRODUCTION DATA
MCT8329A は、急減速機能を AVS 機能と組み合わせて使うことで、エネルギーを入力 DC 電源に逆流させることなく、モーターを急速に減速 (数 10ms で 100% から 10% に速度を低減) させることができます。この急減速機能は、FAST_DECEL_EN を 1b に設定することで有効化できます。入力 DC 電源へのエネルギーの注入を防止するには、AVS_EN を 1b に設定する必要があります。この組み合わせにより、直線的なブレーキ効果を得ることができ、結果として、エネルギーを入力 DC 電源に逆流させることなく、迅速かつ滑らかに速度を低減できます。この機能の組み合わせをリバース・ドライブ (「リバース・ドライブ」を参照) またはモーター停止 (「アクティブ・スピン・ダウン」を参照) 中にも使用することで、エネルギーを入力 DC 電源に逆流させることなく、迅速に速度を低減させることができます。
減速時間は、減速時の電流制限値 (FAST_DECEL_CURR_LIM) を適切に設定することで制御できます。電流制限値が大きいほど、減速時間は短くなります (逆も同じ)。必要以上に大きい値に電流制限値を設定すると、目標速度が低い際に、過剰なブレーキ・トルクによるモーター・ストール・フォルトの原因となる可能性があります。これは、特に加減速サイクルが繰り返される場合、外部 FET の損失を大きくする原因となる可能性もあります。そのため、ストール・フォルトも過熱を発生させずに必要な時間内に減速するように、FAST_DECEL_CURR_LIM を適切に選択する必要があります。
FAST_BRK_DELTA は、モーターが目標速度に達した際に急減速モードを終了し、モーター駆動モードに再移行するための目標速度ヒステリシス・バンドを設定するために使われます。たとえば、FAST_BRK_DELTA が 1% に設定されている場合、目標速度に対するモーター速度の偏差が目標速度の 1% 以内に達したときに急減速が完了したと見なされます。FAST_BRK_DELTA をより大きい値に設定すると、特に大きい FAST_DECEL_CURR_LIM 値が使われている場合、モーター・ストール・フォルトを防止できる可能性があります。FAST_BRK_DETLA により大きな値を設定すると、減速モード終了時の目標速度とモーター速度との間の速度誤差も大きくなります。しかし、モーター駆動モードが再開されると、モーターは最終的に目標速度に達します。短い減速時間と信頼性の高い (ストール・フォルトが発生しない) 減速プロファイルが両立するように、FAST_DECEL_CURR_LIM と FAST_BRK_DELTA を共に設定する必要があります。
FAST_DEC_DUTY_THR は、その速度を下回ると急減速が実行される速度を設定します。たとえば、FAST_DEC_DUTY_THR が 70% に設定されている場合、70% を超える速度からの減速では、速度が 70% を下回るまで急減速は使われません。FAST_DEC_DUTY_WIN は、その速度を下回ると急減速が実行されない最小減速ウィンドウ (初期速度 - 目標速度) を設定します。たとえば、FAST_DEC_DUTY_WIN が 15% に設定されており、50% → 40% の減速コマンドが受信された場合、減速ウィンドウ (10%) が FAST_DEC_DUTY_WIN より小さいため、速度を 50% から 40% に低減するのに急減速は使用されません。
MCT8329A は、非常に低速までブレーキをかける際の急減速の安定性を向上させるため、急減速時の動的電流制限機能を備えています。この機能を使用すると、モーター速度が低下するのに応じて、急減速中の電流制限値を低減できます。この機能は、DYNAMIC_BRK_CURR を 1b に設定することで有効化できます。(FAST_DEC_DUTY_THR での) 急減速開始時の電流制限値は FAST_DECEL_CURR_LIM によって設定され、ゼロ速度時の電流制限値は DYN_BRK_CURR_LOW_LIM によって設定されます。動的電流制限が有効化されている場合、急減速時の電流制限値は、これらの 2 つの動作点の間の速度に対して直線的に変化します。動的電流制限が無効化されている場合、急減速時の電流制限値は一定に保たれ、FAST_DECEL_CURR_LIM によって設定されます。