JAJA567B February   2018  – September 2024 ADS8912B , OPA197 , REF5045 , THS4551

 

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入力電圧(OPA197バッファ) THS4551出力、ADC入力 ADS8912Bデジタル出力
VinP = –12V、VinN = +12V、VinMin (Dif) = –24V VoutDif = -4.00V、VoutP = 0.25V、VoutN = 4.25V 238E3H -11650910
VinP = +12V、VinN = –12V、VinMax (Dif) = +24V VoutDif = +4.0V、VoutP = 4.25V、VoutN = 0.25V 1C71CH +11650810
電源および基準電圧
HVDD HVSS Vcc Vee Vref Vcm
+15V -15V +5.0V 0V +4.5 V 2.5V

設計の説明

このアナログ フロントエンド(AFE)+SAR ADCデータ収集ソリューションは、±24Vの電圧範囲(または絶対入力電圧範囲VinP=±12V、VinN=±12V)で真の差動電圧信号を測定でき、高入力インピーダンスを実現し、最高500kspsのデータ レートと18ビットの分解能に対応します。入力バイアス電流が小さい高精度の36Vレール ツー レール アンプにより、完全差動アンプ(FDA)の入力をバッファできます。FDAは信号を減衰してSAR ADCの差動電圧/同相電圧範囲にシフトします。「部品選定」の値を調整して、さまざまな入力電圧レベルを実現できます。

この回路は、パラメトリック測定ユニット (PMU)高精度マルチファンクション入力および出力 DAQ、およびプログラマブル オートメーション コントローラ (PAC)、ディスクリート制御システム (DCS)、プログラマブル ロジック コントローラ (PLC) アプリケーションで使用するアナログ入力モジュールでの真の差動電圧の正確な測定に使用します。

仕様
仕様 目標 計算結果 シミュレーション結果
ADC 過渡入力電圧セトリング (500ksps) << 1 LSB、<< 34µV 該当なし 0.5µV
ADC 入力でのノイズ 10µVRMS 9.28µVRMS 9.76µVRMS
帯域幅 1.25MHz 1.25MHz 1.1MHz

デザイン ノート

  1. 線形動作に対応する同相、出力振幅の仕様に基づいて、オペアンプ(バッファ)の線形範囲を特定します。これについては「部品選定」で説明します。入力バイアス電流の小さいアンプを選定します。
  2. ADCの全入力電圧範囲と同相電圧範囲の仕様を特定します。これについては「部品選定」で述べます。
  3. 入力信号振幅、ADCの全入力電圧範囲、FDAの出力振幅の仕様に基づいて、FDAに必要な減衰量を特定します。これについては「部品選定」で説明します。
  4. 歪みを最小限に抑えるために、COGコンデンサを選定します。
  5. 適切な精度と低ゲイン ドリフトを実現し、歪みを最小限に抑えるために、0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用します。
  6. Understanding and Calibrating the Offset and Gain for ADC Systems』で、誤差解析の方法を説明しています。ゲイン、オフセット、ドリフト、およびノイズの誤差を最小限に抑える方法については、リンク先をご覧ください。
  7. Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』(英語) で、電荷バケツ回路 Rfilt と Cfilt の選定方法を説明しています。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示す値は、この例のアンプ、ゲイン設定、データ コンバータで適切なセトリングとAC性能を実現します。設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選定する必要があります。最高水準のセトリングと AC 性能を実現する RC フィルタの選定方法については、「プレシジョン ラボ」のビデオを参照してください。

部品選定とバッファ アンプおよび FDA の設定

  1. 線形動作に対応するバッファ アンプの入力電圧範囲を特定します。
  2. 線形動作に対応するバッファ アンプの出力電圧範囲を特定します。
  3. ADCの全入力電圧範囲を求めます。この回路では、VREF = 4.5V です。
  4. 必要なADC同相電圧を特定します。
  5. 線形動作に対応するFDAの絶対出力電圧範囲を特定します。
  6. 線形動作に対応するFDAの差動出力電圧範囲を特定します。この回路の一般出力電圧式は次のとおりです。
  7. FDAの差動入力電圧範囲を求めます。
  8. FDAに必要な減衰率を求めます。
  9. この減衰率を設定するための標準抵抗値を求めます。
  10. カットオフ周波数 ƒc、RfINA = 1kΩ での Cƒ を求めます。

DC 伝達特性

以下のグラフは、+24V~-24Vの差動入力に対する線形出力応答を示しています。

AC 伝達特性

帯域幅のシミュレーション結果は約1.1MHzで、ゲインは-15.62dBであることから、線形ゲインは約0.166V/V (減衰率6.04V/V)となります。

ノイズ シミュレーション

計算結果とシミュレーション結果はよく一致しています。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

安定性シミュレーション

以下の回路をTINAで使用し、TINAのAC伝達解析を用いてループ ゲインを測定し、位相マージンを特定します。帰還ループ内に抵抗 RISO = 10Ω を使用して、位相マージンを増やします。この回路には45°の位相マージンがあります。この件の詳しい理論については、『TI Precision Labs - Op Amps: Stability 4』(英語) を参照してください。

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下のシミュレーションは、+12Vおよび-12Vに設定したOPA197バッファ入力による24V DC差動入力信号へのセトリングを示しています。このようなシミュレーションは、サンプル/ホールド キックバック回路が適正に選定されていることを示します。この件の詳しい理論については、『Rfilt 値と Cfilt 値をリファイン』を参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ADS8912B(1) 分解能: 18ビット、サンプル レート: 500ksps、基準電圧バッファ搭載、完全差動入力、Vref入力電圧範囲: 2.5V~ 5V VREF バッファ、LDO、強化 SPI インターフェイス搭載、18 ビット、1MSPS、1 チャネル SAR ADC A/D コンバータ (ADC)
THS4551 FDA、150MHz の帯域幅、レール ツー レール出力、VosDriftMax = 1.8µV/℃、en = 3.3nV/rtHz 低ノイズ、高精度、150MHz 完全差動アンプ オペアンプ
OPA197 36V、帯域幅: 10MHz、レール ツー レール入出力、VosMax = ±250µV、VosDriftMax = ±2.5µV/℃、バイアス電流 = ±5pA シングル、36V、高精度、レール ツー レール入出力、低オフセット電圧オペアンプ オペアンプ
REF5045 VREF = 4.5V、ドリフト: 3 ppm/℃、初期精度: 0.05%、ノイズ: 4µVpp/V 4.5V、3μVpp/V のノイズ、3ppm/℃のドリフト高精度シリーズ電圧リファレンス シリーズ電圧リファレンス
ADS8912Bには基準電圧バッファが内蔵されているため、バッファなしでREF5045を直接接続できます。また REF5045 は、高精度 SAR アプリケーションで必要とされる低ノイズ 低ドリフトという特長を備えています。THS4551はSAR ADCの電圧範囲への減衰および同相レベル シフトを実現します。また、このFDAはADC入力サンプリングによる電荷のキックバック過渡電圧を安定化するのに十分な帯域幅を備えているため、高速かつ高精度の完全差動SARによく使用されています。OPA197は36Vオペアンプで、超高入力インピーダンスのフロントエンドを実現して、FDA入力をバッファリングします。

主要なファイルへのリンク

テキサス・インスツルメンツ、『SBAC183 ソース ファイル』、ソフトウェア サポート