JAJT319 May   2024 TPS2HCS10-Q1

 

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    2.     eFuse を使用する設計
    3.     eFuse が急速に従来の半導体スイッチを置き換え
    4.     まとめ
  3.   商標
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Sreenath Unnikrishnan

過去 10 年間の自動車業界における最大の変化は、ソフトウェア定義自動車への移行です。従来の自動車の設計では、パワートレインやインフォテインメントなどの特定の機能専用のハードウェア ベースのサブシステムが使用されていました。自動車モデルを迅速にアップグレードする必要がある状況において、「ゾーン」とも呼ばれるモジュール形式のフレキシブルなサブシステムを構築して、複数の機能を統合することにより、効率化を実現できます。専用のドメイン制御ユニットの代わりに、自動車は、機能を統合した 2 ~3 個のゾーン制御ユニットをサポートすることになります。

ゾーン アーキテクチャへの移行には、従来の溶断ヒューズを、eFuse と呼ばれる半導体スイッチに置き換えることが含まれます。eFuse には、個別部品の溶断ヒューズと比較していくつかの利点があります。リセット可能な出力を備えており、故障後に交換する必要がなくなるため、車両設計者はその設置場所を最適化できます。簡単にアクセスできる必要がないので、電源から負荷までのケーブル長を短縮できます。 また、eFuse は遮断時間電流特性が改善されており、ばらつきがはるかに少ないため、ケーブルの直径、重量、ワイヤ ハーネスのコストを削減できる可能性があります。パワー マネージメント システムに追加機能を備えることで、予防診断や故障診断の改善が可能になり、電子システムの消費電力を管理して、電気自動車の航続距離を最大化するのに役立ちます。

図 1 に、溶断ヒューズから eFuse への移行を示します。

 ゾーン コントローラおよびパワー ディストリビューション
                    ボックスの溶断ヒューズの置き換え 図 1 ゾーン コントローラおよびパワー ディストリビューション ボックスの溶断ヒューズの置き換え

この記事では、構成可能な eFuse を使用してソフトウェア定義自動車アーキテクチャに迅速に移行する方法を説明します。

eFuse を使用する設計

コネクテッド カーは、高度なセンサ機能からヒューズ素子に至るまで、システムの状態を常時読み取る能力が必要です。さらに、ゾーン プラットフォームでは、給電対象の負荷によってヒューズの要件が変化する場合の柔軟性が求められます。 eFuse (たとえば TPS2HCS10-Q1) は、シリアル ペリフェラルインターフェイス (SPI) などのインターフェイスを使用して、負荷要件に応じてスイッチを動的に構成したり、負荷診断を読み取って判定を通知したりすることによって、これらの問題を解決するのに役立ちます。eFuse は保護機能および診断機能を構成するのに外付けの受動部品を必要としないため、機能が追加されているにもかかわらず、全体のシステム コストと部品数が少なくて済みます。

SPI を介して複数のスイッチおよび負荷障害診断機能を連続的に利用できるので、マイクロコントローラ (MCU) のオーバーヘッドを低減できます。デバイスに内蔵されている A/D コンバータ (ADC) により、SPI 経由で完全なデジタル診断を読み出すことができるため、MCU ベースの ADC で電流および電圧出力を読み取る必要がありません。外付け部品なしで eFuse が出力電圧を検出するとともに、バッテリへの短絡または開放負荷フォルトを検出する方法を 図 2 に示します。

 外部コンポーネント不要、最小限の MCU
                    オーバヘッドで実現する、出力電圧センシング機能およびバッテリへの短絡と開放負荷フォルト検出機能 図 2 外部コンポーネント不要、最小限の MCU オーバヘッドで実現する、出力電圧センシング機能およびバッテリへの短絡と開放負荷フォルト検出機能

ソフトウェア定義自動車に移行する際の開発で最も困難な要素の 1 つは、ソフトウェアとファームウェアの開発を合理化して、一貫性のあるシステムを実現することです。さまざまな自動車モデルに対して複数のシステムを検証することによって、サイクル時間とコストの両方が増加します。eFuse は、出力負荷特性が異なる複数のモデル バリエーションの情報をプログラムしたり読み取ったりするための共通インターフェイスを維持しながら、小電流負荷から大電流負荷までスケール化して対応できます。ソフトウェアの構成、制御、診断のためのデジタル インターフェイスを備えているため、MCU の入出力 (I/O) ピンの要件が低減され、I/O エクスパンダの追加コストとプリント基板 (PCB) 面積を削減できます。

ソフトウェアで設定可能な eFuse が適切な選択肢になる理由は何でしょうか?

  • 構成可能な時間 - 電流プロファイル。標準的な平坦な電流制限ではなく、内蔵されたヒューズの特性である時間 - 電流曲線によって、負荷電流のタイミングと持続時間に応じて、スイッチがオフになる時期、またはオフになるかどうかが決まります。この特性により、eFuse は、大きい負荷電流 (モータの突入電流やストール電流など) をわずかな時間流すことができますが、過負荷状態ではオフになって、ワイヤ ハーネス、PCB パターン、コネクタを保護できます。さらに、SPI 構成により、公称電流とシャットオフ エネルギー トリガ スレッショルドの 2 つのパラメータだけで、ヒューズ曲線を広い範囲にわたってプログラミングできます。図 3 に、電流範囲全体にわたる保護方式の例を示します。
     プログラム可能なヒューズ特性図 3 プログラム可能なヒューズ特性
  • 小さい静止電流。多くの電子制御ユニット (ECU) は、車両が駐車している間もオンのままです。これらの ECU に電力を供給する eFuse は、動作電流を非常に小さくする必要があります。これによって、バッテリの急速な消耗を防止し、必要な負荷をアクティブな状態に維持することができます。電流要件は低いものの、保護機能がアクティブな状態を維持してシステムを短絡現象から保護します。さらに重要なことですが、eFuse は負荷条件を検出して、アクティブ設定とローパワー設定を切り替えるタイミングを認識します。これにより、MCU にオーバーヘッドを追加せずに自律的に動作できます。TI の eFuse 製品ラインアップは、非常に小さい静止電流レベルで、これらすべての要件を満たしています。
  • 構成可能な容量性負荷駆動モード。多くのゾーン負荷は本質的に容量性です。そのため、電力を供給するために使用するスイッチは、容量の充電に効率的に対応できる必要があります。従来型のヒューズやスイッチにはコンデンサ充電のための機能がありませんが、eFuse は定電流充電モードを提供しており、充電中に大きい負荷電流が発生する場合や、非常に大きい容量性負荷に対して非常に小さい充電電流で充電を行う場合の固定過渡電圧モードに対応しています。どちらの場合も、プログラム可能な充電期間中、突入電流が低い値に制限されます。eFuse の利点の 1 つは、充電のための電流または電圧スレッショルドを調整することで、大きい容量性負荷でも小さい容量性負荷でも駆動できることです。容量および並列負荷の消費電流には、デバイスを容量性充電モードに構成することが最善の選択です。

eFuse が急速に従来の半導体スイッチを置き換え

TI のスマート ハイサイド スイッチ製品のラインアップは、電界効果トランジスタを内蔵し、多様な負荷電流に対応する広いオン抵抗範囲を備えているため、ゾーン アーキテクチャの設計上の課題を軽減します。TPS2HCS10-Q1 eFuse は、SPI 通信、低消費電力モード、I2T 電流制限、インテリジェントなコンデンサ充電などの機能を備えており、開発および技術の課題に対処できます。これらのスイッチはパワー ディストリビューションの進化を実現すると同時に、アクチュエータ ドライブ アプリケーション向けの保護機能と診断機能を提供します。

まとめ

TPS2HCS10-Q1 をはじめとする TI の eFuse は、スマート パワー ディストリビューションやソフトウェア定義ゾーン ECU のシステム ニーズを満たすと同時に、開発のコスト、スペース、時間に関する効率を向上します。日ごとにスマート化および安全性向上が進んでいるので、将来、自動車内の従来型ヒューズを交換する必要がなくなる可能性があります。