JAJSC43 December 2015 TPS92691 , TPS92691-Q1
PRODUCTION DATA.
TPS92691/-Q1は、入力電圧範囲の広い(4.5V~65V)コントローラであり、昇圧または降圧コンバータ・トポロジに基づく高効率でコンパクトなLEDドライバを実装するために、必要なすべての機能を備えています。固定周波数のピーク電流モード制御手法によって定電流出力を実現し、直列接続LEDの単一ストリングを駆動するのに理想的です。低入力オフセットのレール・ツー・レール電流センス・アンプを内蔵することで、幅広い範囲の出力電圧(0V~65V)をサポートし、1個~20個以上の白色LEDからなるLEDストリングに電力を供給できます。このコントローラは、LED構成およびドライバ・トポロジに基づいて、ハイサイドまたはローサイドの電流シャント・センス手法に対応します。アナログ調整入力IADJで設定されるLED電流センス・スレッショルドにより、電圧VIADJを140mVから2.25Vまで変化させて、15:1のリニア範囲にわたるアナログ(振幅)調光を実現できます。IADJ入力によってLED電流を外部からプログラミングでき、LEDの校正、輝度補正、熱管理などが容易です。PWM入力に基づいてLED電流のデューティ・サイクルを変化させることにより、高い分解能とリニアな調光応答が得られます。このPWM入力はGATEおよびDDRV駆動出力を直接制御し、内部発振器も制御します。また、LED負荷と直列に配置した外部MOSFETを使用することで、コントラスト比1000:1以上の高速PWM調光を実現できます。電流モニタ出力IMONにより、レール・ツー・レール電流センス・アンプで測定されたLED電流の瞬時ステータスを通知します。この機能は、LEDの短絡および開放障害を示すために搭載され、LEDドライバ・トポロジに依存しないケーブル・ハーネスの障害検出も可能にします。その他の障害保護機能として、サイクル-バイ-サイクル電流制限、ヒステリシスに基づく過電圧保護、VCC低電圧保護、過熱シャットダウン、およびSSピンのプルダウンによるリモート・シャットダウン機能を備えています。
このICは、入力VIN定格65Vのリニア・レギュレータを内蔵し、それによって7.5V(標準)のVCCバイアス電源および他の内部リファレンス電圧を生成します。VCC出力を監視することで、UVLO保護を実装しています。デバイスはVCCが4.1V(標準)のスレッショルドを上回るとイネーブルになり、VCCが4.0V(標準)のスレッショルドを下回るとディスエーブルになります。遷移中のチャッタリングを避けるために、UVLOコンパレータによって0.1Vのヒステリシスを実現しています。UVLOスレッショルドは内部で固定され、調整はできません。電源電流ICCは26mA(最小)に制限され、VCCピンの短絡状況時にデバイスを保護しています。VCC電源は、内部回路とNチャネル・ゲート・ドライバ出力(GATEおよびDDRV)に電力を供給します。適切な動作を確保するためには、VCC出力とPGNDの間に2.2µF~4.7µFのバイパス・コンデンサを接続する必要があります。入力電圧VINが7.5Vを下回ると、レギュレータはドロップアウト状態で動作し、20mAの電源電流に対してVCCがVINよりも300mV低く設定されます。VCCは内部レギュレータのレギュレーション済み出力であり、外部電源によって駆動することは推奨しません。
TPS92691/-Q1のスイッチング周波数は、RT/SYNCピンとAGNDピンの間に接続した1個の外付け抵抗によってプログラミングできます。目的の周波数ƒSW(Hz)を設定するための抵抗値は、Equation 1で計算できます。
Figure 6に、スイッチング周波数と抵抗RTの関係をグラフで示しています。入力および出力電圧の動作範囲全体にわたって最適な性能を実現し、効率を最大限に高めるには、80kHz~700kHzのスイッチング周波数設定を推奨します。それより高いスイッチング周波数で動作する場合は、NチャネルMOSFETの特性を慎重に選択し、追加のスイッチング損失および接合部温度の上昇を考慮に入れる必要があります。
内部発振器は、RT/SYNCピンに外部クロック・パルスをAC結合して、同期させることができます(Figure 19を参照)。内部の同期パルス検出器で認識されるためには、RTピンに入力される同期クロックの立ち上がりエッジがRT同期スレッショルドを超え、同期クロックの立ち下がりエッジがRT同期立ち下がりスレッショルドを超える必要があります。外部同期パルスの周波数は、RT抵抗でプログラミングされる内部発振周波数の±20%以内とすることを推奨します。また、適切な同期のために、100nFの最小結合コンデンサおよび100nsの標準パルス幅を推奨します。外部同期クロックが失われた場合には、内部発振器がRT抵抗に基づいてスイッチング・レートを制御することにより、出力電流のレギュレーションを維持します。RT抵抗は、発振器が単独で動作しているか外部クロックと同期しているかに関係なく、常に必要です。
TPS92691/-Q1は、出力VGATEをVCCとPGNDの間でスイッチングするNチャネル・ゲート・ドライバを内蔵しています。500mAのピーク・ソース電流およびシンク電流により、MOSFETのゲートとドレインのノード電圧のスルーレートを制御し、スイッチングによって生じる伝導および放射EMIを制限します。ゲート・ドライバの電源電流ICC(GATE)は、MOSFETの合計ゲート駆動電荷(QG)およびコンバータの動作周波数ƒSWに依存します()。 接合部温度の上昇およびスイッチの遷移損失を制限するために、ゲート電荷仕様の低いMOSFETを推奨します。
NチャネルMOSFETデバイスを選択する際には、VINがVCCレギュレーション・レベルを下回るドロップアウト領域で動作する場合のスレッショルド電圧を考慮してください。7V未満の入力電圧でデバイスを動作させる必要がある場合には、スレッショルド電圧が5V未満の論理レベル・デバイスを推奨します。
内部のレール・ツー・レール電流センス・アンプは、0V~65Vのコモン・モード範囲にわたり、CSP入力とCSN入力の間の差動電圧降下に基づいて平均LED電流を測定します。差動電圧V(CSP-CSN)は、電圧ゲイン係数である14倍に増幅され、トランスコンダクタンス誤差増幅器の負入力に接続されます。推奨コモン・モード電圧範囲および温度範囲にわたって、累積入力オフセット電圧(電圧ゲイン誤差、固有電流センス・オフセット電圧、およびトランスコンダクタンス誤差増幅器のオフセット電圧の和)を5mV未満に制限することにより、正確なLED電流帰還が得られます。
Figure 20に示すように、コモン・モードまたは差動モードのローパス・フィルタをオプションで実装することにより、ダイオードの逆方向回復に起因する大きな出力電圧リップルやスイッチング電流スパイクの影響を平滑化できます。アンプのバイアス電流による追加のオフセットを制限し、最高の精度とライン・レギュレーションを実現するために、10Ω~100Ωの範囲のフィルタ抵抗を推奨します。
内部のトランスコンダクタンス誤差増幅器は、LED電流センス帰還電圧と外部のIADJ入力電圧との差に比例した誤差信号を生成します。誤差増幅器の出力に補償回路を接続することで、閉ループ・レギュレーションが実現されます。ほとんどのLEDドライバ・アプリケーションでは、COMP出力とグランドの間にコンデンサを接続して単純な積分補償回路を実装することにより、安定した応答を実現できます。適切な開始点として、10nF~100nFのコンデンサを推奨します。COMP出力とグランドの間に、直列抵抗とコンデンサから構成される比例積分補償回路を実装すると、より高い閉ループ帯域幅を実現できます。コンバータのトポロジに基づき、補償回路は最小60°の位相余裕と10dBのゲイン余裕が得られるよう調整する必要があります。「アプリケーションと実装」のセクションに詳細な式を示しています。
メインMOSFETの電流をIS入力ピンで監視することにより、ピーク電流モード制御を実装しています。GATE出力のデューティ・サイクルは、RIS抵抗で測定されるピーク・スイッチ電流を内部のCOMP電圧スレッショルドと比較することで得られます。デューティ・サイクルが50%を超える場合の低調波発振を防ぐため、測定されたセンス電圧VISに内部スロープ信号が加算されます。内部発振器の周波数に同期された100µAのノコギリ波ランプ電流から、固定された振幅(200mV)を持つリニアなスロープ電圧VSLが得られます。内部のブランキング回路を使用し、新しいスイッチング周期の開始後にIS入力を150nsにわたって内部でシャントすることにより、MOSFETのスイッチング電流スパイクの伝播およびデューティ・サイクルの早期終了を防いでいます。ドロップアウト領域(VIN < 7V)での動作中に追加のノイズを抑制するために、100Ω~500Ωの抵抗値を持つ外部ローパスRCフィルタの使用を推奨します。
内部の冗長コンパレータによってサイクル-バイ-サイクル電流制限が実現され、IS入力電圧VISが525mV(標準)のスレッショルドを超えると、GATE出力は直ちに停止されます。電流制限動作が発生すると、SSピンとCOMPピンが内部でグランドに接続され、コントローラの状態をリセットします。35µsの内部障害タイマが満了した後、GATE出力がイネーブルになり、SSピンを通して新しいスタートアップ・シーケンスが開始されます。
LED電流センス抵抗にかかる電圧V(CSP–CSN)は、電流センス・アンプ電圧のゲインである14が乗算されたアナログ調整入力電圧VIADJにレギュレーションされます。VCCからの分圧抵抗または外部の電圧源を使用してIADJの電圧を140mV~2.25Vの範囲で変化させることにより、LED電流を直線的に調整できます。外付け抵抗を通してIADJピンをVCCに接続すると、2.42Vの内部リファレンス電圧に基づいてLED電流を設定できます。Figure 21に、IADJ電圧を設定する各種の方法を示します。IADJ入力をNTC抵抗とともに使用することで、Figure 21(b)に示すような温度フォールドバック保護を実装できます。PWM信号を1次または2次ローパス・フィルタとともに使用すると、Figure 21(c)に示すようにIADJ電圧をプログラミングできます。
TPS92691/-Q1は、出力LED電流のパルス幅変調用に調光入力(PWM)を内蔵しています。PWM入力ピンに接続されたパルス電圧源のデューティ・サイクルを変調することで、LEDの輝度を直線的に変化させることができます。PWM入力を2.3V(標準)未満にすると、スイッチングがオフになり、発振器が一時停止し、COMPピンが切断されます。DDRV出力はGNDに設定され、補償回路および出力コンデンサの電荷が保持されます。PWM入力電圧の立ち上がりエッジ(VPWM > 2.5V)で、GATEおよびDDRV出力がイネーブルになり、インダクタ電流が以前の定常状態値まで増加します。COMPピンが接続されて誤差増幅器および発振器がイネーブルになるのは、スイッチ電流センス電圧VISがCOMP電圧VCOMPを上回ったときのみです。このときコンバータは直ちに、最小のLED電流オーバーシュートで強制的に定常状態動作を開始します。調光が不要である場合は、PWMピンをVCCに接続してください。ピンが未接続またはフローティングのときは、内部のプルダウン抵抗によって入力がLowに設定され、デバイスはディスエーブルになります。
DDRV出力は、PWM入力信号に追従します。また、ローサイドの直列接続Nチャネル調光FETを制御するために、最大500mAのピーク電流をシンクおよびソースできます。または、DDRV出力を外部のレベルシフト回路で変換することにより、ハイサイドの直列Pチャネル調光FETを駆動することもできます(Figure 22を参照)。直列調光FETは、PWM入力に対してLED電流の立ち上がりおよび立ち下がり時間を高速化することで、高いコントラスト比を実現します。調光FETを使用しないと、立ち上がりおよび立ち下がり時間がインダクタのスルーレートおよびシステムの閉ループ帯域幅によって制限されます。DDRVピンを使用しない場合は、未接続のままにしてください。
ソフト・スタート機能は、レギュレータを定常状態動作点へと徐々に到達させることで、スタートアップ時のストレスやサージを低減します。TPS92691/-Q1は、LED電流がレギュレーション・スレッショルドに近づくまでの間、COMPピンの電圧をSSピンの電圧(ダイオードで分離)へとクランプします。10µAの内部ソフト・スタート電流源によって、SSピンに接続された外付けソフト・スタート・コンデンサCSSの電圧が徐々に上昇します。その結果、COMP電圧はGNDからゆっくりと上昇します。
内部の10µA電流源は、VCCがUVLOスレッショルドを超えたときにオンになります。ソフト・スタート・シーケンスの開始時には、SSプルダウン・スイッチがアクティブになり、電圧VSSが25mVを下回ると解除されます。また、SSピンを外部スイッチでプルダウンしてスイッチングを停止させることもできます。SSピンを外部で駆動してスイッチングをイネーブルにする場合は、スタートアップ時に大きな過渡電圧が生じないように補償コンデンサを選択することで、COMPピンのスルーレートを制御する必要があります。CSSの値は、ソフト・スタートの遷移期間中に出力コンデンサを充電できるよう十分な大きさである必要があります。
IMONピンの電圧は、レール・ツー・レール電流センス・アンプによって外付けの電流シャント抵抗で測定されたLED電流を示しています。IMON電圧とLED電流の間には、アンプのゲイン係数である14を乗数とした直線的な関係があります(Figure 14を参照)。IMON出力を外部のマイコンやコンパレータに接続することで、プログラミング可能なスレッショルドVOCTHに基づき、LEDの開放、短絡、またはケーブル・ハーネス障害の検出と緩和が容易になります。IMON電圧は、内部で3.7Vにクランプされています。
TPS92691/-Q1デバイスは専用のOVPピンを搭載し、入力または出力の過電圧保護に使用できます。このピンには、20µA(標準)のヒステリシス電流を持つ1.24V(標準)の高精度スレッショルドがあります。過電圧スレッショルド制限は、入力または出力端子とGNDとの間の分圧抵抗回路によって設定されます。OVPピンの電圧がリファレンス・スレッショルドを超えると、GATEおよびDDRVピンが直ちにLowになり、SSおよびCOMPコンデンサが放電されます。電圧が低下し、20µAのソース電流と外付け分圧抵抗によって設定されるヒステリシス・スレッショルドを下回ると、GATEがイネーブルになり、新しいスタートアップ・シーケンスが開始されます。
最大接合部温度を超えた場合にコントローラを保護する目的で、内部に過熱シャットダウン回路が実装されています。この回路がアクティブになると(標準で175°C)、コントローラは強制的にシャットダウン・モードになり、内部レギュレータがディスエーブルになります。この機能は、デバイスの過熱や損傷を防ぐことを意図して設計されています。
このデバイスには、追加の機能モードはありません。