JAJA563B February   2018  – September 2024 ADS7040 , ADS7041 , ADS7042 , ADS7056

 

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入力 ADC 入力 デジタル出力 ADS7042
VinMin = 0V

AIN_P = 0V、AIN_M = 0V

000H または 010
VinMax = 3.3V

AIN_P = 3.3V、AIN_M = 0V

FFFH または 409610
電源
AVDD Vee Vdd
3.3 V 0V 4.5V

設計の説明

この設計は、動作時消費電力がわずかnW単位のSAR ADCの駆動に用いる超低消費電力アンプを示しています。この設計は、システム レベルの消費電力をわずか数µWに抑えることができ、センサ データの収集に適しています。この SAR ADC 設計を活用できる実装の例として、PIR センサガス センサ血糖モニタが挙げられます。「部品選定」の値を調整して、さまざまなデータ スループット レート、さまざまな帯域幅のアンプを実現できます。低消費電力センサ測定:3.3V、1ksps、12 ビット、シングルエンド、デュアル電源では、負電源を小さい負電圧 (-0.3V) に接続する、この回路の高性能版を示しています。単一電源版では、アンプの出力が0Vに近くなると性能が低下します。ただし、ほとんどの場合、シンプルであるため単一電源構成の方が好まれます。

Data Converters

仕様

仕様 計算結果 シミュレーション結果 測定結果
ADC 過渡入力電圧セトリング (1ksps) < 0.5×LSB = 402µV 41.6µV 該当なし
AVDD消費電流(1ksps) 230nA 該当なし 214.8nA
AVDD消費電力(1ksps) 759nW 該当なし 709nW
VDD OPAMP消費電流 450nA 該当なし 431.6nA
VDD OPAMP消費電力 2.025µW 該当なし 1.942µW
AVDD + VDDシステム消費電力(1ksps) 2.784µW 該当なし 2.651µW

デザイン ノート

  1. 同相、出力振幅、線形開ループ ゲインの仕様に基づいて、オペアンプの線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で説明します。
  2. 歪みを最小限に抑えるために、COGコンデンサを選定します。
  3. 歪みを最小限に抑えるために、0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用します。
  4. TI Precision Labs – ADCs』トレーニング ビデオ シリーズで、電荷バケツ回路 Rfilt と Cfilt の選定方法について説明しています。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示されている値を使用すると、この例のアンプとデータ コンバータで適切なセトリングと AC 性能が得られます。この設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選定する必要があります。最良のセトリングと AC 性能を実現する RC フィルタの選定方法については、『SAR ADC フロント エンド コンポーネント選定の概要』トレーニング ビデオを参照してください。

部品選定

  1. 低消費電力オペアンプを選定します。
    • 消費電流: 0.5µA未満
    • ゲイン帯域幅積: 5kHz超(サンプリング レートの5倍)
    • ユニティ ゲイン安定
    • このクックブックでは、LPV811を選定しました。LPV811は消費電流450nA、ゲイン帯域幅積8kHz、ユニティ ゲイン安定を特長としています。
  2. 線形動作に対応するオペアンプの最大/最小出力を求めます。
    V ee + 0 V < V out < V dd - 0 . 9 V   from LPV811 Vcm specification
    V ee + 10 mV < V out < V dd - 10 mV   from LPV811 Vout swing specification
    V ee + 0 . 3 V < V out < V dd - 0 . 3 V   from LPV811 Aol linear region specification
    0 . 3 V < V in < 3 . 4 V     Combined worst case
    注: LPV811の線形範囲はGNDから300mVです。つまり、0V~3.3V (ADS7042 のフルスケール範囲 (FSR)) のフル線形範囲を保証するようにシステムを設計するには、負電源が必要です。この設計は、負電源電圧を使用せずに全測定結果でADS7042のSNRとTHDの仕様を満たすことを示しています。このテストは室温のみで、より堅牢なシステムで行われました。『低消費電力センサ測定:3.3V、1ksps、12 ビット シングルエンド、デュアル電源』では、この設計でグランドの代わりに負電源を使用する例を示しています。
  3. 推定値による標準消費電力計算(1ksps時)。
    P AVDD = I AVDD_Avg × AVDD = 230 nA × 3 . 3 V = 759 nW
    P LPV 811 = I LPV 811 × ( V dd - V ee ) = 450 nA × ( 4 . 5 V - 0 V ) = 2 . 025 μW
    P total = P AVDD + P LPV 811 = 759 nW + 2 . 025 μW = 2 . 794 μW
  4. 測定値による標準消費電力計算(1ksps時)。
    P AVDD = I AVDD_Avg × AVDD = 214 nA × 3 . 3 V = 709 nW
    P LPV 811 = I LPV 811 × ( V dd - V ee ) = 431 . 6 nA × ( 4 . 5 V - 0 V ) = 1 . 942 μW
    P total = P AVDD + P LPV 811 = 709 nW + 1 . 942 μW = 2 . 651 μW
  5. 1kspsでセトリングを実現するRfiltとCfiltを求めます。『Rfilt 値と Cfilt 値の微調整』(Precision Labs のビデオ) では、Rfilt と Cfilt を選定するアルゴリズムを示しています。最終的に200kΩと510pFという値で、最下位ビット(LSB)の1/2を優に下回るまでセトリングできることが分かりました。

DC 伝達特性

以下のグラフは、0~3.3Vの入力に対する線形出力応答を示しています。ADCの入力電圧範囲(FSR)はオペアンプの線形範囲内に収まっています。

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AC 伝達特性

帯域幅シミュレーションは、アンプの出力インピーダンスと RC 電荷バケツ回路 (Rfilt と Cfilt) の影響を含んでいます。次の式に示すように、RC 回路の帯域幅は 1.56kHz です。2kHzという帯域幅のシミュレーション結果は、負荷のインピーダンスと相互作用する出力インピーダンスの影響を含んでいます。この件の詳細については、『TI Precision Labs - オペアンプ:帯域幅 1』を参照してください。

f c = 1 2 · π · R filt · C filt = 1 2 · π · ( 200 ) · ( 510 pF ) = 1 . 56 k Hz
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ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションは、3V DC入力信号へのセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、LSBの1/2 (402µV)以内になるようにサンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。

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ノイズ シミュレーション

ここには概算用の簡易なノイズ計算を記載します。抵抗のノイズは 10kHz を超える周波数で減衰するため、この計算では無視します。

f c = 1 2 · π · R filt · C filt = 1 2 · π · ( 200 ) · ( 510 pF ) = 1560 . 3 Hz
E n = e n 811 × 2 × K n × f c = ( 340 nV / Hz ) × 1 . 57 × ( 1560 Hz ) = 16 . 8 μV

計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

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FET 測定

この性能は、ADS7042EVM-PDKに変更を加えて測定しました。AC性能はSNR=70.8dB、THD=-82.7dB、ENOB (有効ビット数)=11.43であることを示しており、ADCの性能仕様: SNR=70dBとよく一致しています。

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使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS7042(1) 分解能: 12ビット、SPI、サンプル レート: 1Msps、シングルエンド入力、AVDD、Vref入力電圧範囲: 1.6V~3.6V SPI 搭載の 12 ビット 1MSPS 超低消費電力、超小型 SAR ADC ADCS
LPV811(2) 帯域幅 8kHz、レール ツー レール出力、消費電流 450nA、ユニティ ゲイン安定 シングルチャネル、450nA、高精度、ナノパワー オペアンプ オペアンプ
ADS7042はAVDDを入力基準電圧として使用します。TPS7A47 などの高 PSRR LDO を電源として使用できます。
LPV811は低速センサ用途にもよく使用されます。さらに、レール ツー レール出力により、ADCの全入力電圧範囲にわたって線形振幅を実現します。

主要なファイルへのリンク

テキサス・インスツルメンツ、LPV811 TINA ファイル、ソフトウェア ダウンロード