通常、人間のバイタルサインは、従来は患者の体にコードで接続されたモニタリング・システムを通して測定し、心電図と酸素飽和度センサを組み合わせて心拍数と呼吸数を報告しています。これらのセンサは、新生児や重度のやけどを負った患者、てんかんの患者や精神科の患者に常に接触させておくことは難しい場合があります。動ける患者にとって、日常生活を送りながらバイタルサインを監視することは困難です。
ミリ波 (mmWave) レーダー・センサは、患者の胸部の動きのような、非常に微細な動きも検出できます。胸部の動きは呼吸 (基本周波数) と心拍数の動き (追加の高調波) に影響されるため、胸部の動きの微細な測定によりバイタルサインを非接触に測定することが可能となります。
この機能の一番の成功要因は、患者の胸部の位置と速度を周波数変調連続波 (FMCW) センシングと複数の入出力 (MIMO) アンテナ・レーダー・システムを組み合わせて検出するセンサ能力です。
このセンサはベッドの動きも検出できるため、介護者に床擦れの可能性を通知したり、高齢の夫婦など、複数の患者を同時に監視することも可能です。また、ミリ波センサは、人の転倒を検出して、介護者にリアルタイムに通知することもできます。
FMCW システムにおいて、測定の精度と再現性を保証するパラメータの 1 つは、チャープの傾斜の直線性です。モノリシック・マイクロ波 IC にアナログ・チェーンを統合することにより、耐用年数まであらゆる温度帯におけるモニタリングとキャリブレーションを効率的に実行できるため、設計ごとのばらつきが減少するだけでなく、測定の直線性全体が向上します。
図 1 のテキサス・インスツルメンツ (TI) の IWR6843 のブロック図を参照すると、トランスミッタ - レシーバ・セクションの唯一の外付け部品は、標準的な 40MHz の水晶振動子だけであることがわかります。この外付け 40MHz 水晶振動子に加えて、IWR6843 は次のような完全なトランスミッタ - レシーバ統合機能を提供します。
また、IWR6843 には、次のようなトランスミッタとレシーバ向けの完全高周波 (RF) チェーンも搭載されています。
MMIC システム・オン・チップに完全な RF チェーンを統合することにより、機能安全に必要な診断能力を実現します。
IWR6843 には、以下の完全なデジタル信号チェーン処理が統合されています。
ダイレベルの統合に加えて、IWR6843 の派生製品である IWR6843AOP には、パッケージにアンテナが付属しており、空間に制約のあるアプリケーション用や、RF 信号の PCB 配線が困難な場合でも、プリント基板 (PCB) の面積を縮小することで、より統合性を高めています。