JAJA650A December   2018  – June 2024 ADS7142 , ISO224 , TLV9002

 

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  3.   商標

ISO224 入力電圧 ISO224 出力 (VOUTP – VOUTN) ADS7142 入力 (擬似差動) ADS7142デジタル出力
12V 4V 3.3V FFFH
-12V -4V 0V 000H
電源および基準電圧
VDD1 VDD2 および Vcc AVDD GND
4.5V~18V 5V 3.3V 0V

設計の説明

この回路は、ISO224 絶縁アンプ、TLV9002 オペアンプ、ADS7142 SAR ADC を活用して ±12V の絶縁電圧センシング測定を行います。ISO224 は ±12V のシングルエンド信号を ⅓V/V の固定ゲインで測定し、VDD2/2 の出力同相電圧で ±4V 絶縁差動出力電圧を生成できます。TLV9002 のチャネル 1 は、ADS7142 の入力範囲に合わせて ISO224 の出力をコンディショニングし、チャネル 2 は ISO224 のフェイルセーフ出力を監視します。ADS7142 は、フルスケール入力と AVDD 基準電圧の範囲が 1.65V~3.6V である 2 チャネル ADC です。このクックブック回路では ADS7142 の 2 チャネル入力を疑似差動構成で使用し、正と負の両方の信号を ISO224 で測定できます。この回路は、列車制御 / 管理システムアナログ入力モジュールインバータとモーター制御など、多くの産業用高電圧アプリケーションに適用できます。本書の「部品選定」の式と説明は、各システムの仕様や要件に応じてカスタマイズできます。

仕様

仕様 計算結果 シミュレーション結果
140kSPS での ADC 過渡入力電圧セトリング 403µV 88µV
コンディショニングされた信号の範囲 0V~3.3V 0V~3.3V
入力でのノイズ 262µVRMS 526µVRMS
閉ループ帯域幅 175kHz 145kHz

デザイン ノート

  1. 広い入力範囲、柔軟な電源構成、高い精度が理由で、ISO224 を選択しました。
  2. 超低消費電力、高集積、柔軟な電源構成、小さなサイズが理由で、ADS7142 を選択しました。
  3. コスト最適化、構成オプション、小さなサイズが理由で、TLV9002 オペアンプを選択しました。
  4. AVDD、VCM、ADC の同相電圧を設定する AINN への疑似差動入力には、低インピーダンスかつ低ノイズの電源を選択します。
  5. ADC のフルスケール範囲と同相の仕様を特定します。これについては「部品選定」で述べます。
  6. 歪みを最小限に抑えるため、CFILT には C0G コンデンサを選択します。
  7. 最良の性能を得るため、RFILT1,2 には 0.1% 20ppm/℃以下の薄膜抵抗を使用して、歪みを最小限に抑えることを考慮します。
  8. Understanding and Calibrating the Offset and Gain for ADC Systems』で、誤差解析の方法を説明しています。ゲイン、オフセット、ドリフト、およびノイズの誤差を最小限に抑える方法については、リンク先をご覧ください。
  9. TI プレシジョン ラボ - ADC トレーニング ビデオ シリーズでは、電荷バケツ回路の RFILT と CFILT を選択する方法について解説しています。これらの部品の値はアンプの帯域幅、データ コンバータのサンプリング レート、データ コンバータの設計に依存します。ここに示す値は、この例のアンプとデータ コンバータで適切なセトリングと AC 性能を実現します。設計を変更する場合は、別の RC フィルタを選定する必要があります。最高水準のセトリングと AC 性能を実現する RC フィルタの選定方法については、『Introduction to SAR ADC Front-End Component Selection』を参照してください。

部品選定

  1. 入力電圧範囲に基づいて絶縁アンプを選択し、出力同相電圧および出力電圧の範囲を決定します。

    ISO224 の電源には、ハイサイド電源に 4.5V~18V、ローサイド電源に 4.5V~5.5V が使えます。ISO224 のシングルエンド入力範囲は ±12V、ゲインは ⅓V/V 固定であるため、この例では同相電圧 VDD2 / 2 (2.5V) で ±4V の差動出力が得られます。

    ± 12 V I N , S i n g l e - E n d e d 3 = ± 4 V O U T , D i f f e r e n t i a l   a t   2.5 V V D D 2 2   c o m m o n - m o d e
  2. サイズが小さく低消費電力の ADC を選択します。

    ADS7142 は、疑似差動構成で使用できる小型低消費電力の 2 チャネル ADC です。最大入力範囲は基準電圧により設定され、この例では AVDD (3.3V) と同じです。

    A D C F u l l - S c a l e   R a n g e =   V R E F = A V D D = 3.3 V

    疑似差動測定に必要な ADC 同相電圧を求めます。

    V C M = V R E F 2 = 1.65 V
  3. ISO224 の ±4V 差動、2.5V 同相出力を、ADS7142 の 3.3V 疑似差動、1.65V 同相入力に変換できるオペアンプを選択します。また、ISO224 のフェイルセーフ出力機能を監視できる 2 番目のチャネルを備えたオペアンプを選択することを推奨します。

    TLV9002 は、コストの制約が厳しい小型アプリケーション用に最適化された 2 チャネル、レール ツー レール入出力アンプです。

    チャネル 1 を使用して、ISO224 の ±4V 差動、2.5V 同相出力を、1.65V の同相電圧で 3.3V ピークの疑似差動出力に変換します。R1 = R4 かつ R2 = R3 の場合、伝達関数は次の式で設定されます。

    V O U T = V O U T P R 4 R 3 + V O U T N R 1 R 2 + V C M

    この信号は ±4V から 3.3V に変換する必要があります。すなわち、信号を 3.3V/±4V = 3.3V/8V の割合で減衰させる必要があります。前に計算した値 (1.65V) を VCM に代入し、R2 と R3 を 10kΩ に設定すると、次の式が得られます。

    3.3 V = 4 V R 4 10 k Ω + 1.65 V                           0 V = - 4 V R 1 10 k Ω + 1.65 V

    R1 と R4 についてこの式を解くと、4.125kΩ の値が得られます。

    このトピックの詳細については、『差動出力 (絶縁) アンプのシングルエンド入力 ADC への接続』アプリケーション ブリーフを参照してください。

    TLV9002 のチャネル 2 は、ISO224 のフェイルセーフ出力機能の監視に使用します。ISO224 のフェイルセーフ出力機能は、VIN ピンの入力信号にかかわらず、ハイサイド電源 (VDD1) が失われると常に有効になります。TLV9002 のチャネル 2 の出力 (VCOMP) はシステム コントローラの GPIO ポートに入力され、フェイルセーフ出力機能が有効な場合常に High に移行します。詳細については、『フェイルセーフ出力機能』アプリケーション ノートを参照してください。

  4. 入力信号のセトリングと 140kSPS のサンプル レートに合わせて R1FILT、R2FILT、CFILT を選択します。

    TI Precision Labs のビデオ『Refine the RFILT and CFILT Values』では、RFILT とCFILT の選定方法を説明しています。最終的に、1.1kΩ と 330pF という値で、アクイジション時間内に最下位ビット (LSB) の 1/2 を優に下回るまでセトリングできることが分かりました。

DC 伝達特性

次のグラフに、ISO224 への ±15V 入力信号による TLV9002 および ADS7142 への入力のシミュレーション結果を示します。最初のグラフに、ISO224 の ±VIN/3 のリニア出力と TLV9002 の入力を示します。2 番目のグラフに、TLV9002 がゲインをさらに VIN/2.43 に減少させ、同相電圧が 1.65V にシフトすることを示します。その結果、AVDD = VREF = 3.3V の場合、フルレンジ ±12V の入力信号で ADC の 0V~3.3V のフルスケール範囲 (FSR) を活用できます。

以下の伝達関数は、ISO224 と TLV9002 のゲインが 1/7.28V/V であることを示しています。

G a i n I S O 224 × G a i n T L V 9002 × V I N = V O U T
1 3 × 1 2.43 × 12 V = 1 7.28 × 12 V = 1.65 V

AC 伝達特性

信号チェーンの帯域幅のシミュレーション結果は約 145kHz、ゲインは -17.25dB であり、線形ゲインは約 0.137V/V (減衰率 1/7.28V/V) です。これは、システムのゲインの期待値と一致しています。

ADC 過渡入力電圧セトリング シミュレーション

以下に、アクイジション時間が 5.3μs のときの過渡セトリングのシミュレーション結果を示します。88μV のノイズは、0.5 × LSB の制限である 403μV 内に十分収まっています。この件の詳しい理論については、『Refine the Rfilt and Cfilt Values』を参照してください。

ノイズ シミュレーション

ADC の入力でのノイズのシミュレーション結果は、計算された期待値を上回っています。この差は、シミュレーション モデルでのノイズのピーキングが計算に含まれていないことが原因です。以下の式は、信号チェーンでは ISO224 のノイズが支配的で、TLV9002 からのノイズは無視できることを示しています。この件の詳しい理論については、『Calculating the Total Noise for ADC Systems』を参照してください。

E n = G a i n ( e n ) = 1.57 × B W
E n I S O 224 A = 1 3 × 1 2.43 4 μ V H z × 1.57 × 145 k H z = 262 μ V R M S
E n T L V 9002 = 1 2.43 27 n V H z × 1.57 × 145 k H z = 5 μ V R M S
E n I S O 224 A + T L V 9002 = E n I S O 224 A + E n T L V 9002 = 262 2 μ V R M S + 5 2 μ V R M S = 262 μ V R M S

設計の参照資料

テキサス・インスツルメンツの総合的な回路ライブラリについては、『アナログ エンジニア向け回路クックブック』を参照してください。

主要なファイルへのリンク

絶縁設計の TINA ファイル:SBAC226 を参照してください。

使用デバイス

デバイス 主な特長 リンク 類似デバイス
ISO224 ±12V のシングルエンド入力範囲、⅓ の固定ゲイン、±4V の差動出力を生成、出力同相電圧 2.5V、ハイサイド電源 4.5V~18V、ローサイド電源 4.5V~5.5V、入力オフセット:25℃で ±5mV、最大値 ±42µV/℃、ゲイン誤差:25℃で ±0.3%、最大値 ±50ppm/℃、非直線性:最大値 ±0.01%、±1ppm/℃、1.25MΩ の高入力インピーダンス。 ISO224 www.ti.com/isoamps
ADS7142 デュアル チャネル、フルスケール入力スパンと基準電圧を AVDD により設定、デフォルト 12 ビットの性能、高精度モードで 16 ビットの性能、600SPS において 0.45µA の非常に低い消費電流。 ADS7142 https://www.ti.com/PrecisionADCs
TLV9002 デュアル チャネル、レール ツー レール入出力アンプ、2727nV/√Hz の低い広帯域ノイズ、±0.04mV の低い入力オフセット電圧。 TLV9002 https://www.ti.com/opamps