JAJA559B January   2018  – September 2024 ADS7044 , ADS7047 , ADS7054 , ADS7057

 

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  3.   商標
  4.   改訂履歴

入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS7057
Vin Min = –3.3V AINP = 0V
AINM = 3.3V
2000H
819210
Vin Max = 3.3V AINP = 3.3V
AINM = 0V
1FFFH
819110
電源
AVDD GND DVDD
3.3 V 0 V 1.8 V

設計の説明

この設計は、バイポーラ シングルエンド信号をユニポーラ完全差動信号に変換して、差動 ADC を駆動する回路を示しています (信号タイプの詳細については、TI プレシジョン ラボのトレーニング『SAR ADC Input Types』を参照してください)。シングルエンド デバイスに比べて、完全差動ADCではダイナミック レンジが2倍になるため、コンバータのAC性能が向上します。ソナー受信機流量計モーター制御といった多くの一般的なシステムに、高性能差動 ADC は適しています。本書の「部品選定」の式と説明は、各システムの仕様や要求に応じてカスタマイズできます。ユニポーラ入力信号を使用する類似設計の詳細については、クックブック『ユニポーラ入力用シングルエンド / 差動信号変換回路』を参照してください。

仕様

仕様 計算結果 シミュレーション結果
ADC過渡入力電圧セトリング(250ksps時) < 0.5 · LSB = 201µV 134.7µV
信号調整範囲(250ksps時) > 99% ADC FSR = > 6.53V 6.60 V
ノイズ 43.8µV / √Hz 44.3µV / √Hz

デザイン ノート

  1. 高スループット (2.5Msps)、小型 (2.25mm²)、待ち時間が少ない (逐次比較レジスタ (SAR) アーキテクチャ) という理由で、ADS7057 を選定しました。
  2. 同相、出力振幅、線形開ループ ゲインの仕様に基づいて、完全差動アンプ(ADCドライバ)の線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で述べます。
  3. 同相、出力振幅、線形開ループ ゲインの仕様に基づいて、オペアンプ(信号コンディショニング)の線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で述べます。
  4. 歪みを最小限に抑えるために、Cfilt には COG (NPO) コンデンサを選定します。
  5. 最高水準の性能を得るには、0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用して歪みを最小限に抑えます。
  6. TI プレシジョン ラボ - ADC トレーニング ビデオ シリーズでは、電荷バケツ回路の Rfiltx と Cfilt を選択する方法について解説しています。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。示されている値は、この例のアンプとデータ コンバータで適切なセトリングと AC 性能を実現します。設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選定する必要があります。最高水準のセトリングと AC 性能を実現する RC フィルタの選定方法については、『Introduction to SAR ADC Front-end Component Selection』(TI プレシジョン ラボのトレーニング ビデオ) を参照してください。

部品選定

  1. ADC を駆動できる完全差動アンプを選定します。
    THS4551 – 低ノイズ、高精度、150MHz、完全差動アンプ
    • 広い入力同相電圧範囲
    • 線形出力 (要件:各出力で 0V~3.3V)
  2. 広帯域オペアンプを選定します。
    OPA320 – 高精度、ゼロ クロスオーバー、20MHz、RRIO、オペアンプ
    • ゲイン帯域幅積: 12.5MHz超(サンプリング レートの5倍超)
    • 入力同相電圧 (要件:±1.65V):
    • 線形出力
    • 複合ワーストケース条件での線形範囲(OPA320とともに使用する電源から計算)
    注:

    オペアンプは、ADCとサンプリング コンデンサの接続/切断時に生じる電荷キックバックからセンサを保護するために使用します。センサの出力インピーダンスが高い場合、このアンプは不要になる可能性があります。センサが負レールで動作するという前提に基づき、OPA320とTHS4551にはいずれも負レールを使用します。これにより、全入力電圧範囲に対応して、ADC の性能を最大限に引き出すこともできます。

  3. Rfx と Rgx を選定します。
    • Rfx と Rgx の組み合わせにより、システムのゲインを設定します。±1.65Vの入力電圧範囲と±3.3VのADC全入力電圧範囲により、このシステムではゲインを2としました。
    • 希望ゲインを実現し、帰還回路を流れる電流を制限して、システムの消費電力を最小限に抑えるために、Rfx= 2k、Rgx= 1k という値を選定しました。
  4. Rsx を選定します。
    • 出力インピーダンスを平坦にしてシステムの安定性を高めるために、アンプの出力に小さい抵抗 (この場合は 10Ω) を接続することが重要です。
  5. 250kHz 入力信号のセトリングと 2.5Msps のサンプル レートを実現する Rfiltx と Cfilt の値を選定します。
    • TI プレシジョン ラボのビデオ『Refine the Rfilt and Cfilt Values』では、Rfilt と Cfilt の選定方法を説明しています。最終的に、18.2Ω と 330pF という値で、アクイジション時間内に最下位ビット (LSB) の 1/2 を優に下回るまでセトリングできることが分かりました。

DC 伝達特性

以下のグラフは、±1.65Vの入力に対する出力のシミュレーション結果を示しています。アナログ フロントエンドの線形出力範囲は±3.3Vであり、ADC(AVDD=3.3V使用)の入力電圧範囲(FSR)と一致しています。

AC 伝達特性

アナログ フロントエンドの帯域幅のシミュレーション結果は、利得0dBで4.12MHzであることから、線形利得は1となります。この帯域幅により、250ksps の入力信号で ADC の入力は十分に安定化できます。

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションは、ADC のサンプル / ホールド コンデンサによる 3.3V DC 入力信号のセトリングを示しています。このシミュレーションは、アナログ フロントエンドには大きなステップ入力 (0V~3.3V) で ADC を駆動する能力があるため、割り当てられたアクイジション時間 (95ns) で LSB の 1/2 (約 200µV) 以内に ADC を安定化できることを示しています。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。また、これらのシミュレーション ファイルをダウンロードするには、巻末のリンクをクリックしてください。

ノイズ シミュレーション

ここでは簡易なノイズ計算を行って概算値を出し、シミュレーション結果と比較します。抵抗ノイズはシステム全体のノイズの大部分を占めるため、抵抗ノイズをこの計算に入れます。なお、抵抗ノイズは抵抗値を小さくすることによって低減できますが、代償として、帰還回路での消費電力は増加します。

計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。この件の詳しい理論については、TI プレシジョン ラボ - ADC トレーニング ビデオ シリーズを参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS7057 14 ビット、2.5Msps、完全差動入力、SPI、2.25mm2 パッケージ www.ti.com/product/ADS7057 www.ti.com/adcs
THS4551 150MHz、入力電圧ノイズ:3.3nV/√Hz、完全差動アンプ www.ti.com/product/THS4551 www.tij.co.jp/opamp
OPA320 高精度、ゼロ クロスオーバー、20MHz、0.9pA Ib、RRIO、オペアンプ www.ti.com/product/OPA320 www.tij.co.jp/opamp
注:

ADS7057はAVDDを入力基準電圧として使用します。TPS7A47 などの高 PSRR LDO を電源として使用してください。

設計の参照資料

テキサス・インスツルメンツの総合的な回路ライブラリについては、『アナログ エンジニア向け回路クックブック』を参照してください。

主要なファイルへのリンク (TINA)

この回路の設計ファイル – http://www.ti.com/lit/zip/sbac181