JAJA739 November 2022 LMK6C , LMK6D , LMK6H , LMK6P
BAW は微小共振器技術の 1 つであり、高精度かつ超低ジッタのクロックを他の回路と共にパッケージ内に直接統合できます。BAW 発振器内では、BAW 共振器は、一緒に配置された高精度温度センサ、超低ジッタ低消費電力の分数出力分周器 (FOD)、シングルエンド (LVCMOS (LMK6C)) および差動 (LVPECL (LMK6P)、LVDS (LMK6D)、HCSL (LMK6H)) 出力ドライバ、複数の低ノイズ LDO で構成された小規模な電源 / リセット / クロック管理システムと統合されています。
図 1-1 に、BAW 共振器技術の構造を示します。この構造には、金属の薄膜と、機械的エネルギーを閉じ込めるその他の層との間に挟まれた圧電性材料の薄い層が含まれます。BAW 共振器は、この圧電変換を利用して振動を生成します。
BAW 発振器は、既存の多くの光学モジュール・システムの一般的な発振器をそのまま置き換えるために使用できます。差動バリアント (LMK6P/D/H) の 125fs 以下というジッタ性能は、最大 800G の高速光ファイバ・アプリケーションで BAW を使用することを可能にします。図 1-3 に、156.25MHz での BAW 発振器の位相ノイズ性能を示します。LMK6 ファミリは分数出力分周器を内蔵しているため、1~400MHz の任意の出力周波数を生成できます。光モジュールで通常使われているすべての周波数 (156.25MHz、161.1328125MHz、312.5MHz、322.265625MHz など) に対応しています。
図 1-2 に、光モジュール・システムの代表的なブロック図を示します。BAW 発振器は主に、PAM4 DSP の内蔵 SerDes にクロックを供給するために使用されます。この場合、データの完全性を最大限に高めるため、高性能のクロック駆動が求められます。BAW 発振器は、各種の周波数、出力形式、電圧レベルに柔軟に対応できるため、クロック供給のための代替手段として全体システムのあらゆる場所でも使うことができます。BAW 発振器は、現在市販されている高性能発振器の大部分と完全にピン互換です。
LMK6 ファミリの差動出力バリアントは 125fs 以下のジッタ性能を達成しており、800G 光ネットワークとその他の高性能アプリケーションに理想的な選択肢です。さらに、HCSL 出力段を備えた LMK6H は PCIE Gen 1~6 のすべての要件を満たしています。HCSL を使わない設計では、LMK6C/P/D が PCIE Gen 6 のすべてのジッタ要件を満たしています。
LMK6 ファミリは、1.8V、2.5V、3.3V の電源電圧を使って、設定可能な 4 種類の出力形式 (LVCMOS、LVPECL、LVDS、HCSL) で、1MHz~400MHz の任意の出力周波数を生成できます。コンパクトな基板設計のスペースを節約するため、DLE (3.2mm × 2.5mm) および DLF (2.5mm × 2mm) パッケージで供給されます。LMK6 BAW 発振器では、電源のフィルタリングのために必要な外付け部品は 1 つのコンデンサのみですが、水晶発振器では最大 4 つの外付け部品が必要とされる場合があります。
BAW 発振器は最大 105℃の温度に耐え、競合する水晶発振器ソリューションよりも 20~30 長い MTBF (平均故障間隔) を特長としています。BAW 発振器はその寿命を通じて、すべての経時および環境要因を含めて、±25ppm の周波数安定性を保証しています。BAW 発振器は動作温度範囲全体で ±10ppm の周波数安定性を達成しています。これは、従来の水晶振動子を使った発振器よりも大幅に優れた値です。