JAJT281A January   2024  – September 2024 UCC28750

 

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    1.     産業用アプリケーションの補助フライバック電源
    2.     効果的な補助電源設計を実現
    3.     まとめ
    4.     その他の資料

‌Mujtaba Saeed

電力変換の状況は常に変化しています。高電圧化、信頼性の確保、効率化が最重要課題となっているので、補助電源のような装置に対してますます厳格な条件が課されています。多くの場合、 DC バスや AC グリッドからの電圧を内部の DC 電力レールに変換するフライバックという形態を採用しています。

この記事では、産業用アプリケーションの基本機能について説明し、この機能を実現するための補助電源の重要性や、効果的な産業用補助電源を設計するうえでテキサス・インスツルメンツの新しい UCC28750 フライバック コントローラを活用する方法を説明します。

産業用アプリケーションの補助フライバック電源

ソーラー ストリング インバータは、太陽光パネルから生成された DC 電圧を AC グリッド電力に変換します。この変換を実施するために、インバータ システムは複数の電力変換段を使用しています。最初の段は DC/DC 段であり、太陽光パネルのストリングの DC 入力から安定した DC バス電圧を生成します。その後、インバータ段はこの DC バス電圧を AC 電圧に変換し、グリッドに供給します。図 1 に、ソーラー ストリング インバータの概略図を示します。

 簡略化ソーラー ストリング インバータと補助電源アーキテクチャのブロック図図 1 簡略化ソーラー ストリング インバータと補助電源アーキテクチャのブロック図

この変換を実行するために、電力段は、重要な役割を担当するデバイスを複数使用します。DC/DC 電力段と DC/AC 電力段はどちらもゲート ドライバを使用して電界効果トランジスタ (FET) を駆動し、効率的な動作を実現します。センシング デバイスは通常はアンプという形式で実装されていますが、適切な制御と安全性を確保できるように、センサ データを収集します。シグナル チェーン IC は、外部インターフェイスと接続します。制御ドメインはマイコンで構成されており、上記のすべてのデバイスから情報を収集して、効率的で信頼性の高い電力変換を実現します。

このように多様なデバイスに依存している状況では、ソーラー インバータを適切に動作させるうえで補助電源が重要な存在になるのは当然のことです。制御、シグナル チェーン、センシング、ゲート ドライバの各デバイスに電力を供給する補助電源は通常、絶縁型フライバック コントローラの形式です。このコントローラは、 DC バスまたは AC グリッド (またはその両方) からの電圧を、内部デバイスが確実に動作するように適切な形式へ変換します。このコントローラがなければ、システムの電子機器は機器の動作を維持するための電力を確保できず、システム全体が危険にさらされます。

このため、フライバック コントローラにはいくつかの重要な要件があります。寿命全体にわたって高い信頼性を確保し、過酷な条件下でも動作できることが求められます (ソーラー インバータなどは、高い場所に設置され、また高さは一定ではなく、さら長年にわたって高い周囲温度にさらされることがよくあります)。したがって、フライバック コントローラには拡張動作温度範囲があり、コントローラまたは外部回路が安全な動作温度を超えた場合にはシャットダウンできる必要があります。もちろん、短絡検出などのフォルト保護も追加されています。

もう 1 つの検討事項は、フライバック コントローラが設計要件に従って全負荷時と軽負荷時の効率的な動作を実現できることです。ソーラー パネルが太陽光にさらされ、電力変換がピークに達した場合、補助電源はより大きな出力電力を内部の電子サブシステムに効率的に供給する必要があります。逆に、太陽光がない軽負荷の状況では、補助電源はアイドル状態で過剰な電力を消費しないように、スタンバイ電力を最小限に抑える必要があります。

最後に、補助電源は、さまざまな動作条件で、内部サブシステムに対して適切なバイアス条件を継続できることを保証する必要があります。たとえば、ゲート ドライバなどのデバイスは、FET を適切に駆動して導通損失を低減するために、正しいバイアス電圧が必要です。同時に、補助電源には、制御デバイスおよびセンシング デバイスに安定した低電圧レールを供給できる能力が必要です。補助電源は、システム動作全体を通じてこれらの電圧を直接維持できます。

効果的な補助電源設計を実現

図 2 に示すように、テキサス・インスツルメンツの UCC28750 フライバック コントローラは 6 ピンのパッケージで、オプトカプラ フィードバックによる二次側レギュレーションが特長です。これにより、低電圧リップルを必要とするアプリケーションで高速過渡応答と正確な出力レギュレーションが可能になります。ソーラー インバータは、多くの電子サブシステムに電力を供給する補助電源に依存し、二次側レギュレーションを使用すると、さまざまな動作条件の下で適切なバイアス電力を確保することができます。

 フライバック デザインの UCC28750図 2 フライバック デザインの UCC28750

UCC28750 は、プログラム可能な FLT ピンを搭載しています。デバイスのバリエーションに応じて、このピンを使うと、ブラウンアウト検出や、出力過電圧保護と外部過熱保護 (OTP)をわずかな外付け部品で実装できます。

ブラウンアウト検出により、デバイスはライン電圧を検出し、設定された時間にわたって電圧がカスタム スレッショルドを下回るとスイッチング動作を停止できます。同時に、外付け OTP などの機能により、デバイスは負の温度係数抵抗を使用して、基板上のある場所または部品が特定の温度を超えたことを検出できます。このような特長と、過電力、短絡、内部サーマル シャットダウン保護機能を組み合わせると、ソーラー インバータの過酷な動作条件に耐える信頼性の高い補助電源を設計できます。

UCC28750 は、可変負荷条件に合わせて最適化された制御機能も備えています。軽負荷条件時の効率とスタンバイ消費電力を改善するため、本コントローラはスイッチング周波数を下げてバースト モードに移行します。バースト モードでは、スイッチング動作がオンとオフを繰り返します。逆に、負荷が大きい状況では、コントローラによって一次側電流制限とスイッチング周波数が上昇します。例えばソーラー パネルが太陽光に完全にさらされた場合に、内部プログラムが可能なスロープ補償により、(不連続導通モードに加えて) 連続導通モードでの動作が可能になり、導通損失を低減してより大きな出力電力で効率を向上させることができます。このような制御機能により、ソーラー インバータの補助電源は、環境条件にかかわりなく効率的な動作を維持できます。

まとめ

適切なフライバック コントローラを使用すれば、効果的な補助電源を設計する際の課題を軽減することが可能です。テキサス・インスツルメンツのフライバック コントローラの製品ラインアップは、ソーラー インバータのような産業用アプリケーションで、設計の簡素化とコストの最適化を維持しながら、高性能と信頼性を確保するのに役立ちます。

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